来年4月 消費税「総額表示」義務化
レジシステム変更の対応等が必要に

■「払う額はっきり」
 平成16年4月から改正消費税法が施行され「総額表示方式」がスタートします。これは「値札」や「広告」など価格を表示する場合に、消費税相当額(含む地方消費税相当額。以下同じ)を含んだ支払総額の表示が義務付けられたためです。
 これまで、消費税をどのように表示するかについての決まりはありませんでしたが、一般的には、本体価格を表示し、支払い時に消費税分を加算する「外税方式(税抜価格表示)」が行われていました。しかし、この方法では、レジで請求されるまで最終的にいくら支払えばいいのか分かりにくく、また、同一の商品やサービスでありながら「税抜価格表示」と「税込価格表示」が混在しているため、価格の比較がしづらいといった状況が生じていました。
 このような状況を解消するために、消費者が値札等を見れば「消費税相当額を含む支払総額」が一目で分かるようにし、消費者はいくら支払えばその商品やサービスが購入できるかが、値札や広告を見ただけで簡単に分かるようにするものです。これにより、価格の比較も容易になることから、消費者の煩わしさが解消されます。

■「総額表示」の対象は?
 「総額表示」の義務付けは、消費者に対して商品やサービスを販売する課税事業者が行う価格表示を対象とするもので、それがどのような表示媒体によるものであるかは問いません。具体的には、以下のような価格表示が考えられます。
・値札、商品陳列棚、店内表示、商品カタログ、メニュー等への価格表示
・商品のパッケージなどへの印字、あるいは貼付した価格表示
・新聞折込広告、ダイレクトメールなどにより配布するチラシ
・新聞、雑誌、テレビ、インターネットホームページ、電子メール等の媒体を利用した広告
・ポスター、看板など
※「総額表示」の義務付けは、価格表示を行う場合を対象とするものであって、価格表示を行っていない場合について表示を強制するものではありません。

■価格表示について
 価格表示の方法は、商品やサービスによって、あるいは事業者によってさまざまな方法があると考えられます。この総額表示方式では、例えば、税抜価格9,800円で販売されている商品であれば、値札等に消費税相当額を含めた「10,290円」を表示することがポイントになります。したがって、次のような表示は、支払総額がひと目で分かりませんので、総額表示には該当しません。
【税抜9,800円+消費税】【9,800(税抜)】【税抜9,800円・税490円】

■平成16年4月に向け、早めの対応をお願いします。
 総額表示義務は、平成16年4月1日から適用されますので、対象となる事業者は、平成16年4月に向けた対応が必要になります。
 総額表示への移行に伴い、レジシステムなどの変更が必要となる場合(後述参照)がありますので、平成16年4月に向けた早めの対応が必要となる事業者も多いかと思います。ですから、平成16年4月1日前から変更していくことも現実的な対応と考えられます。
 また、商品カタログなどは発行後も一定期間利用されることから、平成16年4月を見越した改訂が必要になります。なお、平成16年4月以降も使用する商品カタログ等をすでに従来どおりの価格表示で作成している場合には、価格表(「税抜価格」と「税込価格」を対比したものなど)を挟み込むなど、消費者の誤解を招かないような対応が必要になります。

■免税事業者の価格表示は?
 免税事業者は、取引に課される消費税がありませんので、これまでも「税抜価格」を表示して別途消費税相当額を受け取るといったことはありませんでした。したがって、免税事業者における価格表示は、今までどおり消費者の支払うべき価格(仕入れに係る消費税相当額を織り込んだ金額)を表示します。

■手数料やサービス料の表示方法は?
 取引金額の一定割合を手数料やサービス料として受け取る事業者にあっては、その基礎となる取引金額が「税込価格」となれば、手数料やサービス料の割合を変更する必要はありません(以下の事例を御参照ください。)。
 例)3,000円(税抜)の食事の場合(総額表示後は、3,150円+サービス料10%)
○現在/メニュー等に「別途サービス料として10%を頂戴いたします。」と表示し、レシート等には以下(左)のような記載がされる。

○総額表示後/メニュー等に「上記税込価格にサービス料として10%を頂戴いたします。」と表示した場合の例(上記右)

■レジシステムを変更する必要はあるのですか?
「総額表示義務」は、値札や広告などにおいて「消費税相当額を含む支払総額」の表示を義務付けるものであってレジシステムの変更を義務付けるものではありません。しかし、「総額表示」の下で、これまでのように「税抜価格」を基に計算するレジシステムを用いた場合には、下の例のような問題が生じ、消費者との間でトラブルが発生する場合があります。したがって、このような場合(税抜価格が20円で割り切れない商品・サービスを扱っている場合)には、「税込価格」を基に計算するレジシステムに変更するなどの対応が必要になると考えます。

■総額表示にスムーズに移行するための経過措置
 少額の取引を行う事業者にあっては、総額表示への移行後も従来の「税抜レジシステム」を用いた場合には消費者との間でトラブルが生じるケースがあるため、「税込価格」を基に計算するレジシステムに移行されていくものと見込まれます。
 しかし、レジシステム等の変更が間に合わないなど、すぐには上記Aの要件を満たす代金決済を行うことができず、やむを得ず従来の「税抜価格」を基礎とした代金決済を行わざるを得ない場合もあると考えられます。その場合でも、総額表示義務を履行していることを要件に、「税抜価格」を前提とした現行の端数処理の特例措置の適用が、3年間(平成19年3月31日までの間に行われる取引)に限り認められます。