味つづり 38 倉橋 柏山
美容効果のすぐれものトマト
「献立に赤を添へたくトマト買う」波出石品女
野菜サラダであれ、肉料理の付け合わせであれ、まっ赤なトマトが2〜3切れ添えてあると豊かな気持ちになり食欲が出て美味しく食べられる。
西洋のことわざに「トマトのある家に胃病なし」というのがある。トマトを常食していると、胃の病気にかからないということである。トマトに含まれるビタミンB6の効果でタンパク質や脂肪の代謝を円滑にするからであるといわれる。その他に、血圧やコレステロールを下げたり、便秘、美容効果とすぐれものである。本来、夏が旬であるが、幸いトマトは一年中店頭に並んでいる。完熟するとまっ赤になるが、野生種の小粒は緑色であったといわれる。イタリアでは金のリンゴと呼んで15〜16世紀のものは黄色であったといわれ、その名残りかどうかは知らないが黄色のトマトは今日でもある。
トマト(蕃茄)は、ナス科の一年草で、原産地は南米のペルーあたりといわれる。わが国における初献は、貝原益軒の「大和木草」(1708年)に「唐柿」が、トマトであるといわれ、食用ではなく、観賞用としての栽培であったといわれる。最近ではフルーツトマトと呼ばれる糖度の高いものや卵形のもの、極く小粒のものや丸形など多種で、品種も薄赤(黄色)く熟す桃色トマト、まっ赤に熟すトマトとあり、食用としては明治以降で、和名も、唐柿、珊瑚樹茄子となり、赤茄子と呼ばれるようになった。
明治36年、カゴメ株式会社の創始者である蟹江一太郎は苦心の末、日本初トマトピューレを作りあげた。同41年、トマトケチャップとウスターソースの製造も始め、日本風の西洋料理、つまり「洋食」における、チキンライス、オムライス、トンカツなど、トマトの加工品を使うことによる洋食の普及と共にトマトの味に慣れ親しみ、トマトを生食するサラダなどの洋風化が進展していった。今日、どんな小さな八百屋でもトマトのない店はないほど広く普及した。
ほたて貝和洋トマト煮を紹介しよう。ほたて貝は塩水で洗って水気をきっておく。にんにくと玉葱をみじんに切って、サラダ油かオリーブオイルで炒め、昆布だしか水を少し注ぎ、皮と種を取ったトマトの粗切りとチキンスープの素、塩、コショウ、淡口醤油少々で調味し、小麦粉をまぶしたほたて貝を加えて煮込み、ゆでたオクラを彩りに添える。この煮汁で鯵や揚げた穴子を煮ても旨い。
トマトのへたを取って十文字に包丁目を入れ、沸騰した熱湯に20秒ほど入れ、冷水にくぐらせると皮が簡単にむける。輪切りにして種を取って小さく切って軽く塩を振り、流し缶に並べる。流し缶のない場合はバットにラップを敷いてトマトを並べる。とりスープ2と2分の1カップに粉カンテンと、もどしたゼラチン1枚分を煮溶かし、人肌に冷めたらマヨネーズを100ccほど加え混ぜ、トマトに流して冷やし固め、切り分けて器に盛り、溶き辛子の薬味でいただく。この時、ゆでて小口に切ったオクラを加えると彩りと食感が良くなる。
トマトソースの変わりそうめんはいかがだろう。鶏もも肉、玉葱、えの木茸をそれぞれ小さく切り、サラダ油で炒め、皮と種を取った完熟トマトの粗切りを加え、水、チキンスープの素、白ワイン少量を加え、塩、淡口醤油少々と、トマトケチャップ少量で調味し、15分ほど煮込み、最後に生クリーム少量で味の仕上げをして冷たくする。ゆでて冷水でさらし、水気をきって器に盛ったそうめんにソースをかけ、刻みオクラを散らし水辛子でいただく。イタリアン冷やしそうめんである。
輪切りトマトに塩、コショウを振り、鯵干物の骨を取り、小さく切ったベーコンを一緒にのせ、マヨネーズにピザチーズをのせてオーブンで焼き、ビールのつまみにするもいい。