味つづり〈93〉 倉橋 柏山
    
雑煮に欠かせぬ冬野菜

 正月の雑煮は、各地のお国ぶりが異なる。関東は切り餅を焼き、すまし汁仕立て。具は鴨または鶏肉。亀甲椎茸、日の出人参、小松菜は主役とばかりにたっぷり入る。
 京風は、丸餅を焼かずに輪切り大根をお椀に敷き、丸くむいた頭芋(里芋)を盛り、白味噌仕立て。天に糸がつおを盛る。
 どなたも生まれ育ったお国の味で正月を迎えることから、雑煮の夫婦わかれという言葉もある。
 餅にあんを入れて雑煮を祝い、具やだし汁は千差万別である。
 東京では暮れになると小松菜が値上がりする。雑煮用としてそれほど需要が多いことを物語る。
 今日では、周年小松菜は栽培されて出回るが、本来は秋蒔きの露地ものが寒い頃に出るので、古くは冬菜と呼ばれていた。
 小松菜は江戸時代初期、葛飾郡小松川村(現.東京都江戸川区小松川町)が発祥とか。五代将軍綱吉が地名を取って「小松菜」と命名したといわれる。
 「包丁を冬菜弾かんばかりなり」鈴鹿野風呂。
 小松菜は冬菜といわれる通り、霜や雪の寒さにも耐えて青々と育つ。霜にあうと甘味が増すばかりではなく、アクも抜けるそうである。ほうれん草よりアクも少なくビタミン、ミネラルが豊富で、カルシウムはほうれん草の五倍以上。カロチンやビタミンCと栄養価も高い。
 小松菜はアブラナ科で、アブラナ科の野菜は漬物として多く用いられるが、小松菜も一夜漬けで美味しく食べられる。アクもなく柔らかいので食べよく切り、塩でもみ、柚子、昆布、種を抜いた唐辛子を加えて軽く重石をかけると、翌日から食べることができる。干し柿を作ったので、柿の皮の干したものを一緒に加えてみたら、柿の甘みと共に味も倍加したようである。
 油抜きした油揚げと小松菜を食べよく切り、だし汁にみりん、酒、醤油少々で淡味で煮てかつお節をかければ飯の菜にもなるし、酒のつまみにもうってつけである。
 ベーコンと一緒に油炒めにしても手軽にできて誠にうまい。
 あさりの煮びたしも手軽で旨い食べ方ではないだろうか。
 小松菜は塩を加えた熱湯で茹でて、すぐに水に取り、水気をしぼってざっくりと食べよく切る。
 あさりのむき身は立塩で洗い、水気を切る。だし汁に酒をたっぷり(一割弱)加え、塩と醤油であさりを煮る。あさりは煮過ぎないことである。小松菜を加えてよく混ぜ、味をなじませてから食べる。
 私はあさりと小松菜のパスタが好きである。
 ベーコン、あさりのむき身、小松菜をオリーブオイルで炒め、塩、コショウで調味して固茹でのパスタをからめ、柚子コショウで食べる。
 私は麺類が好きで、寒いとき、煮込み風のうどんをよく食べる。
 小松菜は水洗いして刻み、鶏もも肉の薄切り、しめじと一緒にうどんを煮込む。卵を最後に流し入れて半熟状態で食べる。彩も良く、寒い時の夜食に、子どもにも喜ばれる。
 薬味は、七味唐辛子が相性であろうが、柚子コショウで食べるのが私の好みである。
 小松菜にはビタミンとミネラルが豊富に含まれ、繊維質も多い。葉緑素の効果と働きで体を温め、抵抗力を高めると共に、浄血する効果があるそうで、受験勉強の子どもの夜食に最適である。
 緑黄色野菜の筆頭である小松菜は、ガンを予防する薬効もあるそうである。本の受け売りで何のガンに効くのか知らないが、期待を込めて食べることをお勧めしたい。
 辛子酢味噌にマヨネーズを二割近く混ぜ、茹でた小松菜とくるみを和える食べ方もあり、健康的にもいい食べ方である。
 小松菜は周年出回るが、旬の冬こそ大いに摂取したいものである。