理事長訪問 第5回 神奈川
神奈川県飲食業生活衛生同業組合
柳川 一朗 理事長に聞く
組織の構造改革を進め、自立した組合活動をめざしていかなければなりません。
―大変厳しい時代ですが、柳川理事長が最近、組合員の皆さんにはどんなお話をされてますか。
柳川理事長(以下、柳川)●時代背景が悪いものですから、力を注ぐというのは景気回復を望む事と、こういう不況の中でいかに皆が生き延びるかと言う事を常に説いて歩いています。それには得策がないと、なかなか。ですから皆が要するに健康に充分に注意しないといけないと。自分が倒れたら店が閉まっちゃいますからね。体だけは気をつけておくれよということは常に言って歩いてます。それと何か皆さんのためになることを考えなければと常に思っていますが、先立つものはお金ですから、組合の財源の安定を図っていく必要性をお話しています。
―柳川理事長が組合活動を始めてどの位たちますか。それと県の組合の概況をお話下さい。
柳川●秦野の飲食店組合は歴史が古く、戦争中からありました。神奈川県の組合ができて30年です。私自身は設立と同時に理事になりました。理事長としては3期目で、8年間経過したところです。ピーク時には1万人がいましたが、今は8千人の組合員と44支部あります。支部は基本的には市単位ですが横浜、川崎という大都市部では細分化されています。
―二つの政令市を抱えながら、なおかつ神奈川県全域をまとめるのはご苦労が多いのではないですか?
柳川●食品衛生協会にも関わっているのですが、食協は政令指定都市と県では行政の担当が異なるのです。それは組織として非常に動きにくい。表向きには統一されましたが、実態はまだまだ分裂した状態です。しかし、こちらは県の衛生部がすべての窓口ですから、組織運営がやりやすいです。どんな組織も命令系統が一本化されていなければ、無駄が多くなってしまいますから。
―いま、神奈川県内において、柳川理事長が力を注いでいるのはどんなところですか?
柳川●改革という合言葉で、無駄を無くす努力をしてきました。事務局のスタッフを減らし、給与規定や勤務規定から、事務用品など備品から組合員向けのカレンダー制作費などをすべて見直しました。そうすることで、一時の赤字運営から脱却して、現在では健全運営に戻っています。それから企画室を設置して、事務局任せでなく役員が積極的に組織運営を行うようになりました。同時に新しいアイデアも生まれ始めています。
こういった景気の悪い時代ですから、いかに組合員が生き延びるかという事を考えています。具体的に何かをしようとすると資金が必要になるので、全飲連の共済事業などに積極的に参加することによる還元を確立していきたいと思っています。そのために、県内の各支部単位で協力していかなければと考えています。
この一年間は本当にそういう建て直しの年で、そういう事を会員さんに知っていただいて、改革していることを理解していただければ、苦しくても皆ついてきてくれるわけです。
―毎年大きなイベントも開催しているようですね。
柳川●神奈川県には生活衛生に関係する17の団体がありますが、県民サービスを目的に、「食と暮らしのフェスタ」というイベントを横浜で開催しています。今までに9回開催して、毎回約2万人の県民が訪れます。
―30周年には森進一ショーをおやりになったそうですね。
柳川●そうなんです。軽い気持ちでやってしまったんです。会場は、横浜の国際会議場で5千人入るところを昼夜満席にして、県民にも業者の人にも喜んでいただきました。
―柳川理事長は、県の指導センターの理事長をはじめ、さまざまな団体の役職も務められていますが。
柳川●ライオンズクラブは35年所属しています。会長もやらせていただきましたし、地元に限られないいろいろな人脈を作ることができています。組織という点において、いろいろなやり方を経験しましたので、組合運営にも役立っています。他にも、食協や法人会、観光協会、防犯協会、交通安全対策協議会、高校の同窓会などにも関わらせていただいています。ですから、今では、商売の現場に立つのは、丑の日にうなぎを焼いたりするくらいです。
―消費が落ち込んでいる中で、地元に根を張って商売していく上でお考えになっていることは何ですか?
柳川●ファミリーレストランやスーパーなど大型店の出店による影響は大きいです。それでも、我々個店は地域にしっかりと根付いて商売をやってきた実績があるわけですから、本物の味を求めて来店してくれるお客様を裏切らないように、仕事をしていくことだと思います。それから地域とのコミュニケーションは大切だと思います。そのためにも地域の仕事を積極的に引き受けていくということも重要です。
―さて、柳川理事長は、全飲連では共済事業を推進する立場でいらっしゃいますが。
柳川●好評をいただいている東京海上の所得保障保険制度は神奈川県から出発しました。今では全国的に利用者が増えています。しかし、事故率が高くなり掛金を引き上げなければならなくなっています。保険会社が掛金を上げなければならないということは、利用者にとってはそれだけ利用価値の高い制度であるということです。
今、力を入れているのは自動車保険集団扱い制度です。自動車保険は新しく入るのではなく、既に加入しているものを換えることでもいいわけです。これに関して、制度に加入した組合員への還元ができないか検討しているところです。食中毒賠償共済制度では掛け金の半額を組合で負担するくらいの還元があってもいいと思っています。
―最後に将来に向かってどんな組合にしていきたいとお考えですか。
柳川●まず財政的に安定した組合にしていきたいですね。これからの組合は会社経営と同じ様にしていかなくちゃならない時代だと思います。改革を進め、経費を節減するとともに、自主財源を確保していく工夫が必要です。行政の補助に頼らない体質にならなければなりません。それと組合員さんに喜ばれる施策をしていかなくては。会費をいただいている以上組合員さんが組合に入って良かったと思えるものを。また組合員の皆さんに、組合が今何に取り組んでいるか説明をしていく事がやっぱり理解を高めていくということになると思います。
―ありがとうございました。
取材を終えて
神奈川県秦野市の柳川理事長のお店「柳屋」にお訪ねしての取材。この日も柳川理事長は法人会の会議にお出かけになる前でした。
平塚法人会の副会長で秦野支部長、秦野の交通安全対策協議会会長、水道審議会の会長商工会議所の常議員で観光料飲部会長、母校の秦野高校の同窓会長等々地域の多くの公職を勤めていらしゃいます。勿論業界関係では神奈川県の指導センターの理事長、県食協の副会長、秦野の食協の会長、そして全飲連の副会長で福祉厚生委員長と重責を担う柳川理事長。
青年会議所、ライオンズクラブでも活躍、とくにライオンズはガバナーの声が掛かったのを、業界のトップとしての活動ができなくなってしまうので断った経緯があるそうです。ライオンズの奉仕活動で献血で116回も献血をし表彰もされています。
柳川理事長は不言実行が心情。役職を引き受けたからには、きちんとやるべきことはやり、会合にも必ず出席する。したがってどんどん役職が増えていく。そして人と争わない性格がますます人望を高めているのです。
以前は旅行にも出かける時間もあったが、今は公の仕事が趣味みたいだご本人が言われるほどに、業界と地域の仕事に打ち込んでいらっしゃいます。