味つづり〈70〉 倉橋 柏山
     グリーンアスパラガス
           「雨上がりまみどりを摘む松葉独活」 高橋照子。

 旬に詠まれる松葉独活は、和名でアスパラガスのことである。世界中には150種あるそうだが、食用になるものはたった1種だそうだ。
 ユリ科の植物のアスパラガスは、ヨーロッパが原産で、紀元前から栽培されていたが、日本への伝来は江戸時代。当時は食用ではなく観賞用であったとか。本格的な栽培が始まるのは大正時代で、それも缶詰用の小さなホワイトアスパラガスが主で、グリーンアスパラガスが出回るようになるのは、昭和四十年以後のことである。
 今日では周年店頭に並ぶように思うが、露地物の旬は五月〜七月である。さっと茹でてマヨネーズかドレッシングをかけて食べられる手軽さか、わが家の食卓にはひんぱんに出る。
 芽が出る前に土寄せして軟白栽培したものがホワイトアスパラガスで、近年は生のホワイトアスパラガスも入手できる。
 葉や枝が出る前の若芽と茎の部分を食べるのがグリーンアスパラガスである。
 この野菜には疲労を回復する効果のあるアスパラギン酸や高血圧を予防するルチンが多く、特にグリーンアスパラガスにはカロチン、ビタミンC、E、B群などの多い栄養価の高い緑葉色野菜である。
 たっぷりの熱湯に塩を加え、根元から先に入れて少し茹でて全体をしずめて約1分位でざるにあげて冷ます。通常青野菜は水に入れてさらすが、この野菜は岡あげと言って、茹でる場合は水に入れないほうが旨い。香りや味がいいのは北海道や長野の露地物で、茎の色、緑が鮮やかで、切り口がひからびて茶色でないものを選ぶ。茎にしわがよっているものは古くて硬いので避ける。食べ物は好みがあるので絶対的ではないが、茹でる場合は茹ですぎは禁物と言っても過言ではない。
 手軽で旨い食べ方は、耐熱皿にバターかオリーブオイルをひき、トマトの輪切りを並べ、グリーンアスパラガスをのせ、刻んだベーコンを散らし、粉チーズとマヨネーズをかけてオーブンで焼く。根元の部分は硬いので包丁で切る。
 油との相性がいいので、小麦粉をまぶし、溶き卵白をつけ、薄切りアーモンドや刻みピーナツなどをまぶし、やや低温の油で揚げ、塩か柚子こしょうマヨネーズの味は、ビールに最適のつまみである。天ぷらにしても旨い。
 ベーコンや薄切りの牛肉、豚肉、合鴨などで巻き、塩、コショウを振り、油を引いたフライパンで焼く。又、焼き肉のたれなどで照り焼きにしても旨い。
 シンプルには、辛子醤油で食べる。塩を振ってまな板の上でころがし、斜め薄切りにして茹であげてざるにあげ、熱いうちに辛子醤油で和えると、味がよくなじむ。すった胡麻やピーナツ、くるみなどを辛子醤油で和えるとビールのつまみに最適。
 薄く斜めに切り、蓮の薄切りと、小さく切った鶏肉と一緒に油で炒め、淡口醤油と酒少々で調味して、炊きたてのご飯に混ぜても旨い。また、同じ材料でチャーハンにしてもいいだろう。玉子とじやオムレツという食べ方もある。
 茹でてミキサーかフードプロセッサーにかけてすりつぶし、だし汁に移し入れ、塩と白醤油で味をととのえ、カタクリ粉かくず粉でとろみをつけて汁物にすると夏向きの彩どりになる。洋風や中華風のスープも旨い。
 梅醤油でサラダ風の食べ方もある。木綿豆腐の水気を切り、全体に塩を振り、ペーパータオルで包み、ラップをかけて一晩冷蔵庫に入れて小角に切る。もどしわかめ、茹でて刻んだグリーンアスパラガス、トマト小角切りをざっくり混ぜ、すりつぶした梅干し、オリーブオイル、柚子こしょう、醤油を合わせて上からかける。