第49回全飲連全国岐阜県大会を控える河本敏明理事長に聞く
理事長訪問 第13回 岐 阜岐阜県飲食生活衛生同業組合
河本 敏明 理事長に聞く
生涯を賭ける食材との出会いがあって今がある―理事長は九州のご出身と伺いましたが、どのような経緯で岐阜県にいらっしゃったのですか?
河本理事長■47年前の昭和38年に夫婦で春の高山祭を見に来ました。1週間滞在する中で、旅館の主と親しくなり、自身がフランス料理のシェフであることを話して料理をすることになったんです。食材を仕入れるために市内の肉屋に行ってみると「こんな良い肉が、こんな安いのか」と驚きました。かつて、フランスのリヨンやマコンで見た「良い食材があるから、そこに良いレストランがある」という体験を思い出しました。―飛騨牛との出会いですね。それが岐阜・高山との縁だったのですね。
河本■そうですね。この地域の牛という食材との運命的な出会いから一年が経って、思い切って仕事をしていた兵庫から高山に移住して、ステーキ専門店「キッチン飛騨」を開業しました。当時28歳でした。当時はまだ『飛騨牛』というブランド名は無かったのですが、この牛肉に生涯を賭けることを決めました。―高山に移り住んでみて、いかがでしたか?
河本■生まれ育った九州や働いていた関西に比べて、高山という街は排他的な土地柄に感じました。そんな場所で飛騨牛を使った地産地消のステーキ専門店を始めることは、大きなチャレンジでした。しかし、飲食店としては食材の魅力を最大に引き出すことは、その土地にある自然なあり方です。
努力した甲斐もあって店は次第に繁盛しました。このあたりは、昔から木工の技術が進んでいて海外からの家具バイヤーが沢山来ていました。ステーキ専門店は、そういった外国人や県外からのお客様に来ていただけるようになったのです。外部から高い評価をいただいて内側の人間に認められることはよくあることですが、「キッチン飛騨」もそうやって地元にも根付いていきました。―最近、地産地消と盛んに言われますが、理事長のお店はそれを実践していたのですね。
河本■最近でこそ地産地消が流行っていますが、本来はそれが当たり前のことです。作る人と使う人が融合して地域の食文化を作るものと、昨今の地産地消ブームについては冷静に受け止めています。
ヨーロッパに出掛けて感じることですが、アグリツーリズムのような活動が盛んなフランスやイタリアと比較すると残念ながら日本の農畜産と飲食の関係は未熟な部分があると感じます。私はできるだけ生産者との関係を深めていきたいと思っています。息子もフランスで修行を積んできて、私の考え方に近いので、今では安心して店を任せられます。
「飛騨牛」を使った地産地消のステーキ専門店 キッチン飛騨
―関連会社を設立するなど、企業経営者として顔もおありですね。
河本■肉の取扱い量が多かったこともあり関連企業として平成元年に「飛騨ハム」を創業しました。5千食におよぶビーフカレー、ハッシュドビーフと共に飛騨ハムなどの食肉製品を製造しています。家庭で親しまれる味を守って今日まで販売量を伸ばしてきました。
私のハムづくりの原点は、本場ドイツのレーゲンスブルクで肉のエージングを学んだところにあります。ある親方のもとで学ぶためにドイツに向かったのですが、そう簡単には受けれてもらえなかったのです。何度も通って必死の思いが伝わり、ようやく学ぶことができました。その経験をもとに、日本の味の特徴である「もろみ」を生かしたハム作りが実現しました。―今では全国区の知名度となった『飛騨牛』ですが、そのブランド確立に大きな貢献を果たされたのですね。そして今年、いよいよ飛騨高山において、第49回全飲連全国岐阜県大会が開催されます。
河本■全国大会が形式的な年次大会化しているのではと感じています。全国で組合員が減少している中でどのような大会が相応しいのかを模索しています。事業仕分けで、営業指導センターの存在を不要と判断されました。これだけ景気に左右されながらも市民生活に一番近い業界である飲食業界で、組合員がこういったことに振り回されることなく商売を続けていくために、全飲連がリーダーシップをとって業界を牽引していく必要があると強く感じます。
今、全国から集まる仲間を心からもてなしたいと組合が一丸となって大会の準備を進めています。わざわざ飛騨高山までお越しいただくので、満喫していただける内容でお迎えしたいと思っています。料理、宿、お土産などすべてにおいて真心を込めて、「高山に来て良かった」と思っていただけるような設営を目指しています。おもてなしの気持ちを伝えることを大切にしたいですね。―岐阜県の組合の先頭に立って、どのような組合づくりを目指していますか?
河本■全国大会の開催もそうですが、例えば全飲連まつりのような事業に対して、できるだけ積極的に参加しようと呼びかけ、景気が悪いことを言い訳にしないようにしようとも言っています。商売を繁栄させるヒントは、いろいろな研修や経営指導のような機会にもあるので遠慮せずに活用するように働きかけています。同時に日本政策金融公庫の支店長に談判して組合への支援を要請するなど、組合員の努力と組織としての努力で繁栄していくように理事長としての役目を果たしているところです。
また、組合員にはお客様を迎える商売であることを念頭において、皿一つにも気を使うようにしようと話しています。私自身、誰も頼るところのない場所で商売を始めたので、その経験で学んだことを伝えたいと思っています。―どうもありがとうございました。