生衛業経営セミナー開催

消費者・利用者に信頼される事業経営をめざして。

 

 平成20年2月21日(木)全国生衛会館にて、「消費者・利用者に信頼される事業経営をめざして」と題し、およそ80名が参加し、生衛業経営セミナーが開催されました。
 生衛業には、公衆衛生の見地から衛生水準の維持向上が求められています。また、利用者利益の擁護・事業者責任を基本とする社会意識の増大に伴い、利用者に信頼される健全な事業経営が必須となっています。特に近年では生衛業が国民の生命・健康に直接関わる事業であるため、法令遵守及び社会倫理に適合した行動(コンプライアンス)の徹底が求められています。
 今回のセミナーでは、事業経営にあたり遵守すべきルールと留意事項について考えるため、3名の講師を向かえ、ご講演いただきました。関係業法等に基づき指導監督を行う立場から中臣裕之氏、業界で多彩な活躍を続ける亀岡育男氏、そして(財)全国生活衛生営業指導センターの専務理事である小宮山健彦氏がそれぞれ演壇に立ちました。


naka 生衛業経営における
コンプライアンスと危機管理を考える
厚生労働省健康局 生活衛生課長補佐
中臣 裕之氏

●危機の予知・予測が大事
 今の時代、飲食業関係者のコンプライアンスに対してマスコミの影響もあり、消費者の関心も高いため、まずは危機管理とはなにかをきちんと理解し、そのうえでコンプライアンスへの意識を高めていく必要があります。
 まず、「危機」や「危機管理」について述べます。災害や事故、犯罪など、企業にとっての危機とは経営に影響する事態のことであり、生き残り自体が危険に陥りかねない事象です。同時に、営業者にも影響が及び、法的・社会的な責任が課されます。そのため、企業が行う事前の危機管理とは、できうる限り危機を予知・予測し、そのための予防や対応策を検討しておくことです。また、その方法としては、回避(特にハイリスクへの対応策)、軽減(経営方針やプロセスの変更)、転嫁(保険、資本市場の活用)が有効でしょう。

●行政の管理から国民の判断へ
 次に行政の管理体制です。民間活動に対して、危機から国民を守るために行政が管理していますが、時代の経過とともに変化してきました。それは、事前規制型から事後チェック型への移行で、適正価格から市場価格への変化などの様に、善し悪しを市場に判断してもらい、国の主導ではなく、自由競争の中で国民自身が考え、判断する時代になってきたということです。だからこそ、企業の自主的なコンプライアンスが必要なのです。同時に、国民の安心・安全への関心が高まり、情報公開が求められている現代社会において、各企業は企業統治(コーポレートガバナンス)によりコンプライアンスを実現し、真の危機管理にまで高める必要があります。

●苦情から対応、そして共有へ
 最後に、日々の営業の中で危機を回避するために最も注目すべきは苦情です。苦情は危機の情報収集の重要なきっかけであり、その情報を責任者がきちんと確認し、誠実に対応していくことが大切です。
 苦情が発生した場合は再発防止のために検証し、マニュアルを作成すること。さらに、組合や指導センターを通じ、同業者でそれらの情報を共有することが危機回避につながるといえます。


komiya 生活衛生同業組合の組織と行動
  ―組合活性化と危機管理対応―
(財)全国生活衛生営業指導センター専務理事 
小宮山 健彦氏

●組合の現状
 これまで組合は営業者の自主的活動を促進するとともに、経営の健全化の指導などを行いながら様々な活動を継続してきました。
 その成果もあり、情報交換や知識・技術の習得のうえで組合の必要性を感じている組合員が多い反面、組合の認知レベルが低く、より良い活動を求めている声があることや、組合員の減少、高齢化、後継者不足が当面の課題となっています。

●危機管理と法令遵守
 次に、お客様に信頼される事業経営と危機管理対応など生衛業を取り巻く最近の状況ですが、BSEや雪印のような世間を騒がせる問題を起こさないためにも、日頃から危機管理を徹底し、回避に努めることはもちろん大切です。しかし、それで全ての危機が回避できるものではありません。最小限に食い止めるためには、日頃からそれを予知し、チェックポイントを設けて対応策を考えていくことが事業を経営する上で大変重要です。
 万が一危機に直面した場合、経営を継続するためには、「危機」を「ターニングポイント」に位置付けることが必要であり、そのためにも、1.「事実確認を徹底する」これが最大で最高の対応。2.「最初から責任者を明確にして対応していく」できれば組織のトップが最初から登場し、きちんと謝罪することが望ましい。3.「今後の対応策を具体的に説明する」という3つの姿勢が重要です。

●マスコミ対策
 過去に起こった食の偽装や安全をおびやかす問題において、あれだけの風評被害をこうむったのは、マスコミ対応にも問題がありました。マスコミに対して虚偽の報告をし、適当な応対をしていると、事実関係がはっきりせず、マスコミとの信頼関係も崩壊し、はるかに大きな問題として報じられてしまいます。正直に、その時点で分かりうる全ての情報を提供することが本当の意味で誠意を示すことになるのです。

●日々の精進と誇り
 手を洗う、掃除をする、機械の手入れをするなど、毎日同じことを積み重ねることが、経営の健全化のために準備をすることへ繋がっていきます。加えて、各事業所が国民生活に貢献しているという誇りと責任を自覚することが危機管理につながり、営業成績にも反映されていくのです。
 生活衛生同業組合が今後もさらなる発展を遂げるために、組合員各位の努力と協力が必要不可欠であることを肝に銘じていただきたいと思います。日頃から危機管理を積極的に行い、お客様のクレームを真摯に受け止め、それを営業に活かしていく柔軟な姿勢が、最も有効な方法であると思います。


kame 「食への信頼回復を高める経営とは」
株式会社 初亀 代表取締役
大阪府飲食業生活衛生同業組合副理事長
亀岡 育男氏

◎はじめに

 新しい事例にどう対処するか考えている間に次の事件が起こるなど、飲食業界を取り巻く環境の変化は著しいものがあります。食がグローバル化すると、いままで考えもしなかったことが身近に起こるということを、先般の冷凍餃子の問題で実感させられたとともに、食品業界に大変な問題を提起したと思います。

◎終戦後の時代の変化

 日本は1945年に終戦を迎えました。敗戦で何もない時代、食べ物であれば何でも手に入れたいという「食生活中心時代」。1947年、不衛生なものを食してはならないということで食品衛生法が施行されました。
 1950年には朝鮮戦争が勃発。わが国の産業は戦争特需に沸き、日本に豊かさをもたらしました。この時代から、物さえあればどんどん売れて生活は安定化しつつ、着る物に意識がいった「衣生活中心時代」。1957年には生衛法が施行され、食べ物はしっかりした形で売らなければならないことが法制化されました。
 1960年。この時代の前後に暗中模索で食べ物屋をやっていた人が、事業化を図るようになり、1960年代は「事業化元年」。目標にそって売り方を考えた時代です。洗濯機、テレビ、冷蔵庫が三種の神器といわれ、白物家電が爆発的に売れました。エポックメイキングな出来事として1967年に第一次の資本の需要化が図られ、われわれ中小飲食店の苦しみが始まったといえます。考え方が前進的な人たちは起業化へ向かいました。

◎飲食店を取り巻く現状

 今日は、経営者の考え方と行動でお店や企業の未来が決まるということを、いろいろと検証して申し上げます。
 1967年の第一次資本の需要化。私の仕事始めになった1970年。大阪万博が開催され、その前後にマクドナルド、ミスタードーナツ、ケンタッキーと、ファミリーレストランの御三家であるロイヤルホスト、すかいらーく、デニーズ。こういった大手外食チェーンが産声を上げ、われわれ生活衛生同業組合の中小飲食店にとっては侵食される歴史が始まりました。しかし、まだ外食のシェアは拡大傾向にあったので、何とかなっていました。

成熟・淘汰の時代
 1989年、消費税導入。生産的な国を動かす資金によって潤ったところもあり、バランス的には計り知れません。1991年、バブル景気の終焉。低成長時代の幕開けです。外食産業は1997年まで、パイを膨らませてきました。1995年にディスカウント店など低価格販売店が出現し、低成長の時代を反映して、食べ物もディスカウントされるようになりました。ここからがわれわれの苦労の始まりです。小泉政権が誕生し、システムを大きく変えると、波に乗った人は良いが、乗り遅れた人には散々な結果となりました。
 2005年から好景気とされる中、われわれ飲食店はその恩恵を受けませんでした。時代は「成熟と淘汰の時代」に入り、それは1967年の第一次資本の需要化から始まっていました。
 全飲連の指導者の皆さんは、こうした状況をいち早くとらえて会員の皆さんに伝えなければなりません。良質の情報を提供することがとても大切です。
 昨年から経済産業省で、動きがあります。一つの考え方が、成熟の時代に入ったらサービス産業の時代になるという考え方。国交省もビジターをどんどん呼ぼうという政策を展開しています。サービス産業が、これからの産業の大きなファクターになってくるという考え方で、食文化産業振興研究会を立ち上げています。
 大きな流れはサービス産業の生産性の向上です。飲食店を取り巻く環境は厳しいですが、光は射しています。「どのようなことで苦しんでいるか?」について、大阪の組合でアンケートを取った結果、「売上げが伸びない」「利益が出ない」「後継者が育たない」がトップ3。本来ならば安心・安全に積極的に取り組むべきですが、足場がしっかりしないので、自分の行き先を見失いがちなのが現在の組合員さんの状況だと思います。

強みで勝負。ホスピタリティーの時代
 これからの飲食店経営について何が必要か、今、本気で議論されています。すかいらーくの横川さんの話によると、従来はお店の数を増やすことをポテンシャルと考え、お店という箱と料理という商品とサービスという機能を3次元でお客様に提供してきましたが、これからはお店の数が全てではなく、「ホスピタリティー(おもてなし)の時代」だそうです。
 大手外食チェーンは、社員は一名で、あとは全部アルバイト。作業をマニュアル化して心のこもったサービスはできていないというのがわれわれの論法です。しかし、われわれには、そのマニュアルさえできているのか、大きな疑問が残ります。
 いままでの歴史を振り返ってみると、調理の技術を高めることでお店が出せました。そこにお客さんに親切にしなさいという接客の技術が加味されて、そのレベルが高いところは結構繁盛していたように思います。しかし、1990年前後を境に、経営の技術レベルが高くないと生き残れない時代に入りました。これは次代の後継者が学ぶべきポイントです。
 ホスピタリティーを重視するのであれば、経営理念を持たなければなりません。お客様にどう貢献していくのかを自覚し、明らかにする。それを従業員に分かってもらう必要があります。ホスピタリティーは、中小飲食店が勝たなければいけないジャンルで、勝負どころです。
 マクロの話をします。今、全国に78万店の飲食店があります。78万軒という数字の実態を皆さんがどう実感されるか興味のあるところ。われわれの業界は、いかに大手が寡占になってもゼロになることはありません。店が50万軒に減るということは、およそ3割の店が無くなります。2004年の統計でみると、外食大手10社で全体のマーケットの10%を寡占し、大手100社で20%を寡占。外食のマーケットを99兆円と考えた場合、5兆6〜7千億円を大手20社で売上げています。アメリカの場合は、大手100社で30〜40%を寡占しています。
 しかしながら日本という特別な風土の中で、地域に密着したお店が生き残っていく術は、間違いなくあります。従業員のおもてなしレベル、調理技術等々を上げていくことが大事。
それは、自分の店の強みを生かすことで、強みをブラッシュアップするのが一番効率的。強みは、地域でお持ちの暖簾です。そして技術力。ここに集まった方は相当な技術を持った方が多いと思います。それをブラッシュアップしてください。地域に顔が見えているということは営業上もプラスです。
 大手チェーン店が知らない地域に店を出してお客さんをとっていく状況の中、われわれにも強みはあります。立地、経営力、財務力だってあります。人財は豊富。今、アルバイトはなかなか集まりません。基本的には労働力です。そこにも目を向けてください。

業界団体の役割
 業界団体は、どんな役割を担っているでしょう? 一番して欲しいのは、繁盛店の臨店です。経営のことをもっと知らなければなりません。
 私は、「本気塾」というのを立ち上げました。参加者は12人で、収益率を上げたいというのは、皆の願いでした。それなら収益率を上げる技術を磨きましょうということで、1年かけて3%上げようと具体的な目標を掲げました。収益率を上げるために、外食大手がどこでも使っているコントロール表を導入し、毎日の原価と人件費を記入しました。いままでしていなかったので面倒でしたが、毎月の宿題なのでしぶしぶ提出する。そのうち、原価率が1%、2%下がって成果が出たのは4人。3人がリタイアしましたが、9人は続けています。年商3千万円の店で3%の利益が向上すると90万の純利益。これは大切なことです。
 市場から排除される28万軒に入ってしまわないよう、できるだけ多くの人を業界団体が指導する必要があります。

◎食の信頼を高める。

飲食店の立場
 飲食店は、生産者、市場、流通業者から買い入れを行なう大量の需要者です。消費者に対しては、調理加工したものを提供しているので供給者です。立ち位置で、自分の責任をしっかりとらえないと、食の安心・安全の問題に対してあやふやになり、責任転嫁を招いてしまうことにもなりかねません。経営者の考え方と行動が、店の将来を決定します。われわれはプロとしての責任を重々理解しなければなりません。問題の一つ一つにきっちり対応していけば、自分の成すべき事は見えてくるはずです。

食の安心・安全
 安心・安全面でわれわれができることは、信頼できる業者と付き合うこと。安いからいいというのではなく、こんな価格はおかしいと思わなければいけません。人と人とのつながりが大切で、それはお客様も同様。皆さんは、お客様の顔が見えるご商売をされていると思います。「寒いですね。ご来店いただきありがとうございます」その一言を積み重ねることで変わっていきます。それがホスピタリティーです。
 食の安全では、お客様をごまかしたらだめです。出入り業者にごまかされたらだめです。自分はこういう気持ちで商売をしているのだから、そういう商品の中で一番安いものを持ってきてください。目利きはしますよ、と意思表示をする。生産者の顔が見える食材を信頼できる流通業者から仕入れ、自分のところでプロの責任という形で調理してお客様に提供する。うちはこの好循環の中で商売をさせていただいています。
 最近地方に行くと、道の駅で生産者の名前が明記された野菜などが販売されています。地道な生産者の顔が見える食材を売ることで、認知されているのです。私は何々商店から買っていますと、そこの社長の顔写真を店に張っておくといいかもしれません。そうすれば、めったなものは提供できません。生産のことは、われわれには分かりにくい。流通の中で少しでも漏れのないようにしておくのが、われわれにできることです。

食育運動の活用
「食育」ということが、言われるようになってきました。平成17年7月15日に食育基本法が制定され、18年3月31日に食育推進基本計画が出されました。食育というのは、食のことをもっと皆さんに知ってもらう必要があるということ。知育、徳育、教育の基盤になるのが食育ですというお墨付きをいただいた法律で、スーパーも外食大手もこれを武器に攻めの経営を展開しようとしています。われわれの店でも、ぜひ取り組んでいきたいものです。
 厚労省はカロリーやアレルゲンの問題に、農水省は食事バランス、原産地表示のガイドラインなどに取り組んでいます。国民の生活にとってわれわれが活用することは沢山あり、消費者の皆さんからの食の信頼を確保するために、これを活用しない手はありません。
 安全は科学でとらえますが、安心は心の問題。いいなと思われないと信用してもらえません。終戦前のご近所の人と人との関係、これが基本です。食に関する施策を研究してください。
 ファミリーレストランをやっていた私の友人は、改装して食事バランスガイドレストランにしました。主菜、副菜、カロリーを明記したら、ご婦人方で満員です。かつてはいけてないお店だったが、今は非常にはやっています。
 食育については内閣府、厚生労働省、文部科学省、農林水産省などが各省庁横断型で施策として行なっています。大阪で第一回の食育の大会が開催された折、食育弁当の要請がありました。塩分、カロリーなどを計算しなければならないので会員さんには手間でしたが、15分で弁当は完売。会場内には弁当を食べるところが無いので、みんな外へ持って出て食べました。紺屋の白袴ではないが、消費者の方が、これだけ食育に興味をもたれているということを改めて知りました。現在、食育は相当な浸透度があります。しっかり勉強して自分のお店の武器にしてほしいと思います。

◎業界の未来

食産業指向と食文化指向
 今後、食は産業化していく流れと、食が文化の上位に入ってくるという二分化の流れになるでしょう。外食のパイは29兆円で、そのうちの5兆円は中食、持ち帰りです。フードサービス業界では、それも外食だとしていますが、農水省では内食、中食、外食という捉え方をしています。外食市場には限界があり、外食の企業が中食に入り込んでいます。1997年から食のパイは横ばいで、外食産業は外国へ向かっています。食の安心・安全の面や文化、国民性もあり、苦戦を強いられることになりそうです。しかし、食の安全・安心については、世界的に見て日本の安全基準は高レベルにあります。上海のハイソサエティの人たちは、日本食を信頼してもっぱら取り寄せをしているそうです。

食品メーカー化
 もうひとつは食品メーカーへの道です。生産性の効率を追求していくと、セントラルキッチンが何かを作る工場になります。コンビニで道場六三郎の弁当を売るのは、文化と産業の融合です。いわゆる文化人としての調理師のトップのブランド力と、その量産化。ロイヤリティは、道場さんにも入ってくるでしょう。飲食業に就いている人間が大きな収入を得れば、この業界はレベルアップします。安く使うだけが能ではない。調理師の皆さんを、歌手や作詞家のように、著作権で保護ができないか考えていますが、反論があり今のところは難しい。一攫千金となれば、志の高い人が調理業界に入ってきます。

マインドを上げ、地域密着
 食文化の指向は、皆さん方のスタンスだと思います。文化・伝統を継承して、新しい食の世界で改善、改革を重ねて新しいものを創り、お客様に喜んでいただくことを考える質の追求だと思います。これを念頭におくことが大切。リーダーが自信をもって従業員や組合員さんを引っ張っていく。しかし78万軒は確実に減ります。組合員の皆さんには存続してもらえるよう情報提供をしていきたいです。  
 私は早くに起業したので、38年間外食の世界にどっぷりつかってきました。目指してきたのは、自分自身の幸せな成功でした。釈迦に説法ですが、今、飲食業界の全体的なマインドが落ちている中、自身が求めるものは何であるのか改めて整理し、情熱をたぎらせて商売に向かってほしいです。大手企業は研究や勉強をしています。われわれの強さ、一番は、オーナーが直接お客様にふれる機会があることです。ここを伸ばして生き残りのチャンスとしてください。

◎幸せな成功

 ドイツのアウシュビッツの収容所で生き延び、オーストリアで精神科の医師になったグランプルという先生は、幸せな成功、幸せな人生とは何かと聞かれたときに、「達成感」と答えました。小さいことの積み重ねを繰り返し、できたことを喜ぶ。この積み重ねが大きな成功につながります。例えば、従業員が1分間にお皿を5枚しか洗えないものが10枚洗えるようになった。10枚の目標を与えてできるようになれば、従業員も納得し、達成感や幸せを感じるようになります。納得できる目標を掲げ達成することで、従業員のマインドを上げていくことが大切。これを幸せの羅針盤と定義づけています。
 私のところでは、月に1度店長を集め、技術と精神両面の教育研修を行なっています。若者世代は、何のためにやっているかを常に探しており、このバランスがつかめないときに嫌気が差します。褒められれば意欲が出る。リーダーの背中を見せることが大事です。
 私の父は81歳まで店にずっと出ていました。現役で楽しそうだったその姿を見て、私は学生時代からこの仕事に入りました。楽しそうにしていることはすごく大事ですね。「お父さんが楽しそうだから、僕もこの仕事をやってみよう」でいいと思います。委譲していくテクニックも大事にしていただきたいです。

●プロフィール
亀岡 育男氏(かめおか いくお)
(株)初亀 代表取締役
 大阪府出身。官公庁の委託給食事業を営む家業を手伝いながら、1970年、大学在学中に日本万国博覧会に営業参加。1971年、株式会社初亀を設立、代表取締役就任。その後様々な国際博覧会や地方博覧会の出店のほか、多彩なフードサービス事業を展開。現在に至る。
 これまでの主な役職として、2005愛知万国博覧会営業参加者会会長、2005食博覧会大阪常務埋事、社団法人大阪外食産業協会(ORA)第九代会長、全国飲食業生活衛生同業組合連合会青年部第九代会長、大阪府飲食業生活衛生同業組合副理事長。

 紙面の都合により講演要旨を掲載したしました。