業界動向ウォッチング〈西洋料理店編〉 これは(財)全国生活衛生営業指導センターによる「業界動向」(http://www.seiei.or.jp/advice/1.html)より、業界の現状分析、今後の課題、経営上のポイント等を抜粋したものです。各業界での成功事例や工夫している事例などにもおよんでいますので、参考にしてください。今後、店舗のジャンルごとにシリーズでご紹介していきます
1、西洋料理店とは何か
ここで具体的に掲げている業態は、フランス料理店、ロシア料理店、イタリア料理店、メキシコ料理店などである。一般 にレストランと呼ばれるが、形態としてはホテル系のディナーレストラン、グリル、ビストロ、カフェテリア、洋食店などがある。実際には、一般大衆に家族的な雰囲気で経営され、食べる方も細かくどこの国籍の料理かなどを問わず、日本人向けにアレンジされたメニューが定着し、気軽に食べられる「洋食屋」が多く存在している。なお、各種の料理を提供するファミリーレストランは、西洋式大衆食堂に位置づけされており、西洋料理店とは区別されている。
西洋料理店はメニュー内容、中心価格帯など供給側の経営形態や、需要側である顧客の利用動機などにより「一般西洋料理店」と「専門西洋料理店」に大別される。近年では、ハンバーグ、ビーフシチュー、ステーキ、スパゲッティなど単品専門型の専門西洋料理店が目立って多くなっている。2、西洋料理店の特性
1.欧米の特定国の料理や多種多様なメニュー
西洋料理店で提供する料理は大別すると2種類。ひとつには外食料理として一般化して家庭料理として普及しているハンバーグ、カレーライスなどを主に扱う店舗。もうひとつは、家庭で調理をするのに材料の確保、調理技術面において困難な料理を提供する本格的な西洋料理店。具体的にはフランス、ドイツ、ロシアなどのレストラン料理である。
2.独特の雰囲気、高級感で顧客の満足度を高揚
本格的な西洋料理を扱うレストランでは、内外装で独自性を打ち出し、料理自体が醸し出す異国の感性、料理に使われる民族的な色彩の濃い食器などで、独特の雰囲気を演出している。顧客のマナー重視、ウェイターやウェイトレスの最高のもてなし、あるいはディナー時におけるピアノの生演奏など、高級感がホール全体に漂っている。雰囲気を楽しみながら料理を食べることに、顧客は満足感を味わう。つまり、「雰囲気、味、サービス」の三位一体の提供である。
3.独自の料理は、調理師への依存度が高い
西洋料理は国によって調理方法が異なり、材料、味付けなどが独特。これは国別の調理師の技術の違いにより生み出されるもので、日本料理と同様に調理師への依存度が極めて大きく、調理師主導型になりがちである。
4.高い料理単価
料理単価は他の外食料理と比較して、全般に高い。使用する素材が高級品のほか、高級感の雰囲気を醸し出すための設備投資負担、調理人への高給支払い、研修費など、目に見えない経費を多く要し、これらが結果的にはメニューの価格に反映されている。3、従業者規模別に見る事業所数など
1.拡大する事業所数の減少
平成16年の西洋料理の事業所数は28,896店で、比較可能な生活衛生関係営業15業種の中で12位である。13年に比べ5%減少している。13年の11年比の3.5%減が16年には拡大している。
2.安定した推移の1〜4人規模の事業所数
従業者規模別で見ると、1〜4人規模は12,002店で、全体の41.5%(13年41.5%)を占めている。13年に比べ176店減少しているが、減少数は、13年が11年に比べ187店減少だったので大きな変動はない。
3.全体の減少は5人以上の大幅減少が原因
5人以上を見ると16年は16,894人で全体の58.5%を占めている。11年は729店増加したが、13年は1,303店減少、引き続き16年も1,335店と大幅に減少している。西洋料理店全体の1,511店の減少は、5人以上の減少が足を引いている。
5人規模以上の事業所数のうち20〜29人規模2,301店(構成比8%)は、事業所数が11年以降唯一増え続けている。ただし3年ごとの調査では、11年138店増、13年59店増、16年24店増と増加幅は縮小している。
4.従業者数は大幅減少
従業者数は290,657人で、13年調査に比べ32,013人減少(9.9%)している。事業所数の減少率5%を上回る減少である。1事業所当たりの従業者数は10.1人(13年10.6人)、日本料理店の12.6人よりも少ない。4、西洋料理(外食)への支出状況
1.15年以降増加基調の西洋料理への支出
1世帯当たり1年間の洋食への支出状況を見ると、平成17年は15,900円で、外食の各品目の中で、日本料理の22,169円に次いで2番目に多い。前年に比べると597円増加(3.9%)している。日本料理が12年以降、一進一退をたどっているのに比べ、15年以降の支出金額は増加基調にある。
2.年齢構成別では、最高支出は30〜39歳
年齢別に1世帯当たりの支出状況を見ると、最多支出は30〜39歳で24,011円である。次いで40〜49歳で22,368円。大半の外食品目の中で、年齢別支出において最小支出の29歳以下は、洋食支出では20,875円で3位に食い込んでいる。
少ないのは70歳以上で6,520円、次いで60〜69歳11,205円、50〜59歳16,600円の順となっている。洋食の嗜好は若中年層と高年齢で完全に2分されている。最多支出の30〜39歳24,011円は、全世帯平均の1.5倍である。5、アンケートで見る洋食店のイメージなど
1.〈洋食〉と聞いてイメージをする店(1つだけの回答)
1位「銀座や下町などに昔からある洋食店」60.2%、2位「フレンチレストラン」、「イタリアレストラン」29.5%、3位「ファミリーレストラン」8.2%。昔ながらの洋食屋が1位であるが、これは輸入された西洋料理を長い間に、日本的にアレンジしてきたことが、大衆の食事として定着したものといえる。
2.一番好きな〈洋食〉
1位「オムライス」26.7%、2位「ハンバーグ」14%、3位 「エビフライ」9.3%、4位「ステーキ」9.2%、「グラタン」5.4%。
最近はカレーライスのチェーン店やオムライス専門店、インド料理店が増えているが、かつてはレストランの人気メニューであったハンバーグに代わり「オムライス」が人気を集めている。デミグラスソースをかけたものなど付加価値をつけ、単価を底上げしているもが主流に。カレーライスの8位は予想外。6、西洋料理店の経営は複雑
1.画一に論ぜられない西洋料理店、片や高級店、一方では庶民派の店舗
西洋料理店の種類は多い。消費者側の西洋料理店利用の動機が、食事を一人で済ますにしても、共にする相手があるにしても、多彩な種類の店舗があるため、食べる時間帯、食べる場所までの所要時間、自分自身や相手の嗜好などにより、その時の状況によって選択の幅が広くならざるをえない。それだけに、食べる側も西洋料理店の選択に苦労する。
2.場所、時間帯、顧客層によって異なる西洋料理店の経営
西洋料理店は立地、使用する需要側のその時のニーズ、ターゲットする所得階級、地域などによって、経営形態が異なってくる。
例えば、フランスの三ツ星レストランの日本店や、著名なシェフの経営するレストランは、西麻布など限定された場所で祝い事、接待用、高額所得者の食事等の顧客に支持されている。
ビジネス街では、サラリーマンの昼食時間帯に人気のある「洋食屋」や「単品店」に行列が目に付く。東京・神田でも立地は余りよくないものの、客席数は20程度の「洋食屋」に昼食時には長い行列が出来る。日替わりランチのほか、豊富なメニュー、生野菜の盛り付け、調理時間が短いことなどが人気を呼んでいる。浅草辺りの下町では昔から続いているその地域一帯で著名な「洋食屋」が、庶民階級に支持されている。
3.フランス料理に変わり、急速に増えだしたイタリア料理店
西洋料理店が急速に普及したのは、昭和30年以降であるが、所得水準の向上など環境の変化に伴って、西洋料理店は業態の変化が加速している。高級なフランス料理店が、バブル崩壊後に衰退をたどりだすと、変わってイタリア料理店が急速に増えるなど、国別料理店の新陳代謝が激しくなっている。
しかし、イタリア料理店は、フルコース店があるが、どちらか言うとスパゲッティ専門店が圧倒的に多い。
4.消費者の利用動機は多彩
西洋料理店の経営は、他の外食店に比べ消費者の利用動機が画一的でなく、その時の事情によって、全く異なるため一筋縄ではいかない。そこで、小規模層の多い「洋食店」について、消費者の利用動機を基準にして、顧客のニーズを見てみよう。
【利用動機】 【外食の相手】 【顧客のニーズ】 空腹を満たしたい昼食時 1人か少人数 低価格、量、迅速性 くつろぎたい 友人と団欒 雰囲気、味、適度な価格 会話を楽しみながらの食事 家族との団欒 雰囲気、味、サービス、価格 おいしい食事 特定の人 雰囲気・味・サービスの三位一体 雰囲気、味を楽しむ 接待、特定の間柄 雰囲気・味・サービスの三位一体 5.多彩な消費者の利用動機に合わせた経営
次に、顧客の利用動機別に、必要とされる立地、設備状況などについて外観してみよう。
ア)「空腹を満たしたい」に主に対応した洋食店
■立地:ビジネス街・学生街・繁華街■設備:面積10坪程度。テーブル・椅子は質素で軽装備■経営陣:経営者=調理人、ウェイトレスは家族■経営の特徴:経営者個人の過去の経験した調理技術に依存。家族的な雰囲気■客層:固定的愛用者層主体で流れ客は少ない。単身者の夕食の場、営業エリアは限定的■メニュー・単価:なじみの深い揚げ物、ハンバーグ、ランチ定食など20品目。単価は600円前後■経営形態:生業的で儲けの大半は生活費に充当
イ)「くつろぎたい」に対応した経営
■立地:ビジネス街、繁華街■設備:店舗面積15〜30坪程度、設備は中装備■経営陣:調理人は経営者と雇用調理人、パートのウェイトレスを雇用■経営の特徴:外部の調理人が入り、経営者の俗人的な手法が後退■客層:ビジネス街の単価を少し踏ん張ったランチ、あるいは夕食■メニュー:肉料理、魚料理、サラダなど中心に20〜50品目程度、単価は1,000円前後■経営形態:生業からの脱出が可能
ウ)「会話を楽しみながらの食事」に対応した経営
■立地:繁華街、郊外の住宅地■設備:店舗面積40坪程度、設備は重装備■経営陣:経営者、調理人は2人以上、ウェイトレス2名以上。経営者は経営・販売管理専業。経営者の調理部門、コスト管理が重要になる■経営の特徴:大手チェーン店など大規模店との競争力強化。外部の調理人が入り、経営者の俗人的な手法が後退。■客層:ビジネス街の単価を少し踏ん張ったランチ、あるいは夕食■メニュー:オードブル、スープ、肉料理、魚料理、サラダ、デザートなど50品目以上、コース料理も2種類の金額別 に提供■経営形態:利益追求で資本蓄積し再投資に活用、家族の満足度よりも顧客の満足度、従業員の満足度を追求
(資料::『生衛ジャーナル/臨時増刊号』平成19年3月発行)