全飲連ニュース紙上セミナー  

環境にやさしい飲食店づくり
食品リサイクルと省エネルギー

  環境カウンセラー 
片 亀 光0


食品リサイクル法制定の背景
 環境にやさしい飲食店作りということで、食品リサイクル法は平成18年度中に食品循環資源として現状よりも食品廃棄物を20%以上再生利用することを目標にしています。これは皆さん方を含む、全国で約100万軒の食品関連事業者を対象に作られた法律です。平成18年度中とは、平成19年3月末までに達成するということです。
 この食品リサイクル法が作られた背景には、全国で年間約1940万トンの食品廃棄物が発生しているという現状があります。東京ドームだと約16個分という非常に大量な数字です。しかもその大半、91%が焼却処理されています。生ごみですから、暑い時季になると悪臭やハエが出てくるので、衛生的にスムーズに処理をするためには焼却処理が主流になります。生ごみは90%以上水分ですから、生ごみの多いごみを燃やすには、通常は重油を足して燃焼温度を上げます。800℃以上でないとダイオキシンが発生するからです。生ごみがたくさん出されるということは、その分重油が足され、CO2もたくさん出ます。焼却後ごみの体積は10分の1になり、最終処分場に埋め立てられますが、埋立地も狭いですから、このままでいけば数年後にいっぱいになってしまうので、また新しいところを探さなければなりません。そういったことから、何とか食品ごみを減らすためにこの法律が作られたのです。

食品廃棄物量と食料自給率
 現在、日本は食料の多くを外国から輸入しています。食糧自給率は40%ほどで、穀物自給率にいたっては27〜28%しかありません。6〜7割を外国からお金を出して買っているのです。そういう貴重な食料を毎年毎年2,000万トンも捨てて良いのでしょうか。実際に今地球温暖化などの環境問題も影響し、2000年から4年連続して世界の穀物生産量が必要量を下回っています。ですから今は備蓄を取り崩している状態で、備蓄量は最低レベルです。世界62〜63億の人口の中で8億人以上が飢餓状態にある現実がありながら、私たち日本人は飽食の時代で食べ物を食べきれずにごみとして捨てているのです。同じ人間としてこのままではいけないと思います。自給率は1998年からほぼ40%で横ばいを続けています。こういう状況の中で、世界的に食料が不足してきますと、いくら日本が経済的に恵まれていても、日本の胃袋をあまりにも外国に頼りすぎるというのは、国の安全保障、国民の生命を守るという観点からも非常に問題があると思います。

地産地消でフードマイレージを減らそう
 フードマイレージという、あまり聞きなれない言葉があります。マイレージというのはどのくらいの距離を移動したかという意味です。中国やオーストラリア、カナダやアメリカなど、私たちが食べる輸入食品は自国に来るまでにどのくらいの距離を旅してきたか、人口一人当たりが食べている食糧で計算しますと、日本は一人当たり4,000kmになります。お隣の韓国が3,250km、約2割少ないですね。アメリカは8分の1で500kmです。日本は世界一のフードマイレージです。これを見てもいかに日本が世界中から食糧を買い集めているかということがわかりますね。
 地産地消という言葉が叫ばれ、地元で取れたものを主体に消費するのは環境にも体にもいいと言われています。折りしも農水省はスーパーマーケットで販売されている野菜については、店頭で原産地を表示することを義務付けました。ですから、例えばかぼちゃはオーストラリア産、ブロッコリーはカリフォルニア産など、見ればわかるわけです。それと同じことを外食産業も義務付けられる方向で動いています。飲食店で提供しているメニューの主要な原材料、例えばポークソテーなら豚肉は国産なのか外国産なのか表示するということです。そういう時、なるべく焼津でとれたもの、静岡県でとれたもの、あるいはもう少し広げて本州、日本国内でとれたものを主体にメニューを作ることがより安全、安心であり、環境問題という観点からもより望まれていると言えるでしょう。
 それからもう一つ、その季節にとれたものを消費する、旬という言葉があります。今は一年中、トマトやきゅうりが店頭に並び季節感がなくなっています。しかしハウスで栽培されたきゅうりは、露地物の5倍のエネルギーを使っています。季節はずれの野菜は石油を食べているようなものです。ほうれん草でもハウスと露地物を比べた場合、見た目は同じでも栄養価は全然違います。そういうものをありがたがって食べるよりは、夏には体を冷やす夏野菜、冬は体を温める冬野菜を食べることを基本とすればいいのです。

食品廃棄物の発生状況と食品リサイクル法
 食品廃棄物は、食品リサイクル法では食品工場の製造段階で排出される動植物性残さは産業廃棄物に分類され、年間で約340万トン出ています。練り物や海産物の工場から出てくる廃棄物は産業廃棄物です。そしてそこで作られたものが卸や小売を通して販売され、その段階で売れ残った賞味期限切れのものや、野菜なら外葉を取り外したもの、魚は切り身にして販売するときに排出される頭や骨など、流通段階で出てきたものが一般廃棄物です。みなさんが消費する段階の、外食産業や旅館ホテル、一般家庭で出てくる料理くず、これらも一般廃棄物です。この一般廃棄物が合わせて1,600万トンです。このことを踏まえていただき、お話をしていきます。
 食品リサイクル法では関係者の責務を定めており、特に関連事業者、製造業、流通販売業、飲食業には再生利用等が義務付けられています。これを平成18年度までに20%までに上げるということが定められています。一般消費者は各家庭においてなるべく食品ごみを出さないよう、あるいは園芸用の肥料として再生利用してほしいということが入っています。また国と地方公共団体はその再生利用を促すような施策を実施するということで、主務大臣である環境大臣、農林水産大臣が必要な指導を行います。特に年間100トン以上排出する事業者は、勧告したり社名を公表したり、更に命令に従わない場合は、最高50万円の罰金が科せられます。大きいところには厳しいペナルティがありますが、小さなところは責務として平成18年度までに20%以上を求められておりますので、ぜひこれからお話しすることを参考にして、できることをやっていって下さい。

食品廃棄物の発生抑制・再生利用・減量
 食品関連事業者の判断の基準は、大きく言うと発生抑制、再生利用、減量の3つに分けられます。この中で優先順位が一番高いのは発生抑制です。それでも出てくるものはなるべく再生利用、減量できるようなら減量してください。発生抑制は製造加工段階での原材料の効率的な利用、品質管理・仕入れ販売方法の工夫、メニューの工夫などで食べ残しを減らします。次の再生利用では肥料、飼料、油脂利用、メタン化原料にしたり、自らできない場合は他者に譲渡すると言うことが挙げられます。次に減量は、脱水、乾燥、発酵、炭化をできる場合にやるということが、法律に準じた判断基準です。
 これから具体的にお話ししていきます。みなさんが日常でお客様に食事を提供するために、原材料を仕入れて調理する段階で、仕入れをちょっと失敗してしまった、冷蔵庫の奥で悪くなってしまった、また魚や肉のいらない部分、せっかく調理したのに残されてしまったなど、どの状態で発生するごみが一番多いでしょうか。下ごしらえでの発生、その次が食べ残しになるかと思うのですが、それらをどのように減らしていけばよいでしょうか。


A 発生抑制

発生抑制 その1 〜素材の効率的な利用
 これは群馬の旅館ホテルで実際に行われている事例ですが、まずは発生抑制その1で、素材の効率的な利用です。野菜・果実の皮・種子・葉などを有効利用しようということで、かぼちゃの種とじゃがいもの皮を油でカリカリに揚げて、サービスでおつまみに出しています。それからにんじんを花型に抜いた残りを捨てずに煮物にしたり、大根やにんじんの皮をきんぴらにしたり、実際に調査が終わってから泊まりに行くと、そういったメニューが本当に出てきました。それから魚の骨、うなぎの骨を油で揚げて出したりもしています。生食用の素材も、使いきれなかった場合は残りを加熱して使う、それからだしをとった後のかつお節を乾かして、味付けをしてミキサーで細かく砕いてふりかけにしています。そのようにいろいろ知恵をしぼって、簡単に捨てずに使ってもらうようにしていただきたいと思います。
 カット野菜の利用はこだわる料理人からすれば邪道と思われるかもしれませんので、あえて勧めはしません。また、だしがらは最初から化学調味料を使えばごみは出ないかもしれませんが、消費者からすれば、やはり本当にだしをとったほうが美味しいですし、味を落とすのは本末転倒ですから、そこまでしてごみを減らさなくてもいいということはあります。実際に調査した18の旅館ホテルの中では、魚を一匹丸ごと使うところもあれば、切り身を使うところもありました。切り身ですと生ごみは少ないですが、パックなどの容器包装が増えますから、一概には言えないところです。

発生抑制 その2 〜メニューの工夫
 発生抑制のその2はメニューの工夫です。普通のメニューで出されると食べきれない人もいますから、ハーフメニューがあるとお客さんにとって親切ですね。また、お客様からの予約時に、例えばアレルギーで食べられないものがないか確認して、食べられない素材を出さないことが実践されていました。飲食店ですと得意客の好き嫌いを把握できますね。このお客さんはこれをつけても絶対に残すから別のものにしようというようなこともできます。私も紅生姜や色の毒々しい真っ赤な福神漬、黄色いタクアンなどは出されても食べないですね。最近の消費者の嗜好として、自然の色に近いものを好みますから、出した端から残されるようなものはなるべくはずしていくといったことを考える必要があります。付け合わせのパセリや大葉も、農薬を気にする人もいるので、空き地があれば自分で育ててみるなども良いかと思います。自家製とわかっていれば逆にしっかり食べますので、そういうこともぜひお客さんとコミュニケーションしてください。
 それから、この間あるところで食事したら、海老のチリソースを一口、口に入れたら塩素臭いんですね。食中毒を起こさないようにかなり濃い目の塩素で消毒したのかな、これはやりすぎだなと、思わず残してしまいました。そういう見た目や味の点で引っかかるものを出されれば食べ残しにつながりますから、下げた時になぜこれが残されたのかなと考えて、それを次にフィードバックして、出し方を考えてみてください。
 皆さんのような飲食店では比較的食べ残しが少ないですね。一番多いのが結婚式の披露宴で、次に宴会です。お酒を飲むと男性は食べない人も多いですね。最初の幹事さんとの打合せで、客層、年齢層、男女の比率などで最初から残るようなものを出しても仕方がないので、足りないと困りますから加減をしながら出していく。結果的にたくさん飲んだけれど予算内で納まったということであれば次につながりますね。
 例えば、軽井沢の星野リゾートでは、結婚式の披露宴で当日の出席者に洋食か和食か選んでもらう方式にしたところ、食べ残しが16%も減ったということです。宴会を受ける場合にはぜひ事前の打合せをしっかりしてください。旅館ホテルの場合にはビュッフェ方式を採用して、日本人も慣れてきましたから取り過ぎないようになってきたそうです。結婚式の場合には、とらずに残った場合にはその後従業員のまかない料理にできますね。

発生抑制 その3 〜計画的な仕入れ
 後は、計画的な仕入れ、これは天気の具合などを考えてメニューを作ることが必要です。適切な在庫管理によるロス削減、これは仕入れが多すぎて傷んでしまったということのないように早めに手直しして、まかない料理にうまく使っていくといいですね。揚げ物が多いとどうしても揚げ油が増えますが、例えば全く新しい油より素材の味が染み出た油の方がおいしいということもありますから、劣化させない使い方でまだまだ使える油をゴミとして排出しないようにするということ。酸化してしまったものは味も体にも悪いですから使えませんが、セラミックを使った商品で油の交換が少なくてすむといったものも出ていますので、使ってみるのもいいかもしれません。


B 減量・再生利用

減量・再生利用 その1
 減量については、まずは水切りです。これが一番簡単にでき、10%程度は減量できます。これは既にやっておられる方も多いかと思います。

減量・再生利用 その2
 次に再生利用ですが、家で犬や猫、家畜を飼っておられる方はえさとして有効利用できます。発酵・乾燥処理機で飼料や肥料にすることもできます。旅館ホテルではありませんので、そんなにたくさんは出ないと思いますから、自家処理もしやすいと思います。また、廃食用油を以前は手作り石鹸などで利用していましたが、今はバイオディーゼル燃料という技術があります。京都や滋賀で、琵琶湖を汚さないために、アルコールと反応させてディーゼル車の燃料として使っています。私も排気ガスのにおいを嗅がせてもらいましたが、ちょっと天ぷらの匂いがするかなという程度で、ディーゼル車の排ガスなんて普通はとても嗅げませんが、これは大丈夫でした。京都市では実際にゴミ収集車の7割と、市バスの一部がこの燃料で走っています。集めて燃料化をするというのも一つの方法です。
 先ほどは生ごみを肥料化するというお話をしましたが、私の家でも2000年に可燃ごみの排出量を測定してみました。私の家は4人家族ですが、少ないときで7kg、多いときで12kgの可燃ごみが出ていました。それを、コンポスターを1個4千円くらいで買い、生ごみはゴミ袋に入れないでコンポスターに入れたところ、多いときで5.5kg、少ないときで2kgになりました。生ごみがいかに大きいかということですね。家庭用の生ごみ処理機は加熱や乾燥するのにエネルギーを使っていますが、エネルギーを使うのはあまり環境によくありませんね。ただしコンポスターもしっかり水切りをしないと、うまく発酵せず腐敗して悪臭を放ち、ハエがわきます。そこで庭の枯れた草や葉を時々足してやって、水分調節をします。5年経ちますが、町の補助金をもらって、同じものをもう1つ予備で買いましたが、最初の1個が5年経っても満杯にならないですね。冬場は気温が下がるのでだんだん上の方まで来るんですが、春先になってくるとうまく分解してくれます。夏場はけっこうスイカやメロンの皮が出ますが、どんどん分解してくれます。芝や枯葉を入れるといったん量は増えますが、2、3日しますとぐんと量が減っています。そんなにたくさんの生ごみが出ているわけではないと思いますので、このくらいで十分です。

減量・再生利用 その3
 どうせやるなら食品ごみだけではなく、飲み物やお酒のビンも再生利用しましょう。ビール瓶はリターナブルですね。日本酒の小瓶はワンウエイのものが多いですが、リターナブル瓶の銘柄もあります。酒屋さんと相談して、なるべく1回でごみにならない瓶を使いましょう。また、納品のときに段ボール箱やトロ箱がごみになってしまいますが、コンテナを使ってもらえば、中身だけをもらって次のときに空箱を返す。魚のトロ箱はできるだけ持って帰ってもらうなどの工夫が必要です。
 また、お茶碗が割れた、お皿が割れたとなるとごみになります。多治見市ではそれを細かく砕いて20%再利用しています。割れてしまったお皿も埋め立てずに再び活用することができます。それから割り箸も従業員が持ち帰って、かまどの火付けに使っているところがありました。王子製紙に売って再生紙にしているという取り組みもありました。数が集まればそういうこともできますね。割り箸をやめてプラスチックの箸に変えたところもありました。考えてみると洋食ではナイフとフォークを洗って同じものを何度も使いますね。お箸だけ新しい割り箸を使うことはないわけです。きちんと清潔さを保てれば割り箸を使わなくてもいいし、やめてもいいのです。しかし一時期、割り箸は森林破壊と言われたときがありましたが、逆に森林を維持するため間伐した材から作られる箸もありますから、一概には言えません。どういう素性の割り箸なのか、中国から運ばれてくるのか、岐阜県の間伐材の割り箸なのか、きちんと理解した上で、林業の育成の上で使っていますと言えれば同じ割り箸でも違ってきます。
 それから、喫茶店でコーヒーを頼むとスティックシュガーと小さいミルクがついてきますが、これも昔は、砂糖は角砂糖、ミルクはピッチャーに入っていました。もう一度見直してみてはどうでしょうか。
 ということで、食品ごみ自体を考えるとともに、その他のごみも出入りの魚屋さん、八百屋さんと相談してごみの出ない仕組みを考えていきましょう。
 いろいろとご紹介しましたが、経費の削減につながることがたくさんあります。


片亀  光(かたかめ ひかる)
 1959年群馬県太田市生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業(農業経済学専攻)・有限会社環境サポートシステム代表表取締役・高崎経済大学非常勤講師(環境教育論・環境保全論)・環境省環境カウンセラー。
 環境コンサルタントとして講演活動を中心に、企業の環境マネジメントシステム構築のアドバイスから一般市民対象の環境セミナー、小学生から高校生までの環境教育プログラムづくり等、幅広く活躍。