理事長訪問 第9回 岐阜
岐阜県飲食生活衛生同業組合井上 克彦 理事長に聞くソフトで勝負、ハートで勝負
お客様に満足していただける店づくり
―井上理事長は結婚式場をいつ頃から経営なさっているのですか?
井上理事長(以下井上)
●昭和25年から両親が別の場所で料理屋をやっていました。そこが立体交差になったことで、前から買ってあった土地に昭和52年に移り、新しい形態の結婚式場にして、社名も「株式会社各務原会館」と変えました。新しい会社ですぐに社長となりました。
高校2年のときに両親が料理屋を始めてものすごく忙しくなったため、親族会議を開きました。そこで、長男なのでお前もやれということになり、それで昭和33年に卒業したと同時に店に入りました。料理長はいたので、よそに出ずに7人くらいの親方につきました。ここを建てるまで、52年の3月まで調理場にいました。
―結婚式場の先駆けともいえますね。
井上●前の料理屋のときも年間20〜30は婚礼をやっていました。これからは畳の結婚式ではなくテーブルの結婚式に代わっていくだろうということで、この施設を建てました。現在は各務原市内にはホテルが1ヶ所、専門式場が全部で3つあります。昭和52年頃はこのようなスタイルはまだなかったです。
―さて、井上理事長の組合の活動の始まりについてお話下さい。
井上●各務原市には5つの組合があります。その中の「蘇原」という組合の組合長を最初にしました。県の仕事では平成4年から理事長をお受けしています。全飲連の副会長は2年前からです。
―岐阜の飲食店組合の活動についてお聞かせ下さい。
井上●今、岐阜の飲食組合には2,500人の会員がいます。支部の数が42です。組合だよりを年に2回発行して、全組合員に配布しています。また、2年ごとに組合のご案内をつくり新規組合員獲得のためのPRとして、商工会議所や商工会、保健所などにおいていただき、組合加入の促進をしています。
また、岐阜県では「飲食フェアー」というのが毎年10月に、県の生衛連合会と指導センターの主催で岐阜市で開催し、もう30回やっています。これは、浴場や理美容も一緒になり、異業種で食肉なども一緒に入って15団体全部でやっています。業者がブースを作って出店しています。フェアーでは「お好みのれん街」といって我々の組合、飲食、中華、喫茶、寿司などでお客さんに無料で食べてもらおうと、2日間で2,200食くらい出します。
―組合員の減少が課題ですがどんな対応をしていますか?
井上●組合員の減少、それと同時に食協の加入率が都市部ほど悪いのです。食協の役員を飲食組合の役員が率先して引き受けるようにと考えています。食協の役員をしていると、許可の更新や新規加入など絶えず飲食店の出入りに関わります。組合の役員と食協の役員を兼ねた場合に非常に組合勧誘がしやすいのです。この前の理事会でも話しましたが、このようにこちらから積極的に組織に入っていかないと、組織が大きくならないのです。
―これからの厳しい状況の中、飲食店経営についての井上理事長のお考えは?
井上●まずは「お客様に満足していただける店づくり」だと思います。店そのものも、接客も、味もということです。それに尽きると思います。やはりお客様の満足というのが一番大事だと思いますが、ファミレスも従業員教育は良いのですが、何か心がこもっていないような。我々の組合は小規模ながら心のこもった接客、料理を提供していく。それ以外に勝つ道はありません。
私の名刺の裏には「お客様に満足を、私達に充実感を、普遍の価値観の追求を」書いてありますが、大手資本に対抗していくには、ソフトで勝負、ハートで勝負という精神が大事です。
―さて、井上理事長の結婚式場では、どんなお料理を出しているのですか?
井上●和洋折衷、中華も入れたものを取り入れていますが、独特な料理というか、ここはアペックスホールといいますが、アペックス会席というのを作りまして、独自の和洋中を取り混ぜた料理を出しております。これからはただの和食では難しいと思います。お客様が多様化していますから。
―ウエディング業界も競争が激しいと思いますが、経営者としての今後どんな展開をお考えですか?
井上●5年先に2号店が出せればと思っています。そろそろ息子に譲ろうかとも。
施設一軒を貸し切るという形のブライダル、そのような展開になると思っています。ただ大きく構えるのではなくて、お客さまのニーズに応えていくための勉強が必要です。お客様は知識が豊富になってきています。絶えず若者の感覚を学び続けるということです。
私どもは自前の調理場で調理師を抱えておりますので、和食、洋食、中華と。やはり昔から料理屋をやっていたということで、地元の人に、一般の宴会にも使っていただき、料理で評判を取っているということです。ですから、料理を重視する姿勢は今も変わりません。試食会も予約を入れていただいたお客様だけでなく、まだ決まっていないお客様に対しても行なっています。
―最後に理事長として今後の組合活動に、どう取り組まれていきますか?
井上●やはりいかにして組合員の減少を止めるかです。後継者問題にどう取り組むか。これは全国的なことですので、全国レベルで今後やっていかないといけないと思います。そこが一番の課題だと思っています。
それから「地産地消」ですね。岐阜の食材は豊富ですが、作る方が都会に出せば高く売れるということで、なかなか地元では手に入らないのです。その辺を行政にも働きかけて、具体的に地元で消費する、地元に売りに出すということをやっていきたいと思います。
―今日はどうもありがとうございました。