標準営業約款の検討進む
消費者からのより強い信頼を目指す全飲連では、消費者利益擁護のための事業として「一般飲食店営業に関する標準営業約款」の検討を平成12年度から実施しています。本年度までに7回の検討委員会が開催され、その実現に向け検討を行ってきました。
標準営業約款制度とは、消費者保護の観点から生活関係営業(以下「生衛業」)の店が提供するサービスや商品の内容、その店の施設や設備について明確に表示するとともに、その店の営業に関して事故が発生した場合における賠償を適切に行うことによって利用者や消費者が営業者からサービスや商品を購入する際の選択の利便を図ることを目的として、昭和54年に「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」の改正により創設されたものです。
この標準営業約款は、財団法人全国生活衛生営業指導センターが、厚生労働大臣の認可を受けて設定することとされており、現在、クリーニング業(昭和58年3月26日許可)、理容業(昭和59年10月18日認可)、美容業(昭和59年10月18日認可)の3業種が設定されています。
営業者は標準営業約款に従って営業を行おうとする時は、各都道府県生活衛生営業指導センターに登録の申込みを行い、標準約款店である旨を表示する標識(現在、Sマーク)と約款の要旨を掲示することとなっています。(理容・美容・クリーニング業の登録店舗は全国で9万店、平成15年3月未現在)
標準営業約款は、生衛法に基づき業種ごとに、@役務の内容又は商品の品質の表示の適正化に関する事項A施設又は設備の表示の適正化に関する事項B損害賠償の実施の確保に関する事項の3つの基本事項を定めています。
このように標準営業約款登録店は、サービス又は商品の種目及び施設又は設備の適正な表示を行い、更に万一の事故が発生した際は必ず適切な弁償を行う云わば、良心的な優良店として消費者に認識されることになります。
登録店に対するメリット作りを検討
一般飲食店に関する標準営業約款の作成は、平成13年3月に約款導人のための検討委員会を設置し、検討を進め標準営業約款(案)が作成されました。現在、その制度発足に関し、登録店に対するメリット作りの構築を図るため、業界側からの要望を行っています。理容、美容、クリーニングがこれまで使用の「Sマーク」については、今後予定している飲食、麺の参画により飲食業界にふさわしい新たなデザイン等する議論及び調整を行っています。
なお、検討委員会の委員構成は、四方洋(東邦大学元教授)、大塚徹(日本ヒューマン経営研究社社長)、鴨木房子((社)全国消費生活相談員協会専務理事)、長見萬里野((財)日本消費協会理事)、木曽秀雄(愛媛県料飲業生活衛生同業組合理事長)、中島康介(秋田県飲食業生活衛生同業組合理事長)となっています。
◎一般飲食業営業標準約款事項の策定案
一般飲食店営業に関する標準営業約款
(目 的)
第1条 一般飲食店営業に関する標準営業約款(以下「約款」という。)は、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭和32年法律第164号。以下「法」という。)第57条の12第1項の規定に基づき、一般飲食店営業について役務の内容又は商品の品質及び施設又は設備の表示の適正化並びに損害賠償の実施の確保に関する事項を定めることにより、消費者の選択の利便を図り、併せて営業者の資質の向上及び公衆衛生の向上に資することを目的とする。
(定 義)
第2条 この約款で「営業者」とは、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律施行令(昭和32年政令第279号)別表第5号に規定する飲食店営業者で、この約款に従い営業を行う者として都道府県生活衛生営業指導センターの登録を受けた者をいう。
2 この約款で「営業施設」とは、営業者の登録に係る施設をいう。
3 この約款で「表示」とは、提供する役務の内容等を消費者に周知させることを目的として営業施設の店頭又は店内に掲げる掲示板、メニュー表、パンフレット、インターネット等による広告をいう。
(役務の内容又は商品の品質の表示の適正化に関する事項)
第3条 営業者は、提供する役務の内容又は商品の品質について、次の各号に定めるところに従い表示するものとする。
(1) 主な商品の表示
営業者は、主要な商品の内容及びカロリーを、写真又は説明文によるメニュー表等により、店頭又は店内に表示するものとする。
(2) アピール食材の表示
営業者は、使用する食材の中で消費者にアピールしたい食材を必ず1つ以上選定し、これを店頭又は店内に表示するものとする。
(3)消費期限等の表示
営業者は、仕出し弁当等消費者が営業施設外で飲食するための商品については、消費期限及び製造年月日を表示するものとする。
(4)調理師の表示
営業者は、調理師(調理師法(昭和33年法律第147号)第2条に定める者。)を営業施設に配置するものとし、その氏名を店内に表示するものとする。(未確定)
2 営業者は、消費者に役務又は商品を提供するに当たっては、次の各号に定めるところに従い行うものとする。
(1)消費者の接遇の向上・改善
営業者は、従業員に対する接遇教育、研修を実施するなど消費者の接遇の向上・改善に努めるものとする。
また、営業者は、消費者に対する望ましい役務を提供するための手引書「サービスマニュアル」を策定するとともに、調理担当者、接客担当者等を保健所等の主催による各種講習会又は研修会に参加させるものとする。
(2) 情報技術(IT)の利用
営業者は、インターネットによる予約システムの導入によって消費者サービスを展開するなどITを活用した営業方法の改善に努めるものとする。
(3)宅配サービスの実施
営業者は、関係市町村、社会福祉協議会等との連携の下に宅配サービスの実施に積極的に取り組み、社会福祉の一翼を担うよう努めるものとする。
(4) 食品廃棄物の減量化及びリサイクルの推進
営業者は、営業施設から発生する食品廃棄物の減量化及び再生利用(リサイクル)に努めるものとする。
(施設又は設備の表示の適正化に関する事項)
第4条 営業者は、提供する施設又は設備について、次の各号に定めるところに従い表示するものとする。
(1)営業施設の衛生管理状況
営業者は、別途定める「衛生管理状況の自主点検表(チェックリスト)」に基づき、毎月一回、営業施設の衛生管理状況の点検を行い、この結果を記録し、当該結果を店内に表示するものとする。
(2)営業施設の外国語又はローマ字の表記
営業者は、外国人が使用しやすいよう、営業施設内の洗面所、非常口などに外国語又はローマ字の表記を行うものとする。
2 営業者は、提供する施設又は設備について、次の各号に定めるところに従い維持・管理するものとする。
(1)営業施設のバリアフリー化の推進
営業者は、障害者や高齢者が営業施設を利用しやすいよう、出入口及び通路の拡大、トイレの改造、高さ調節が可能なテーブルの設置、車椅子を置くスペースの確保などバリアフリー化の実現に努めるものとする。
(2)受動喫煙の防止の推進
営業者は、受動喫煙の防止の取り組みを推進するため、営業施設内の禁煙又は分煙(時間帯分煙を含む。)に努めるものとする。
(損害賠償の実施の確保に関する事項)
第5条 営業者は、消費者に対する役務若しくは商品の提供又は施設若しくは設備の管理に起因して事故が発生した場合は、全国生活衛生営業指導センター(以下「全国指導センター」という。)が別途定める一般飲食店事故賠償基準に基づき、消費者に対してその損害賠償を速やかに行うものとする。
2 営業者は、前項の損害賠償の確実な実施を図るため、全国指導センターが別途定める損害賠償保険等に加入しなければならない。
3 営業者は、第1項の事故に関し迅速かつ円満な解決を図るため、消費者の利便に配慮してその苦情処理に努めるものとする。
(標識等の提示)
第6条 営業者は、全国指導センターが法第57条の13第2項の規定に基づき定める様式の標識を、営業施設ごとに、店頭又は店内の利用者の見やすい場所に提示するものとする。
2 前項の標識の有効期間は、登録の有効期間と同一とする。
3 営業者は、この約款に従って営業を行う旨、第3条第1項及び第4条第1項第1号に規定する事項、前条の損害賠償の実施の確保に関する事項の要旨を、営業施設ごとに、店頭又は店内の利用者の見やすい場所に提示するものとする。
4 営業者が営業を廃止する旨の届出を行ったとき若しくは登録を取り消されたとき又は登録の有効期間が経過したときは、営業者は当該営業施設について、速やかに第1項の標識及び前項の要旨を取り外さなければならない。
一般飲食店営業に関する標準営業約款施行細則
第1条 約款第3条第1項第1号にいう「主要な商品」とは、営業者が提供する商品の中で消費者から注文が多いものをいう。
第2条 約款第3条第1項第2号にいう「アピールしたい食材」は、営業者が、その提供する商品に用いる食材のうち、栽培方法、生産地等当該食材の特徴を消費者に対し、積極的に広告する必要があるとして選択したものをいう。
第3条 全国生活衛生営業指導センター(以下「全国指導センター」という。)に一般飲食店営業事故賠償審査委員会を置き、一般飲食店営業事故賠償に関し消費者及び営業者との間に生じた紛争を審査する。
2 前項の事故賠償審査委員会の構成及び運営は、全国指導センターが別途定める。
第4条 約款第6条第3項に規定する事項の要旨は、別記様式の掲示板に記載するものとする。