理事長訪問 第8回 岡山
岡山県飲食業生活衛生同業組合
坂口 哲夫 理事長に聞く
岡山の味と文化をつくる。世代を超えて伝えたい、郷土料理の素朴な味―坂口理事長は鹿児島のお生まれだそうですね。
坂口理事長(以下坂口)●私の家族のなかに水商売に携わっている者がいまして、手伝っているうちに料理人になろうと思いました。18歳で大阪に出て修行、勉強してから24歳で岡山に来ました。大阪に事務所があった関係で「岡山に仕事に行って来い」といわれ、長くいる予定は無かったんですが、昭和43年にここに店を立ち上げました。
―岡山大会の時は当時の理事長さんがご病気で、実質的な実行委員長として力を注がれたと伺っていますが。
坂口●前理事長が全国大会を引き受けてきたのですが、しかし景気は下降気味で難しい状況でした。そして大会1年前に前理事長が病気になりました。私は岡山市の中心にいたので、理事長代行は遠くて大変なので、私が裏方で支えさせてもらいました。平成10年6月に大会があり、その直後に岡山市料飲連の理事長になり、続けて県の理事長になり、もう5年です。
―坂口理事長が組合活動で心掛けていること、課題にしていることは
坂口●どこの県も組合員の減少に困っていますが、岡山も関西圏のチェーン店が乗り込んで来ています。また高齢化問題、後継者問題もあり、これをいかに止めるか。私の力だけではどうにもならない。だから皆で力を合わせて、そこから手を打ちましょうと支部長さんにことある毎に言っているんです。
―岡山の飲食店組合の特徴はどんなところですか。
坂口●岡山市は大衆食堂組合で出発しました。うどん、蕎麦屋さん、スナック、バーと他業種に渡っているので話を一本にするのは難しいんです。以前は組織の中で日本料理と大衆料理とスナックを主にした形に分けていましたが、今は難しくなってしまい、なかなかまとまりが無いのが現状です。岡山の飲食店は何千件もありますが、全体では25から30%しか組合に入っていません。ですから飲食業はきちんとした統計が出ないですね。それは飲食は簡単に商売ができ、簡単に辞めるからです。
―これからの飲食業や組合の方向性についてどうお考えですか。
坂口●私の店は県庁に近いが役所が使わなくなりました。税金の問題かもしれませんが、中小企業も交際費を使えないので大きな打撃です。高級料亭も潰れています。あまり値段の張らない安い店が一番で、ある程度の年代層もあり、ご夫人を相手にする店は流行っています。若い人には早さと量です。
都会型というのか、最近は朝昼晩の食が崩れてきています。岡山でも夜9時頃にオープンする店が出てきました。そういう店は我々とのつながりがありませんが…。お客さんの生活、今の外食は昔と違って家族が多いので、そういうことをきっちりつかむことで必要でしょうね。
組合の大きなメリットとしては国民生活金融公庫とのつなぎとか、カラオケ問題です。一つのメリットだけではどうにもなりませんが、組合員相互の親睦を図ることが先ず重要です。
―岡山での道路交通法改正の影響はいかがですか。
坂口●やはりお客さんは遠のきました。会合のたびにどうにかならないかと意見が出ますが難しいです。一時は郊外が堪えました。売り上げがダウンしたので、ファミリー向け、奥様向けのランチ、これをきっかけに業態を変えていった店がでてきました。早く気づいたところは流行っています。私は年を取っているので自分は夜のお客さまを大事にしようと頑張っています。
―魚島横丁振興会という会があるとお聞きしたのですが。
坂口●岡山市の表町二、三丁目の商店街の一角に飲食店が多いということで寿司、割烹、郷土料理屋店など二十数軒で、平成六年に「おかやま魚島横丁」をつくりました。このあたりはかつて港として栄えた京橋に隣接していましたので、町の活性化と客さんに瀬戸内海の魚介を味わってもらう試みです。郷土料理の素朴な味が世代を超えて伝わればと思っています。
―魚島というのは地名なのですか?
坂口●岡山では八十八夜から40日間を「魚島(うおじま)」、「魚島どき」とよんでいます。この季節、鯛や鰆が産卵のため瀬戸内海へ群れをなして回遊してくる様子がまるで島のように見えたことから名付けられたものなんです。最近は家庭ではいつでも新鮮な魚が味わえるようになり、魚島と言う言葉も聞かれなくなりました。
―魚島横丁の名物は何ですか。
坂口●料理店には「必ず小魚を置いて下さい」とお願いしています。キス、カレイ、メバルなど瀬戸内海の小魚はみな滋味があります。味がこまやかなんですよ。名物は「ままかりずし」です。開いて水洗いし、塩で生臭さをころして、酢で洗い甘酢につけ、昆布に挟んで味をのせ、握りずしにします。
―魚島横丁を立ち上げて、なにか変化したことはありますか。
坂口●200メートル四方の商店街の中で、年に2、3回飲食の販売をしたり、表町商店街とタイアップして春秋にイベントをしています。ここは昔から商店街の裏通りというイメージでしたが、立ち上げてから行政と協力し、スッキリとした町並みにもなりました。また、今まで会合するときでも近くの店には入りづらかったが、近くで会うようになりました。
―飲食店の商店街活動としての新しい方向だと思います。
坂口●今我々が取り組まなければならないものはたくさんあります。知恵を絞った計画をされていることもあるし、皆自分の店を守るだけではなくて、目を見開けばできることがたくさんあります。しかし我々だけでやっていたのでは駄目です。人が商店街に集まらないと、飲食店もだめになるし、商店街に人を集めるために我々も協力して頑張らなければと考えています。
―ところで日本食ブームといわれていますがどうお考えですか。
坂口●横文字やイタリアン、メキシコ、ベトナム、韓国ブームが一段落し、高級店も駄目になりました。手軽に入れる居酒屋、地元の魚が食べられる居酒屋に行ったらお腹も膨らむし、若い子が来ています。
日本食をアレンジした店が岡山にも増えています。昔のレストランブームは潰れたでしょう。そういうところの組合員に講習会をする場合はやっぱり日本食の講習会をする。日本食は絶対廃れないと思います。何人かの人間を育ててきて感じています。日本食が根底にあって、いろんな文化を融合できるんだと思うのです。
―坂口理事長が今後手がけてみたいこと、夢はおありですか。
坂口●私は大会が終わって理事長になったので、今考えると大会を目標に理事長になっていたらもっと変われたと思います。これからはもう少し若い世代が勉強できるような機会をつくっていきたいと思います。各支部も年配者が多いので若い人が出てきて欲しい。岡山市は若い人を吸い上げるようにしています。どんどんためになる講習会をやらなくてはいけませんね。
―今日はどうもありがとうございました。
坂口哲夫(さかぐち てつお)
全国飲食業生活衛生同業組合連合会副会長
岡山県飲食業生活衛生同業組合理事長
岡山市料飲業連合組合理事長
おかやま魚島横町振興会会長