健康増進法第25条に規定された
受動喫煙防止に係る措置の具体的な内容及び留意点

1、健康増進法第25条の制定の趣旨
 健康増進法第25条において、「学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない」こととされた。また、本条において受動喫煙とは「室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義された。
 受動喫煙による健康への悪影響については、流涙、鼻閉、頭痛等の諸症状や呼吸抑制、心拍増加、血管収縮等生理学的反応等に関する知見が示されるとともに、慢性影響として、肺がんや循環器疾患等のリスクの上昇を示す疫学的研究があり、IARC(国際がん研究機関)は、証拠の強さによる発がん性分類において、たばこを、グループ1(グループ1〜4のうち、グループ1は最も強い分類。)と分類している。さらに、受動喫煙により非喫煙妊婦であっても低出生体重児の出産の発生率が上昇するという研究報告がある。
 本条は、受動喫煙による健康への悪影響を排除するために、多数の者が利用する施設を管理する者に対し、受動喫煙を防止する措置をとる努力義務を課すこととし、これにより、国民の健康増進の観点からの受動喫煙防止の取組を積極的に推進することとしたものである。

2、健康増進法第25条の対象となる施設
 健康増進法第25条においてその対象となる施設として、学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店が明示されているが、同条における「その他の施設」は、鉄軌道駅、バスターミナル、航空旅客ターミナル、旅客船ターミナル、金融機関、美術館、博物館、社会福祉施設、商店、ホテル、旅館等の宿泊施設、屋外競技場、遊技場、娯楽施設等多数の者が利用する施設を含むものであり、同条の趣旨に鑑み、鉄軌道車両、バス及びタクシー車両、航空機、旅客船などについても「その他の施設」に含むものである。

3、受動喫煙防止措置の具体的方法
 受動喫煙防止の措置には、当該施設内を全面禁煙とする方法と施設内の喫煙場所と非喫煙場所を喫煙場所から非喫煙場所にたばこの煙が流れ出ないように分割(分煙)する方法がある。全面禁煙は、受動喫煙防止対策として極めて有効であるが、施設の規模・構造、利用状況等は、各施設により様々であるため、施設の態様や利用者のニーズに応じた適切な受動喫煙防止対策を進める必要がある。その際には、公共性等の当該施設の社会的な役割も十分に考慮に入れて、「分煙効果判定基準策定検討会報告書」(平成14年6月。概要は別添のとおり。本文は厚生労働省ホームページ参照のこと。)などを参考にしながら、喫煙場所から非喫煙場所にたばこの煙が流れ出ないよう、適切な受動喫煙防止措置の方法を採用する必要がある。
 なお、完全禁煙を行っている場所では、その旨を表示し、また、分煙を行っている場所では、禁煙場所と喫煙場所の表示を明確に行い、周知を図るとともに、来客者等にその旨を知らせて理解と協力を求める等の措置を取ることも受動喫煙防止対策として効果的と考えられる。さらに、労働者のための受動喫煙防止措置は、「職場における喫煙対策のためのガイドライン」(平成8年2月21日付け労働省労働基準局長通達。見直し作業中。)に即して対策が講じられることが望ましい。

4、受動喫煙防止対策の進め方
(1)都道府県労働局においても職場における受動喫煙防止対策を推進していることから、健康増進法第25条に基づく施策の実施に当たっては、管内労働局との連携を図る。
(2)健康増進法第25条の対象となる施設の管理者は多岐にわたるが、これら管理者を集めて受動喫煙の健康への悪影響や各地の好事例の紹介等を内容とした講習会を開催するなど、本条の趣旨等の周知徹底を図る。この際、職場における喫煙対策推進のための教育については、「職場における喫煙対策推進のための教育の実施について」(平成12年3月31日付け労働基準局長通達)により都道府県労働局が推進していることに留意する。
(3)平成15年度より、国民生活金融公庫の生活衛生資金貸付の対象として、受動喫煙防止施設が追加されていることから、飲食店、旅館等の生活衛生関係営業者に対して、これを周知する。また、都道府県や市町村において、禁煙支援の保健指導、分煙方法の情報提供等を実施している場合、事業者や個人の参加をより一層促すよう努力する。


職場の喫煙対策 新ガイドラインも策定


 厚生労働省は「新たな職場における喫煙対策のためのガイドライン」を策定し発表いたしました。この「新ガイドライン」では、基本的考え方、経営首脳者、管理者、労働者の果たすべき役割、喫煙対策の推進計画、喫煙対策の推進体制、施設・設備の対策、職場の空気環境、喫煙に関する教育等、喫煙対策の評価、その他の留意事項など具体的な指示事項が記されています。この「新ガイドライン」は、今後職場の禁煙・分煙対策を進めるにあたって強力な支えになるものといえます。

新ガイドラインにおいて充実が図られた主要な事項

1、設備対策としては、旧ガイドラインでは、喫煙室又は喫煙コーナー(以下「喫煙室等」という。)の設置等を行うこととされていたが、新ガイドラインでは、受動喫煙を確実に防止する観点から、可能な限り、非喫煙場所にたばこの煙が漏れない喫煙室の設置を推奨する。
2、喫煙室等に設置する「有効な喫煙対策機器」としては、旧ガイドラインでは、たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式又はたばこの煙を除去して屋内に排気する方式(空気清浄装置)のいずれかの方式によることとされているが、新ガイドラインでは、空気清浄装置はガス状成分を除去できないという問題点があることから、たばこの煙が拡散する前に吸引して屋外に排出する方式の喫煙対策を推奨する。やむを得ない措置として、空気清浄装置を設置する場合には、換気に特段の配慮をすることが必要である旨を明記する。
3、新ガイドラインでは、職場の空気環境の基準に、喫煙室等から非喫煙場所へのたばこの煙やにおいの流入を防止するため、喫煙室等と非喫煙場所との境界において、喫煙室等に向かう風速を0.2m/s以上とするように必要な措置を講ずることを追加する。

受動喫煙防止施設設置のための資金融資制度

分煙徹底へ低利融資で後押し《国金》
 平成15年度より、「健康増進法」の成立に伴い、国民生活金融公庫の生活衛生資金貸付の対象として、受動喫煙防止施設が追加されました。飲食店、旅館等の生活衛生関係営業者は 受動喫煙防止施設を設けるための資金融資を 長期低利で受けることができます。詳しくは国民生活金融公庫にお問い合わせください。

■融資の内容
【受動喫煙防止資金】
●利用できる人
 生活衛生関係営業者(飲食店営業、喫茶店営業、理容業、美容業、興行場営業、旅館業及びサウナを含む一般公衆浴場業を営む方)
●資金の使いみち
 受動喫煙防止施設(喫煙室、分煙テーブル、空気清浄機など)を設置するために必要とする設備資金
●融資限度額
 通常の融資限度額に3千万円上乗せ
●返済期間
 15年以内
●利率
 特別利率A(振興計画に基づく場合は特別利率B)
●取扱期間
 平成17年3月31日まで
●詳しくは国民生活金融公庫にお問い合わせください。国民生活金融公庫のホームページ http://www.kokukin.go.jp/

外食のお供に『禁煙レストラン&カフェガイド』

 完全禁煙、完全分煙のお店だけを選りすぐった『空気のおいしい 禁煙レストラン&カフェ・ガイド』が発売されます。東京近郊の200店以上を、味と空気にこだわって厳選掲載。飲屋・バーまで網羅しています。受動喫煙防止や分煙徹底に取り組まれる方の参考になると思われます。
◆発売 株式会社 ほんの木/分煙社会をめざす会 レストラン・プロジェクト 編/森川起代巳 企画・構成(分煙社会をめざす会 世話人)◆2003年6月末日 発売予定◆価格 本体予価1,400円(後払い/送料無料)◆お問い合せ・ご注文
株式会社 ほんの木/〒104-0054 東京都千代田区神田錦町2-9-1

 

健康増進法 第二節 受動喫煙の防止
第25条 
学校、体育館、病院、劇場、観覧場、集会場、展示場、百貨店、事務所、官公庁施設、飲食店その他の多数の者が利用する施設を管理する者は、これらを利用する者について、受動喫煙(室内又はこれに準ずる環境において、他人のたばこの煙を吸わされることをいう。)を防止するために必要な措置を講ずるように努めなければならない。