中国ブロック講習会  9月25日(水)岡山市

繁昌店に必ずある勝利への法則  
生き残り経営戦略!

講師 日本ヒューマン経営研究社  代表取締役 大塚 徹

飲食店に深刻な打撃。道路交通法改正への対応策
 6月に道路交通法の改正がありました。その影響が出ています。蒲郡では60の飲食店が連携してお客様に500円分のタクシーチケットを配っています。これは一人でやっても駄目です。道交法改正の影響で客数とアルコールの消費が減っています。そこで安い運転代行の紹介や割引、飲食代に応じたタクシー代の割引、最寄りの駅までの送迎サービスを始めたり、ノンアルコールドリンクを充実させています。それから翌日までの無料駐車スペースや送迎など色々工夫しています。あるスナック4軒の経営者が集まってワンボックスカーの方々にアルバイトで送迎を頼んでいます。それからタクシー組合、運転代行組合などと協定を結んで通常の料金よりも2割安にしてもらって更にお客さんの飲食代によってお店が一割引の割引券を差し上げるなどの例があります。
 もう一つは公共交通機関の終夜運行です。これを求める運動をやるべきだと思います。勿論簡単にはいきません。これは政治の問題ですから、全飲連として是非やっていただきたいと思います。

集客の極意はお店の雰囲気づくりと顔づくり
 さて本日のテーマは「集客の極意」です。今日こそ大事な事は限界の中に創造ありということです。ここで組合員が一丸となってイメージアップをする、こぞって勉強して来年からは活力アップを作っていく。集団のエネルギー、スクラムを組んだエネルギーが今こそ大切なんです。
 まず「雰囲気」です。雰囲気とは店主と働く人の心です。やる気のない店は冷たくて暗く、空気は重いんです。繁昌店というのはお店の空気が丸いんです。雰囲気というのはどういう所から出てくるかというと、内外装、BGM、小物類、全てが醸し出す雰囲気プラスそこに働く人の意識です。もっと美味しい、もっと良いサービス、もっと雰囲気を良くしよう、もっとキレイに掃除するなどといった意識なんです。どうしたらお客様に喜ばれるかということを考え続ける事。これは必ず相手に通じる事です。東京ディズニーランドは絶対に日常感を見せません。非日常的をお客様は求めるのです。異なった気の空間を求めるんです。
 それから「入口」に気を使わないと駄目です。裏から入ってくる人はお金持っていく人です。入口から入ってくる人でないとお金にならないにも関わらず入口に気を使わない。入ってみたくなる入口。目に止まる、入りたくなる、食べたくなる。レストランや飲食店の店頭でメニューを見やすく表示している所がよくあります。お店側が思っている以上にお客様は店に入る時の敷居というのは高いんです。値段が高いところじゃないです。美味しいかな?良いサービスしてくれるかな?と迷うんです。お店というのは常に3割は新規のお客様を捕まえ続けていかなければ間違いなく潰れます。
 風俗関係、社交性のあるお店が、なぜ料金体系が今日こんなに分かりやすくなったかというと、少しでも安い負担で遊びたいということなんです。料金体系をしっかり明示してあげることで敷居を低くしているんです。その次に楽しさを表現する。相手の欲望を引きずり込まなくては駄目です。それともう一つは外観のセンスです。最近はこのセンスが非常に高くなっている。当然安心感を与えるということですね。
 お店が小規模であれば「あるほどあの店のあれが食べたい」という事につながります。徹底的に得意分野に絞って下さい。ラーメンでも味噌なら味噌を徹底的に得意分野に絞っていく事です。「何でもあります」というのは今更魅力だという人は誰もいないんです。ですから、強い小規模店になる為には徹底的に自分の得意分野を絞っていく。長所をうんと伸ばす事で良いウワサが立つようになります。

飲食業はお客様とのふれあいビジネス
 2番目の話は「飲食業というのは、ふれあいビジネスです」ということです。飲食六業種六業態というのは全部ふれあいです。美味しさというのは脳が決めるんです。お店の評判という情報がだんだんインプットされれば「あそこは美味しい」とか、「サービスが良い」とか、「女性の接客が本当に素晴らしい」とか、良い情報が生まれ、味覚は向上してくるんです。大好きな恋人が作ってくれる料理は何でも美味しい。科学的にはこのカレーライスは美味しいでもその店の雰囲気、そこで働く人達のサービスによって味が上がったり下がったりするんです。イライラして食べたら絶対美味しくない。山の上で塩のおにぎりでも梅干しでも、楽しいハイキングの時にはたまらなく美味しい。環境や雰囲気で脳が味を決めるんです。
 今日はバーテンの方が来ていますね。「マティーニ一つお願いします。」とオーダーが入ります。「わかった、ところでこれ誰のなんだ?」「あの三卓の田中様です。」「あっ田中様どうもようこそ。」そう思うと一生懸命作るんです。割に簡単なものです。あいつ嫌いと思った瞬間に一生懸命作らないようにするんです。味覚というのは一瞬の原理です。シェーカー降る時も素人のようにカタカタ振るんですね。カクテルの最後の美味しくするのは気泡です。
 そこをお客様は見ているんです。「俺に対してはどうか」ということを。ここにまた来たいと思わせるコツはここしかない。俺を本当に大事にしてくれると実感させる以外にないのです。それは演技でも良いですから。気を使ってくれる、皆が歓迎してくれる、ということを全員のお客様に思わせる努力をしなくては駄目です。お客さんの好みを覚えて舌を読むんです。口を覚えるんです。これが一人一人の心を掴む絶対条件です。りんごが好きとか梨が好きとか、タバコはどういうタバコが好きだとか、ウイスキーはどんなウイスキーが好きで、話題はどんな話が好きで、歌はどういう歌が好きなのか、全部一人一人の違いをしっかりと覚えておくんです。
 例えばラーメン一杯でも、「すみませんいつものでお願いします。」「かしこまりました。進藤様のお好きな様にと美味しく作りますから」と、期待感が高まるんです。自信を持って出されたら、ちょっとやわらかいなと思っても「美味しいよ」と言うんです。大事な事はその人の為に、あの人の為に、一皿の料理を作りたい、一杯のラーメンを作りたい、これをどのくらい相手に伝えるかが勝負ですからね。店主はそのお客様の所へ挨拶に行ったりするじゃないですか。調理場から帽子をかぶった白衣を着た料理人が出てきてテーブルに着て「料理長の○○でございます、いかがでございますか。」と言えばまずいという人はいないですよ。このお客様は例えばスープだったらどういうスープが好きか。とうもろこしなのか、かぼちゃなのか、アボカドなのか、野菜スープなのか、何が好きなのか、肉はどういう肉が好きなのか、飲物はどういうモノが好きなのか、ビールは必ずグラスに氷を入れる人なのか入れない人なのか、この個性を好みをしっかり掴むんです。

人の心に訴えかける「ぬくもり」あるメニュー、サービス
 レシピというのは四種類あるんです。一つは標準レシピ、二番目は作り手レシピです。その料理人、そのバーテンダーの作り手のレシピというのがあるんです。三番目は時代の流行、四番目はお客様の好みです。
 基本的なレシピ。創作料理といっても基本がしっかりしていないんです。バーテンもそうです。創作カクテルばっかりやって基本がなっていない。仕事に心が入っているかどうかです。練習は嘘つかないんですから、これがプロの生きる道です。仕事に熱が入っている時のみに技術というのは成長していくんです。
 飲食業は人肌商売です。人肌商売というのはその人の温もりが伝わるように、人は心が惹かれるんです。親切な人、温かい人、優しい人に惹かれますね。
 それから手作り、手作業、手書き、自然、天然、。これは温もりを感じるんです。天然のうなぎというだけで高いお金を取れますよね。手書きのメニュー、手作り、手作業というものはそれなりの価値観を持っています。肉屋さんで買って来たソーセージをスライスしただけでそのまま出されたら嫌でしょう。きゅうりをスライスして挟むとか、チーズを挟むとか、そこに加工を加えれば加えるほどお客は喜ぶんです。なぜならそのお客様に対するエネルギーをそこに注いでいるということが、その目の前の皿の表現に出て来るんです。飲食店というのは人肌ビジネスですから。
 居酒屋さんの定義は、あの親父、あの女将さんと話しながら酒が飲める店です。マスターに会いたいなと、ママと会いたいなと、そして話しをしながら酒を飲める居酒屋というのは流行っていますよね。全国のチェーン店の居酒屋というのはそんな雰囲気はないでしょう。みんなパート、アルバイトですから。ところが地元でそこの親父さんや女将さんはどうですか。「ひさしぶりじゃないの。そういえば奥さん具合悪かったけど大丈夫?」「お嬢さん今度大学入れて良かったですね」という話は白木屋では出ないでしょう。会いたい人がいる、これが店を選ぶ基準です。マスター、ママさん、板前さんのその顔がみたいと思われたら絶対に強い。

「また来たい」と思ってもらえるような心配り
 女性は絶対にサービスで成立するやり方があるのです。絶対三原則は、今どういうモノを欲しいか。「癒し」「甘え」「色気」です。癒し、甘え、これはホステスさんをしっかりと教育するんです。お客さんがある程度年配の方だから甘えた方がいいなと思えば甘える。男は強さが誇りだから皆大変なんです。だから癒し。背中をさすってあげてマッサージしてあげる。「すごく凝っていますね。」「頑張っているんですね」って顔をつけて後ろから揉んであげるんです。
 問題はお金を払ってもらう時です。「えっ、もう帰っちゃうんですか。お願い、あと十分でいいから居て。」と言うんです。そうすると「ああ、俺はここにいて欲しいんだな。」と勘違いするんです。お金をもらう時が大事なんです。丁寧に「ありがとうございます。えっ、もう十分いてくださいよ。」と言うんです。「すみません今日はありがとうございます、20,600円ですけど20,000万円で結構です。」と言ってみてください。2,000円チップくれますよ。遊びなんて、気分が大切なんです。タクシーに乗ったら、「運転手さん私の大事な○○様ですからお願いしますね。」と言うんです。出たら深々と頭を下げて何回も手を振る、何回も頭下げる。その夜、お客さんの携帯にメールアドレスにメールを入れる。「今日は嬉しかった楽しかった、久しぶりですものね、また来てくれると指切りしてくれましたね、ホントにホントに待ってます。」って。徹底的にまた来たいと思わせるには帰り際が大切です。全ての商売は売ってからが勝負です。売ってから徹底的にフォローをする。アフターサービス、これが必要です。

小さいことが大切。特に明るいあいさつを忘れずに
 次に、勝利への道です。飲食店は幸福感のサービス業、繁昌へのウルトラCなんてないんです。繁昌店のオーナーを見て下さい、必ずや小さい事を一つ一つしっかりとやっています。全ての仕事は小さい事の積み重ねなんです。請求書をお送りする時に、逆さに切手を貼ってみて下さい。受け取った私は破ります。曲がって張って下さい、これも破ります。それを記念切手を真っ直ぐ貼って毛筆で書けば殿方は喜ぶでしょう。一つ一つそういうサービスをしっかりと積み重ねているか。
 繁昌店の共通点というのは、必ずそこのスタッフが活き活きしている。神を見方にする最高の「気」は挨拶です。従業員同士も元気の良い明るい挨拶、オーナーと従業員も元気な挨拶、常に笑顔は絶やさないで、これをすれば良いんです。人は誰でも喜ばれるということはとても嬉しい事なんです。更に面接が大切です。多くの飲食店さんでは従業員やパートを採用する時に殆ど面接がいい加減なんです。何を質問するのか、どんな点を採用の基準にしているのか明確にしたほうが良い。何の為に採用するんですか。店を繁昌させてもらいたいから。繁昌するためにはその従業員に何をやって欲しいですか。接客はどうやって欲しいか、お皿はどういう洗い方をして欲しいですか、掃除はどのような掃除の仕方をして欲しいですか、これをしっかりと面接の時に言う。あるファミリーレストランの店長がオーナーに言われました。「店長と一緒に働きたいと思う人がいない様じゃ店長は勤まらないぞ。君の交友関係、人間性をどういうふうに受け止められるかがファミリーレストランチェーンの一つの課題だ。」人脈というのは私のお願いを聞いてくれる人なんです。これをどの位作れるかなんです。面接する時にやっぱり人柄が温かいものを感じさせる人の時は絶対採用して下さい。サービス業、接客業に向かない人というのは、3大条件があるんです。『笑顔がない人』、『態度が横柄な人』、『言葉に温かみのない人』、これは駄目です。
 レストランというのは「元気の出る場所」という意味です。お客様に美味しい食事を食べさせて栄養をつけて元気を出して気分良くしてまた元気を出す。これがそのお店の指名です。千葉県の野田市にイタリアンレストランでコモエスタという店があるんですが、オーナーがある時しみじみと「大塚さん、私はこの商売を本当にやって良かったと思ってます」という話をしたんです。ある日老夫婦がいらして2時間ぐらいで食事が終わって帰る時に「いや今日はありがとうございます。」と深々とお礼を言ったそうです。ちょっと気に留めたんで、「お客様何かあったんですか?」って聞いた。そうしたら「実は私達は今日離婚話をしにここに来たんですよ。」と言うんです。「ところがここに来て食事をしながら途中からここで働く人達の笑顔、活き活き感、これを見ているうちに私達老夫婦は考えが変わったんです。そしてどちらが言うのでもなく、お互いにもう一度やり直してみようじゃないかという気持ちになったんですよ。本当にありがとうございます。」とお礼を言われたそうです。不幸な時は元気がないんですから。不幸な時はやる気も何も出ないですよ。幸福感を味わっている時は元気、活気、やる気、くつろぎ、安らぎがあるんです。お客様は幸せになりたいんです。しっかりとその辺の所を原点をとらえていきませんと、駄目だ駄目だで全部終わってしまいます。

選ばれるお店、選ばれる自分をいかに作るか
 最後に「旺盛なサービス精神」です。「もてなしのプロですか?」と聞きたくなるようなお店が多すぎる。従業員にオーナーの姿勢が伝わっていない。そこのオーナーの持っている基準が低い。お店の支配者はお客様です。お客様が来なくなったらお店は終わりです。選ばれる自分、選ばれる店をどう作るかですよ。それが「組合の勉強会」なんです。2番目が「明快なコンセプト」です。営業基準。3番が「どういうお客様を相手にしたいか。」4番目が「喜ばれる商品、メニュー」です。5番目が「清潔感」。6番目が「くつろぎと安らぎの店内が感じられるかどうか」。ホコリっぽいか。額はまがっていないか、クモの巣が張っていないか、電球は消えていないか。便所は臭くないか、三角コーナーの蓋が壊れていないか。7番目が「親切な接客であるかどうか」。8番目は「わくわくする楽しい看板になっているかどうか」。十番目が「温かく優しく豊かな店」。癒し感、くつろぎ感は絶対条件です。最後が「自分だけが良い思いをする為に働くと、人は誰も支えてくれない」。人を喜ばせておいて自分が不幸になるということはありません。全てのビジネスは全て義務行為の多さなんです。義務行為が少ないと絶対に繁昌しない、それは与えたものが受け取るものなんです。相手から先に挨拶されてからするんではなくて、全て自分から先に挨拶するようなものです。人間は考えなくなった時にマンネリ化と惰性に入るんです。考え続けているとマンネリ化と惰性は絶対ないです永久に。