【再生支援の総合的対策】について

コロナ禍からの社会経済活動の正常化が進み、本年4月には民間金融機関による実質無利子・無担保融資(民間ゼロゼロ融資)の返済開始の最後のピークを迎えました。債務が膨らんだ事業者に対する、一歩先を見据えた早期の経営改善・事業再生・再チャレンジ支援の必要性が高まっています。これを受けて経済産業省・金融庁、財務省が連携し、「再生支援の総合的対策」を策定。再生支援等を一層促すための施策を展開していきます。

1. 民間ゼロゼロ融資の返済開始の最後のピーク(本年4月)に万全を期すため、
①コロナ資金繰り支援を本年6月末まで延長するとともに、
②保証付融資の増大や再生支援等のニーズの高まりを踏まえて支援を強化。

2. 本年7月以降は、例えば、日本政策金融公庫等のコロナ特別貸付の金利引下げ幅を縮減するなど、コロナ前の支援水準に戻しつつ、経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援を基本とする方向。ただし、令和6年能登半島地震の被災地域については配慮が必要。

コロナ資金繰り支援

1.①コロナセーフティネット保証4号(100%保証、借換目的のみ)、②コロナ借換保証(100%保証の融資は100%保証で借換)を本年6月末まで延長。 2. 日本政策金融公庫等のコロナ特別貸付については、現行制度を本年6月末まで延長。7月以降は、災害貸付金利を適用(特例金利(▲0.5%)を廃止)し、特別貸付制度は継続(期限あり)。 3. 日本政策金融公庫等のコロナ資本性劣後ローンを本年6月末まで延長するとともに、総合経済対策(令和5年11月)に基づき利用を促進。

1 信用保証協会による支援の強化

1. 信用保証協会向けの総合的な監督指針の改正【24年6月】
①金融機関との連携の上、保証付融資の割合が高い先など支援先を特定し、協会が主体的に支援。
②経営改善支援の効果検証指標を設定(売上高営業利益率、EBITDA等)し、目標・実績を協会別に公表。
③中小企業活性化協議会への案件持込を促進し、持込実績を協会別に公表。
④過去に破産を経験している経営者に対しても、足下の事業計画等を踏まえて、公正な保証審査を行う。
⑤「経営者保証の提供を選択できる保証制度」について、保証申込時に事業者に対して説明。利用実績を協会別に公表。

2. 中小企業活性化協議会、事業承継・引継ぎ支援センターとの連携推進【24年4月】
保証申込時等の契約書において、事業者情報の守秘義務が解除される対象として、活性化協議会、事業承継・引継ぎ支援センターを明記。再生支援・スポンサー探しの事前相談の円滑化を図る。

3. 求償権放棄の円滑化(再チャレンジを含む条例制定の都道府県等への要請) 【24年3月】

2 中小企業活性化協議会による支援の強化

1. 低評価協議会の支援レベルの底上げ【24年4月】
低評価協議会(相談・支援件数が低位、支援の質が低い等の協議会)に対して、業務改善計画の策定(相談・支援件数増加に向けた対策、支援体制の整備等)を義務付け。

2. 「協議会補佐人制度」の創設【24年4月】
①協議会で再生支援を行う弁護士等の下で、地域の専門家が「補佐人」として支援に参画できる制度を創設。これにより、地方の再生支援人材を育成。
②当該補佐人経験を、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」の第三者支援専門家の実務要件にカウント。

3. 事業承継・引継ぎ支援センター、よろず支援拠点との連携推進【24年3月】
各機関における評価において、案件の受け渡し件数の見える化や評価比重を拡大する。

3 再生ファンド(中小機構出資)による支援の強化

1. 小規模事業者注力型再生ファンドの仕組みの創設【24年4月】
ファンドの存続期間を最長15年→20年に拡充、再生支援に充てられる期間を長期化(投資期間を10年程度にすることが可能)。等

2. 再生支援ノウハウを有する商工中金による難易度の高い先を支援する再生ファンドの組成。

4 民間金融機関による支援の強化

1. 一歩先を見据えた経営改善・再生支援の強化
① 監督指針の改正を行い、事業者の現状のみならず状況の変化の兆候を把握し、一歩先を見据えた対応を求める。【24年4月適用開始】
→ 日常的・継続的な関係強化を通じた事業者の予兆管理と認識共有(プッシュ型での情報提供)
→ メイン・非メインに関わらず金融機関自身の経営資源の状況を踏まえた対応促進
② 事業者の経営改善や事業再生を先送りしないため、「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」等の策定を促進。【24年度~】
③ 昨年実施した重点的なヒアリングの結果を踏まえ、各地域における事業者支援態勢の構築・発展に向けた取組みを一層促進。【24年度~】

2. 経営改善・事業再生支援人材の拡充
① 経営改善・事業再生支援に関心のある地方の専門家(弁護士、税理士、会計士等)を発掘、金融機関・地方の専門家・知見のある専門家の連携強化を目指すイベントを開催。【24年中】
② REVICによる事業再生に関する実践的な研修を、地域金融機関の役職員向けに引き続き開催。

3. 事業者のガバナンス向上支援(経営者保証を不要とするための課題解決促進)
金融機関が、経営者保証に依存しない融資慣行の確立のために積極的に行っている対応や、事業者のガバナンス改善を通じて経営者保証を解除できた事例等をとりまとめ、横展開を実施。【24年6月末】

5 政府系金融機関による支援の強化

1. 日本政策金融公庫等の「コロナ資本性劣後ローン(限度額15億円)」を本年6月末まで延長【再掲】

2. 日本政策金融公庫等による経営改善支援
コロナ特別貸付の返済時に経営が悪化している事業者に対しては、関係機関と連携して早期の経営改善支援を行う。

3.「早期経営改善計画策定支援」を活用した日本政策金融公庫等のコロナ資本性劣後ローンの活用促進 。【24年3月】
● 早期経営改善計画策定支援を通じて策定した事業計画を、コロナ資本性劣後ローンの申込時に必要な事業計画(民間金融機関による協調支援なしの場合)として活用できるようにすることで、小規模事業者の資本性劣後ローンの活用を促進する。
● 一定期間経過後、借手の申し出によるコロナ資本性劣後ローンの期限前返済が可能であることを明確化することにより、利便性を向上。

6 関係省庁の連携による支援の強化

1. 「事業再生情報ネットワーク」の創設【24年度~】
①事業者の経営改善・事業再生に向けた資金面での悩みごとについて、金融庁に設置する「事業者の経営改善・事業再生相談窓口(仮)」や中小企業活性化協議会を通じて把握する。その際、公租公課の分割納付の相談など、他省庁との連携が必要と判断されるものは、関係省庁等との間で情報共有する仕組みを構築し、対応する。
②公租公課の納付と事業再生との両立が図られた事例等をとりまとめ、横展開を実施。等

2. 関係省庁連名の要請文の発出【24年3月】
信用保証協会、官民金融機関、中小企業活性化協議会等の外部機関、弁護士、税理士、会計士等の専門家が連携した経営改善・事業再生支援を実施するよう、関係省庁の大臣より要請文を発出。