外国人労働者の受け入れ拡大に向けて
改正出入国管理法が成立

 外国人労働者の受け入れ拡大に向けた改正出入国管理法(入管法)が、昨年12月に参院本会議で可決、成立。今年4月1日に施行されます。深刻な人手不足を背景に、在留資格を新設し、外国人労働者の受け入れを拡大することが目的。5年間で最大約34万5千人の受入れを見込んでいます。
新たな在留資格のうち「特定技能1号」は、在留期間は最長5年で現場の即戦力として人手不足を解消するため創設。対象は「相当程度の知識または経験を要する技能」と一定の日本語能力を持つ外国人です。
 人手不足が深刻な業種に限られ“宿泊業を含む14業種”が対象分野として検討されています。「2号」はさらに合格のハードルが高く、更新制で長期滞在も可能。1号では認められていない配偶者と子どもの帯同も認められます。
 改正法成立を受けて政府は、制度の詳細や受入れ業種、受入れ人数などを基本方針や法務省令に具体的に定め、該当業種を所管する各省庁は個々の受入れ業種の分野別運用方針を策定していきます。(表1・表2参照)

 

表1 出入国管理及び難民認定法 及び 法務省設置法の一部を改正する法律の概要について

新たな外国人受け入れのための在留資格の創設

1.在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の創設
(1)特定技能1号:不足する人材の確保を図るべき産業上の分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
(2)特定技能2号:同分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格

2.受入れのプロセス等に関する規定の整備
(1)分野横断的な方針を明らかにするための「基本方針」(閣議決定)に関する規定
(2)受入れ分野ごとの方針を明らかにするための「分野別運用方針」に関する規定
(3)具体的な分野名等を法務省令で定めるための規定
(4)特定技能外国人が入国する際や受入れ機関等を変更する際に審査を経る旨の規定
(5)受入れの一時停止が必要となった場合の規定

3.外国人に対する支援に関する規定の整備
(1)受入れ機関に対し、支援計画を作成し、支援計画に基づいて、特定技能1号外国人に対する日常生活上、職業生活上又は社会生活上の支援を実施することを求める。
(2)支援計画は、所要の基準に適合することを求める。

4.受入れ機関に関する規定の整備
(1)特定技能外国人の報酬額が日本人と同等以上であることなどを確保するため、特定技能外国人と受入れ機関との間の雇用契約は、所要の基準に適合することを求める。
(2)@雇用契約の適正な履行や A支援計画の適正な実施が確保されるための所要の基準に適合することを求める。

5.登録支援機関に関する規定の整備
(1)受入れ機関は、特定技能1号外国人に対する支援を登録支援機関に委託すれば、4(2)Aの基準に適合するものとみなされる。
(2)委託を受けて特定技能1号外国人に対する支援を行う者は、出入国在留管理庁長官の登録を受けることができる。
(3)その他登録に関する諸規定

6.届出、指導・助言、報告等に関する規定の整備
(1)外国人、受入れ機関及び登録支援機関による出入国在留管理庁長官に対する届出規定
(2)出入国在留管理庁長官による受入れ機関及び登録支援機関に対する指導・助言規定、報告徴収規定等
(3)出入国在留管理庁長官による受入れ機関に対する改善命令規定

7.特定技能2号外国人の配偶者及び子に対し在留資格を付与することを可能とする規定の整備

8.その他関連する手続・罰則等の整備

(注)特定技能1号外国人:特定技能1号の在留資格を持つ外国人
   特定技能2号外国人:特定技能2号の在留資格を持つ外国人
   特定技能外国人:これらの外国人の総称

 

表2 新たな外国人材受入れに関する政省令の骨子案
(イメージ)

1.新たに設ける省令(2省令)

@契約、受入れ機関、支援計画等の基準に関する省令
○受入れ機関が外国人と結ぶ契約が満たすべき基準(法第2条の5第1項)
・報酬額は、日本人が従事する場合の額と同等以上であること
・一時帰国を希望した場合、休暇を取得させること
・外国人が帰国旅費を負担できなければ、受入れ機関が負担するとともに契約終了後の出国が円滑になされる措置を講ずることなど

○受入れ機関が満たすべき基準(法第2条の5第3項)
・労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
・特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
・行方不明者を発生させていないこと
・欠格事由(前科、暴力団関係、不正行為等)に該当しないこと
・労働者派遣をする場合には、派遣先が上記各基準を満たすこと
・保証金を徴収するなどの悪質な紹介業者等の介在がないこと
・報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
・中長期在留者の受入れを適正に行った実績があることや中長期在留者の生活相談等に従事した経験を有する職員が在籍していること等(※)
・外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を確保していること(※)
・支援責任者等が欠格事由に該当しないこと(※)など
 (注)上記のうち※を付した基準は、登録支援機関に支援を委託する場合には不要

○支援計画が満たすべき基準等(法第2条の5第6項等)
 ※基本方針記載の支援の内容を規定

A分野、技能水準に関する省令
○受入れ対象分野、技能水準(法別表第1の2の表の特定技能の項)
 ※分野別運用方針を反映させた形で規定(2号は建設、造船・舶用工業のみ)

2.既存の省令の改正(2省令)

@上陸基準省令
○外国人本人に関する基準(法第7条第1項第2号)
・1号特定技能外国人:業務に必要な技能水準及び日本語能力水準
 (注)技能実習2号を修了した外国人については試験を免除
・2号特定技能外国人:業務に必要な技能水準
・紹介業者等から保証金の徴収等をされていないこと
・特定技能外国人が18歳以上であることなど

A出入国管理及び難民認定法施行規則
○受入れ機関の届出事項・手続等(法第19条の18第1項等)
・報酬の支払状況や離職者数等

○登録支援機関の登録に関する規定等(法第19条の26第1項等)
・中長期在留者の受入れを適正に行った実績があることや中長期在留者の生活相談等に従事した経験を有する職員が在籍していること等
・外国人が十分理解できる言語で支援を実施することができる体制を確保していることなど

○その他
・1号特定技能外国人の在留期間は通算で5年
・1回当たりの在留期間(更新可能)は、
  1号特定技能外国人 1年、6か月又は4か月
  2号特定技能外国人 3年、1年又は6か月など

(注)新たな外国人材受入れに関する政令としては、登録支援機関の登録手数料額、登録支援機関の登録拒否事由に関する規定の整備


【特定技能1号の対象となる業種】

●介護業 
●ビルクリーニング業
●素形材産業
●産業機械製造業
●電気・電子情報関連産業
●建設業  
●造船・舶用工業
●自動車整備業
●航空業
●宿泊業 
●農業
●漁業
●飲食料品製造業
●外食業