「受動喫煙防止対策の強化」に対する
意見・要望を提出
平成29年9月21日付けで、(一社)全国生活衛生同業組合中央会(大森利夫理事長)は厚生労働省に対し、「受動喫煙防止対策の強化」に対する意見・要望書を提出しました。内容につきましては、左記の通りです(原本を一部省略)。
■はじめに
受動喫煙防止対策につきましては、私ども業界の切実な声が反映されることなく検討が進められていると思われる報道等に接し、約700万人に及ぶ全国の生活衛生関係営業(以下「生衛業」という)の従事者の中には、「近い将来の制度改正によって、お店を廃業せざるを得なくなるのではないか」と不安を感じたり、また、業界内には制度改正案の詳細が知らされないことに不満や混乱が生じたりしていることを、加藤大臣、厚生労働省には重く受け止めていただきたいと、冒頭にお伝えいたします。
私ども全国生活衛生同業組合中央会(以下、中央会)としても、行政等とも連携して受動喫煙防止対策を促進していく必要があることを認識しています。
しかしながら、様々な業態(多様な店舗・施設設備、客層等)かつ小規模事業者が多い生衛業としては、厚生労働省案に示された「建物内全面禁煙」や「喫煙専用室の設置」、さらには罰則を設けるなど、業界の実情を無視した厳格な基準を一律に適用する受動喫煙防止対策をそのまま受け入れることは難しいと考えています。また、一部で報道等された新しい対策案によれば、喫煙を可能とする店舗には未成年者を入店、就業させないとされていますが、従業員不足によって生産性の停滞が課題とされている業種にとっては、店舗を全面禁煙とすることと同様に経営への影響が大きいとする意見も多くあります。⒈「厚生労働省案」に対する中央会及び加盟生衛組合連合会の意見・要望
一律「全面禁煙」、「喫煙専用室の整備」を求める規制には断固反対
厚生労働省案を実施した場合、生衛業の多くの店舗・施設は、物理的な制約(面積・構造等)や費用負担の面から「喫煙専用室」の整備が困難であり、結果的に全面禁煙とせざるを得ず、顧客の減少や客層の変化による収益減少に苦慮することが心配されています。多額の費用負担に伴う経営への影響のみならず、風俗営業法の新たな手続き等が必要となる業種もあり、そのために休業せざるを得ないなど、事業者に多大な負担が強いられます。
わが国は諸外国と異なって駅前や繁華街の「路上喫煙規制」が進んでおり、加えて飲食店等のサービス業が狭隘な雑居ビル等で営業している状況も多いため、これらの地域では、厚生労働省案が実施された場合には、屋外のみならず店舗・施設内の喫煙も認められないことによる客離れ等が生じ、売上への悪影響が心配されています。仮に、路上に公共の喫煙所が設置されても、ビルの上層階から一階に降りて、さらに路上の喫煙所まで行くことになるため客離れを助長することが心配されるほか、喫煙所に行ったまま客が戻らない無銭飲食などが発生することも懸念されます。
中央会としては、諸外国とは異なるわが国の喫煙環境の実情、生衛業の様々な業態や店舗・施設設備の特殊性のほか、お客様のニーズとそれに対応するサービス業としての経営姿勢を踏まえた対策を講じていかなければ、特に中小零細の事業者が多い生衛業界においては、事業の衰退や廃業を余儀なくされる事態が生じるものと懸念しています。
私どもは、「望まない受動喫煙」を防止しつつ、喫煙者の自由や満足、営業の自由にも配慮できる日本型の「分煙対策」を的確に促進し、世界にもアピールしていくべきであると考えます。
中小の個人営業者にも取組みが可能な「分煙対策」を容認していただくとともに、既存の助成金の対象となっていない個人営業者等の救済策を図るなど、整備促進に一層の支援をいただけますようお願いします。⒉「報道による新たな案」等に対する中央会及び加盟生衛組合連合会の意見・要望
報道によると、厚生労働省は「健康増進法」改正案には制度改正・規制の細部を示さず、それらは政令や省令等に委ねる可能性があるとされていることを受けて、主な規制の内容や程度等について、私どもの意見・要望を示すものです。「新たな案」とは、自由民主党と厚生労働省の間で規制内容についてのやり取りがあったとして報道等に示された内容です。⑴喫煙を許容する場合の店舗・施設面積等
厚生労働省案においては、「小規模のバー、スナック等(主に酒類を提供するものに限る)
は、喫煙禁止場所としない」とし、面積は30㎡としていますが、その後の新たな案として、飲食店については延床面積150㎡(客席100㎡、厨房50㎡)以下に限っては「喫煙」「分煙」を選択可能とする考え方については、私どものこれまでの主張を踏まえてご検討いただいたものと考えています。
しかし、客席100㎡を超える居酒屋、喫茶店、料亭等においても客席での喫煙を望むお客様が多いことも実情であることから、そのような業態においては、一定の空気環境基準を満たす措置によりエリア分煙を容認すること、また、貸切りの個室はホテルの客室と同様に規制の対象から除外することなど、業態の特性に応じた措置を選択できる制度としていただくようお願いします。⑵「喫煙」「分煙」を選択した店舗・施設への「未成年者の入店禁止」措置
店舗・施設内の喫煙を許容した場合、未成年者の客としての入店を禁止する規制については、例えば、夜間は会社員等の顧客を中心に酒類、食事を提供し、昼間は家族連れや学生等への食事を提供する店舗・施設も多くある中で、当該店舗・施設への未成年者の来店を禁止した場合、昼間の収益減少は避けられません。このような営業を行う際には、昼間は禁煙、夜間は喫煙(分煙)を可能とする等、事業者に対しては店内の喫煙環境についての掲示を求める規制に留め、未成年者の入店については、事業者による受動喫煙防止に関する周知の努力義務としていただきたい。なお、入店時に年齢確認を行なう場合には、生産性の低下を招くことになります。⑶「喫煙」「分煙」を選択した店舗・施設への「未成年者の就業禁止」措置
喫煙を許容した店舗・施設における未成年者の就業を禁止した場合、深刻な人手不足に悩んでいるサービス業、特に飲食業、宿泊業等の生産性向上において強い逆風となると言わざるを得ません。未成年が一人前の調理人になるために弟子入りや調理師免許を取得するための実務経験として就業する者を拒んだり解雇したりすることになるのではないでしょうか。また、世界に誇る日本料理の文化が損なわれるのではないかと心配しており、許容できるものではありません。未成年者も事業者が受動喫煙防止に配慮することによって就業の権利を侵害することのないようにすべきだと考えます。
一方、事業者に対しては、労働安全衛生法に基づく職場の実情に応じた効果的な受動喫煙防止対策の実行を努力義務として求め、行政はその支援を継続するとともに、就業希望者には、事業者が雇用面接等の際に職場となる店舗・施設の喫煙環境を説明するよう求める制度としていただくようお願いいたします。⑷受動喫煙による健康被害に関する警告表示
事業者に対して、店頭やインターネット、求人広告において受動喫煙による健康被害の警告表示等を求める場合には、個々の店舗・施設がそれぞれの実情を踏まえて異なる受動喫煙防止対策を講じていることから、健康への影響が生じるか否かも異なると考えられるため、警告を表示する必要性の有無や、その判断基準、表示内容について十分な科学的知見に基づいてご説明いただき、事業者、国民にも容易に理解・周知できるようご配慮願います。⑸店舗・施設への入店前に喫煙環境を周知
既に、ステッカー等を用いてお客様が店舗・施設へ入店する前に喫煙環境等の情報をお知らせする取組みを進めていますが、このような対策は業界任せにせず、政府において、わが国のあらゆる場所で活用できるピクトグラム (図記号)及び複数の外国語による案内表示を統一し、諸外国から訪れる皆様が喫煙・禁煙環境を一見して理解できるよう、その普及、実施促進を図るため、費用を含むさらなる支援をお願いいたします。⑹屋外の喫煙環境の整備
喫煙を望むお客様や従業員が多い店舗・施設において、喫煙専用室の設置が実情に沿わない場合、屋内と屋外での分煙を選択することがありますが、その場合には路上に面した敷地内の屋外や他施設の喫煙所等において喫煙することが多くなり、営業や業務への支障が生じるうえ、路上喫煙規制に抵触するリスクも高くなることが懸念されます。このため、屋内の受動喫煙対策を促進するうえで、屋外の喫煙環境も早急に整備するようお願いいいたします。■おわりに
受動喫煙の防止に関しては、本年3月に公表された厚生労働省原案について、その内容の詳細は未だ明確には知らされていません。そうした詳細な説明がない状況で報道機関等が具体的な基準について報道することで、これ以上全国の生衛組合員を不安にしておくことは看過できません。
大きな影響を被る事業者が非常に多いことを十分ご認識のうえ、幅広い公平な情報を提供・公表して慎重な議論を行なうようお願いするとともに、法案のみならず、政令等により事業者に負わせる責務、措置内容について、厚生労働省の閉ざされた場で議論せず、他の政策と同様に影響を被る事業者等も参画できる検討の場を設けてご審議いただくよう強く要望いたします。
また、生衛業、とりわけ飲食店が行う受動喫煙防止対策の措置に関する基準等を政令、省令等で定める際には、既に対策を講じている神奈川県・兵庫県の条例等も参考にしていただくとともに、適用除外とされている風俗営業法適用施設や顧客が入らない厨房、事務室等のスタッフエリアの扱いを明確にしていただくと、労働基準局安全衛生部長通知(平成27年5月15日基安発0515第1号)別添で示された「受動喫煙防止措置を講じる際の効果的な手法等」による室内の空気環境基準等が改正される可能性について、さらには、昨今、利用者が急増している「加熱式たばこ」の取り扱いに関して多くの事業者に生じている期待と困惑、規制対象か否か等への方向性を示していただくことなど、まだまだ議論されるべき問題は多く残っていると考えます。情報提供等についてご配慮いただくようお願いいたします。全国生活衛生同業組合中央会の構成団体(生活衛生同業組合連合会16業種)
・全国理容生活衛生同業組合連合会
・全日本美容業生活衛生同業組合連合会
・全国興業生活衛生同業組合連合会
・全国クリーニング生活衛生同業組合連合会
・全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会
・全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会
・全国麺類生活衛生同業組合連合会
・全国氷雪販売業生活衛生同業組合連合会
・全国食肉生活衛生同業組合連合会
・全国飲食業生活衛生同業組合連合会
・全国すし商生活衛生同業組合連合会
・全国食鳥肉販売生活衛生同業組合連合会
・全国喫茶飲食生活衛生同業組合連合会
・全国中華料理生活衛生同業組合連合会
・全国社交飲食業生活衛生同業組合連合会
・全国料理業生活衛生同業組合連合会