四国ブロック講演会 平成13年11月1日 愛媛県松山市
流通維新時代の飲食業 ~勝ち組となるための方法~
(株)日本コンサルティングセンター 古賀 実氏他業種から飲食業への進出
今日はここに来る前に、東京駅の中の回転ずし店に寄って来ました。今、すし組合は回転ずしに席巻されます。すし組合の会長が研究をしたいということで一緒に行って来ました。玉子が一皿、150円です。うなぎが三百円です。同じく東京駅の丸の内口にレストランが開店しました。ここは有名なシェフの店です。立地という点では良いところです。JRが優秀なシェフを呼んでレストランを経営する時代なんです。立地条件は絶対的に強いわけです。
景気は2年から3年は回復しません。ですから、商社は飲食業に進出し始めているのです。
飲食業界は本当に潰れています。居酒屋チェーンの「北の一丁」が不渡りを出して、7月9日に民事再生法を適用しました。負債36億です。原価率4割でした。1995年には直営4店、FC15店、1996年には売上29億で経常利益が800万しかなかったそうです。
従業員が満足して、顧客が満足する
「魚民」「白木屋」のモンテローザグループ、残業代の未払いで告訴されています。従業員に金を払えないから払わない。それでお客が喜ぶか。従業員が満足しなければ、接客がいいはずがないじゃないですか。従業員が満足して働くからお客さんはあなたの店に付くのです。
チェーン展開は人が育たないのにやらないで下さい。我々の個店は、よくやったって5店舗とか6店舗。その場合人が育ってから出して下さい。これだけ不景気だと客数が減る。その分売上が下がる。そのとき資金繰りがショートしたら終わりです。個店で努力している店のほうが、客を囲い込んでいるから、強いです。
デリバリー屋ですが、たくさん注文が来ると間に合わない。間に合わないと信用ゼロ。そして経費がかかる。大会社でなければやめなさい。「12時半には届けます。」と言って来たのは1時20分。これでは…。
効率的で儲かるメニュー構成を考える
吉野屋は牛丼280円、神戸らんぷ亭や松屋は味噌汁が付いて300円です。吉野屋は味噌汁50円です。味噌汁つけると330円だから、吉野家の方が高い。しかし実はこれが儲けを出しているんです。
現在の社長は最初の店長です。現場を知っているのです。並だけ食べる客は少ないんです。味噌汁に玉子を頼みます。玉子は43円儲かります。トッピングシステムです。
メニュー構成を考えるときに、どういうシステムなら儲かるのかをはっきりしないとダメです。目玉を持ち、できるだけトッピングをやった方がいいです。客に選択肢を与えるんです。
吉野家は牛丼以外で儲かっているのです。けんちん汁がすごく人気メニューです。
メニューが多いとオーダーが遅れます。ピークタイムに座って見ているようではだめです。だから昼間は違うメニューにしてください。夜はディナーなんです。ランチとディナーは違うんです。
メニュー構成というものが大事だといつも言いますが、皆さん方は売上が下がっても一つもメニュー構成を変えていない。横須賀では回転ずしや近くのレストランが殆ど潰れて、サイゼリアだけが生き残っています。
土曜日の昼過ぎでしたが、お客さんが並んでいる。ほとんど500円以上のメニューがありません。サイゼリアは、イタリアンレストランですね。来ている客は中学生、小学生、高校生、そして昼間はOLです。ミラノ風ドリアが一番人気。「より多くの方に食べていただく価格を提案いたしました。さっぱりした特製ホワイトソース、ミートソースをかけて焼いたこだわりの一品です」これが290円。
こういう風な店はコンセプトを決め、目玉を決めているから、他の店がやられてきているんです。そして、マクドナルドはインターネットで安く仕入れていますから、我々はそれと同じ事をしたら潰れますよ。
女性と老人をターゲットに考える
今後はそういう意味でどうしたらいいかということを考えていかないといけません。狙いはどこですか? 女性と老人です。飛鳥という豪華客船のツアーが販売されましたが、3日で売り切れだそうです。最低350万円。二人で700万円。高い人は1,800万。二人で3,600万。購入者の平均年齢が69歳だそうです。ここをターゲットにしましょう。
もう一つは従業員に、老人を採用しているところがあります。三田線の志村坂上にある「心の居酒屋」です。本当にびっくりします。従業員の募集条件は55歳から80歳。おばあちゃん達自慢の料理の特徴が書いてある。陣頭指揮を取る社長も70歳です。育児を終えた専業主婦、高級日本料理店の板前、一部上場メーカーの経理出身の大学教授など、さまざまなキャリアを持つ従業員だけにお客との対応も臨機応変です。一番の人気を誇るのは、「本日のおばちゃんの煮物」。
福岡にあるアップルパイの店。アップルパイとカレーライスの店です。福岡市内から高速で30分です。クロワッサンという雑誌に載っています。毎日10万円売れるそうです。
もう一つ紹介しておきます。福岡県久留米市に本社を置く「梅の花」という和食チェーンがあります。「梅の花」の顧客満足度の秘密は板前サービス部門の分離です。湯葉と豆腐を用いた懐石料理を売りにしていて、客単価は約4,000円。個室に通されて着物を着た仲居さんが接客してくれる。目に見える部分にはカネがかけられており、高級料亭の雰囲気を醸し出しているから、「4,000円なら安い」となるのです。厨房はいたってシンプルで、久留米市にあるセントラルキッチンからクール宅急便で届けられた半調理品を温めるだけなんです。厨房スタッフはアルバイト。板前がいるのはセントラルキッチンだけです。そうすると、店舗に求められるのは接客だけで、よけいな雑務がないから、仲居はひたすらお客に尽くすことになる。これが4,000円にしては満足度が高いサービスと映るわけです。IT化ということです。
また回転天ぷら店の例もあります。これは失敗例です。潰れてしまいました。廻ってきたネタを女の子に頼むと、センターに厨房があって職人が揚げます。でも温かくないんです。天つゆも温めていないし…。
重要なのは告知力です。あなたの店をどうやってお客さんに知らせるか。もう一つは価格。そして味です。
不況だからこそ、連鎖的な安売りしはない。
現状を分析すると、まずフードビジネスにも消費不況は直撃しました。花形だったファミリーレストラン業界も減収が相次いでいます。ファーストフード業界も伸び悩んでいます。一方で「中食」と呼ばれる弁当や惣菜店、そしてエスプレッソコーヒーチェーン、大型の低価格居酒屋チェーンは成長しました。不況が産業を鍛え、新しいビジネスを生み出すことになりました。
マクドナルドはハンバーガーの価格を半分の65円まで下げ、サラリーマンなど中高年にも消費層を拡大しました。一方で、ユニクロなどのアパレルも「ユニクロ現象」と称して中国で生産したフリースを売りまくったのです。全体の消費は完全にデフレ現象になり、安い価格を求める時代です。ハンバーガーやアパレルだけでなく、牛丼、フライドチキン、ドーナツなどのあらゆる業態が「値下げ」連鎖の連鎖を生んだのです。だからといって、あなた方は下げてはいけないんです。セブンイレブンを始め、コンビニは300円以下の弁当を出して対抗しています。値引き競争は体力だけが頼りの消耗戦となるんです。
商社も参入してきました。丸紅「天丼」、伊藤忠「吉野家の牛丼」、三菱商事「マグロ丼」。どんぶり競争が始まりました。外食産業への事業強化を打ち出し、サラリーマンの「胃袋をターゲット」に動き始めています。総合商社のどんぶりフランチャイズへの経営参画はまず、丸紅が天丼「てんや」を展開する「テン・コーポレーション」で先行。さらに昨年、伊藤忠商事がセゾングループからの牛丼の「吉野家ディー・アンド・シー」の株式を購入しました。今回、三菱商事がマグロ丼を中心とした海鮮丼フランチャイズ事業者である、「まぐろ市場」に資本参加しました。
ファミレスは、すかいらーくに学べ
ファミリーレストラン「カーサ」の西洋フードシステムズはいずれ潰れます。多店舗化の失敗です。居酒屋、糸ぐるま、フーチン、うまかつ家、食品小売り、高級食品販売全部西武です。資金繰りが苦しい。
この業界でトップは、「すかいらーく」です。バーミヤンという中華、そしてもう一つは夢庵です。すかいらーく系がこういうチェーン店では現在日本で一番です。すかいらーく系は、ご研究なさる余地があると思います。
1970年、長野から出てきて、東京で乾物屋を6店舗やっておりました。年商3億でした。飲食店が面白いというので、やり始めたわけです。その頃、チェーン店ではイトーヨーカドー、ダイエー、そして平塚では長崎屋。これは最近潰れたばかりです。ふとん屋が大きくなって始めたのが長崎屋。イトーヨーカドーは衣料品。
すかいらーくの考え方は、小さい事をやっても仕方が無いから、10店だったらあと10倍の100。100から1,000。めずらしくうまくいった事例と言えるのではないでしょうか。そして「ガスト」。低価格店ガストにほとんどのすかいらーくを変えてしまうんです。サラダバー、ドリンクバーを始めたのもすかいらーくです。「ガスト」が870店、「夢庵」190店、「バーミヤン」中華料理は410店舗です。現在1,800店舗。そして和食でも無農薬というのをメニューでもクローズアップしながら出してきたのがこのすかいらーくという会社です。
上手な告知と戦略を練る
私が指導している店「甚八」では八がつく日は5割引になります。ポイントカードで割り引きます。レジでポイントがつくシステムです。今日は8,000円もらいますが、この次来た時にはその5割分引きます。従って客はそれにあわせて来るわけです。それ以外にも、4時まで雨が降っていたらビール2杯無料などのサービスをやっています。このお店は「勝ち組」に属しています。告知と戦略がうまい。季節別、曜日別、それから性別、レディースデーです。年齢別もあって、70歳以上は安い。客は知っています。
気持ちを込めたコミュニケーションが大切
北海道に青木商事というところがあります。キャバレーをやっています。ここに堤さんという女性がいます。この方は足が悪いのですが、キャバレーであればあまり動かなくていいだろうと思い青木商事に勤めたそうです。「私はおそらく日本で一番多くの給料をもらっているクラブホステスです。私がここまできた大きな原因の一つは、母の愛です。感謝と感激でございます。感動でございます。感謝や感激や感動の無い人生は、捨てても同じだと思います。」「私が稼いだ2番目の原因は、私がブスだからです。こんな顔で稼げるのは何故でしょうか。心で稼げばいいんです。」彼女はパソコンを使って全部顧客名簿をずっとつけているそうです。現在はお取引があるのが8,000人。だから年賀状も8,000枚。これだけで40万円かかります。「最大の営業ポイントはお客への気持ちです。一方的なコミュニケーションほど馬鹿な事は無いと思います。」と私に教えてくれました。人の情は変わりません。たった一人の女性がそういう風に必死にやって、命をかけて成功しているじゃないですか。どうか皆さん方もロマンを持ってこれから先も頑張って下さい。
講師プロフィール
福岡県博多生まれ。早稲田大学卒業後、企業実務経験を経て、1960年にコンサルタント業務に投じる。1966年に(株)日本コンサルティングセンターを設立し、いわゆる民間コンサルタントを産業界に定着させた功労者。飲食業界、流通業界、石油業界などを中心に、広範囲に及んでいる。