味つづり〈92〉 倉橋 柏山
冬 至 南 瓜12月21日は「冬至」。一陽来復ともいって、冬が終わり、春が始まる日とされる。日は少しずつ長くなるものの、冬本番到来で、寒さもことのほかきびしくなる頃である。
古くから「冬至南瓜」とか「冬至唐茄子」といって、この日に南瓜を食べて柚子湯に入ると邪気を払い、無病息災、中風よけになるという俗信が、一時代、いや二時代以前までは行われていた。
この日に、小豆粥を食べるのは、中国の風習が伝わったもので、中国では天子が天を祀り、災厄を避けて疫鬼を除くために赤色の小豆粥を食べたことに由来する。
我が家では、この風習、細々と五十年近く続いているが、子や孫が引き継ぐとは夢ゆめ考えられない。
私は日本の良き伝統文化であると思って続けている。
南瓜の食べ方も各家によって異なるが、小豆が入った「おこと煮」は、「従兄弟煮(いとこに)」が転化したものと、もの本にあるが、やや意味不明の感がある。
熊本に「おてもやん」という、陽気な節回しの民謡がある。♪川端まっつぁん、きァめぐろ、春日南瓜どんたちァ、尻ひっぱって花ざかり花ざかり。春日南瓜はポルトガル語から転化した九州地方のカボチャのことである。
関西ではナンキン。今は使わないようだが、唐茄子とも言った。
カボチャの由来は、ポルトガル人によって、東南アジアのカンボジアから伝えられ、カンボジアが訛ってカボチャ(南瓜)になったと、もの本に記される。
南瓜は緑黄色野菜の筆頭格で、カロチン、ビタミンA、B1、B2、カルシウム、鉄分と栄養的にもすぐれた野菜で、冷え症、体力回復、風邪、貧血、精力減退、前立腺肥大などと多くの薬効もあるそうだ。
南瓜の従兄弟煮という料理がある。南瓜は1/2個を食べやすく切る。小豆130〜150gは洗って4〜5時間水に浸す。小豆に水を注いで火にかけ、沸騰したら火を弱めて7〜8分煮ると黒ずんでくるので、ざるに上げ、洗って水を注いで火にかける。お湯が濁ってくるのでもう一度洗い、皮がやぶれないように静かに茹で上げる。従兄弟煮の場合、小豆が煮くずれたほうが旨いが、赤飯など晴れの日や、おめでたには小豆の皮はやぶらないように茹で上げることである。
鍋に南瓜を入れ、だし汁が理想であるが、水を加えて5〜6分火を通し、砂糖70〜80gを三回位に分けて加え、塩少々と共に小豆と一緒にほっくりと煮上げ、最後に淡口醤油を大さじ1杯ほど加えて味の仕上げをする。
従兄弟煮とは、小豆、大根、ごぼう、芋、豆腐など、固い物から先に、甥(追い)追い加えて煮含める意である。
若い人向きの南瓜料理を紹介しよう。南瓜はへたの部分を切り、中の種とわたをスプーンでくり抜く。
鶏肉、海老は小さく切り、酒と淡口醤油を振りかけてもみ込んでおく。しめじは小房に分ける。
溶き卵はクリームチーズ、生クリームを各適宜に合わせ、淡口醤油と塩少々で味をつける。鶏肉、海老、しめじ、ぎんなん、茹で小豆を卵地と合わせて、南瓜に詰めて蒸す。南瓜はあらかじめ七分通り下煮をしておくとよい。
大皿にサラダを散らし、切り分けた南瓜を盛りつけてバターソースをかける。これなら若い人も食べる。
冬至に小豆粥を食べる風習も今や忘れられているのではないだろうか。若い人は粥と聞くと食べたがらないので、小豆の入ったリゾットなら食べるだろう。
日本の良き伝統文化を絶やしてはいけない。食べ方も時代と共に変わるのはやむをえぬことだろうが、食べ方も工夫次第では若い人も食べてくれるのではないかと思う。日本のしきたりや風習は若い人にも引き継いでほしいものである。