繁盛店
進化する居酒屋
既存の店にはない価値を盛り込む工夫
●鮮度とストーリー性
焼きたてのシズル感とダイナミックな提供法が魅力の炉端焼き。昔ながらの居酒屋の定番スタイルですが、そこに商品の「ストーリー性」を打ち出し人気を集めている居酒屋があります。同店の売り物は宮城で水揚げされた鮮魚の数々で、店頭や店内に漁師の写真や大漁旗などを掲げるほか、取引のある漁師を紹介したメニューブックを卓上に置くなど生産者を前面に打ち出す演出です。魚介は宮城にある3ヵ所の漁港をメインに当日朝に獲れたものを使用。メニュー表には魚介ごとに水揚げ場所を明記し、なかでもカキは提供時期と収穫エリアを限定して“特別感”を高めています。店舗規模は40坪75席。客単価4,200円で、オープン以来半年で大繁盛店となっているそうです。●「そば」と京料理を味わう豊富な品揃え
つまみと酒を楽しみ、最後は「そば」で締める「そば居酒屋」は、江戸期に誕生したそば店が源流。大阪・堂島のそば居酒屋で、まず目をひくのは50品を揃える豊富な一品料理。「蓮根まんじゅう」など、店主が京都の料亭で学んだ技術を生かした京料理も並びます。 そばは長野をはじめ産地を厳選し石臼挽きにしたそば粉を店内で打ち、粗挽き細打ちの二八、細挽き太打ちの二八、十割そばの3種を用意し、メニューや注文に応じて使い分けるこだわりぶりです。
焼酎や日本酒など定番の他に、フルボトルで3,000円〜1万3,000円のワインやシャ ンパンも揃え、これらがアルコール売上げのうち2割を占めるといいます。店舗は土壁と苔庭を配した一軒家で、都心にあって非日常的な雰囲気を味わえます。●安い・はやい・美味いを高レベルで実現
東京・中目黒にある立飲み居酒屋は、12坪で34名収容の小規模店ですが、オープン直後から圧倒的な集客力を見せ、1日なんと6回転という繁盛ぶり。メニューを見るとその人気ぶりも納得。約50品を揃える酒肴はすべて1人前の盛りつけで、約9割のメニューが100〜200円という価格設定。立飲みの主客層である一人客および“チョイ飲み” のニーズに的確に対応しつつ、お値打ちをダイレクトに伝える値づけを徹底しています。50品のうち15品を日替りとしていることもお客の来店頻度を高める要因。また、約半数のメニューは仕込みで盛りつけまでを完了させておきスピーディな提供を徹底するなど、立飲み居酒屋に求められる要素を高いレベルで実現しています。人気メニューは、定番では「ポテサラ」130円、季節ものでは「新サンマ刺し」200円など。ドリンクはビールが主力で、アルコールの売上げ比率は70%で推移しています。
マーケットに浸透している定番スタイルは、商売として“手堅い”ものである一方で競争は厳しく、勝ち抜くには競合他店にない差別化できる要素が必要です。定番としての保守的なニーズを押さえつつ、既存の店にはない価値を盛り込む工夫が欠かせないようです。
(記事は「サッポロビール鰍フ繁盛店の扉web」より)