平成24年度関東・甲信越ブロック役員等講習会(10月2日実施)の内容を要約

この不況を乗り切るヒント!!
ライバルより一歩先ゆく努力…
サービスの基本姿勢に立ち返る

講師/山形屋グループ会長 佐藤 フジエ氏
 

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●商売のはじまり
 問屋の仕事をはじめたきっかけは、日本橋にある「山形屋」という布屋でした。13年間「山形屋」に奉公し、「山形屋」にのれん分けをさせていただき一本立ちすることができました。
 中野の横丁にある大きな店の主人から「佐藤君、独立したいのなら、俺の所からスタートしろよ」という温かい言葉をいただき、商売を始めることになりました。まだ名前もない問屋だったので、リヤカーにぎっしり荷物をつめて、一生懸命に運びました。途中、坂道や荒れた道路に苦戦することもありましたが、主人がリヤカーを引き、私が後ろを押しながら商売に励む、そんな生活が1年半続きました。主人も私も無我夢中で働く日々でした。

●商店街の立派な問屋
 早稲田から九段坂へ降りていくと大きな商店街があり、私は、自転車で通りながら何とかしてお得意さんを獲得できないだろうか、と毎日考えを巡らせていました。
 その中で、ひと際大きく、立派な問屋に私は魅了されました。いつ見ても綺麗に整頓され、埃ひとつない店頭に、私は深く感心しながら店の前を行き来したものです。そんなある日、その問屋の前を通った時に、店頭を掃除していたおばあさんに「お前さんはよくここへ来るけれど、どちら様かね」と尋ねられました。私は、「おばあさんのお店と同じような商品を扱っている者ですが、こんなに素晴らしいお店は見たことがありません。毎日拝むようにして勉強させてもらっています」と答えました。昔ながらの問屋だったので、既に取引先も決まっているのはわかっていましたが、「何かご入用の際にはお申し付けください」と告げました。
 それから1年半が経過し、その問屋の前を通ったある日、おばあさんから「佐藤さん、コンビーフあるかね」と尋ねられました。普段の取り扱いはありませんでしたが、思わず私は「あります。2〜3日中にお持ちします」と答えてしましました。それから私は急いで戻り、なんとかコンビーフを5ケース仕入れて届けました。これをきっかけに憧れの問屋と取引を開始することができました。取引をはじめて1年が経つ頃には、全て私達が扱う商品に入れ替えていただきました。隅々まで気配りができている優良店ですから売上も支払いも良く、今でもお得意様としてお付き合いさせていただいています。

●ライバル根性が会社を育てる
 他社と同じことをしていてもライバル会社には勝てません。そこで、他社の就業時間が午前9時から午後6時までのところ、私達は午前7時半から午後4時半までに就業時間を設定しました。当時は、高速道路が非常に混んでいたので、出勤時間を1時間半早くすることで移動時間の削減に成功しました。すると、効率が上がり、ライバル会社より1時間多く働ける計算になります。私は「よそ様より毎日1時間多く働いているのだから、何としてでも売上を上げていかなくてはいけない」という思いで365日働きました。
 創業して58年になりますが、今でも出勤時間は7時半です。皆と同じ24時間を、どのように上手に使ったら人より伸びて行けるのかと、日々考えながら一生懸命に仕事に打ち込んだ結果、今があるのだと思います。

●“生きたお金”と“死んだお金”
 現在、事業所などが57カ所ありますが、借金は一銭もありません。不況と言われている世の中ですが、赤字を出している店は一カ所もありません。また、これまでに手形を発行したことだって一度もありません。私が、長年の経験から学んだのは、「“生きたお金”はツレを連れて返ってくる。“死んだお金”は何も返ってこない。」ということです。
 例えば、古い友人に100万円貸してほしいと言われた時、「今は10万円しか手持ちがないので、これを持っていってください。そして、少しでもお役に立つのであればこの10万円は返さなくても結構です。ただし、“死んだお金”にならないよう、“生きたお金”として使ってください」とお金を差し上げました。受け取った友人は、涙を浮かべて感謝し、その後も末永いお付き合いが続いています。“生きたお金”は、先へ繋がることで大きくなり、お金や、物、お得意さんなど、形を変えて必ず戻ってきます。経営の中でも生きたお金≠フ使い方を見いだせることがポイントだと思います。
 最後に、当グループで推奨している『サービス信条の原点』に記載してある、サービス業としての基本姿勢をご紹介します(下記参照)。皆様の日々の営業の中で少しでも活かすことができれば何よりです。
 

サービス信条の原点

●基本姿勢
1.腕組みをしない:相手を見下ろしているように誤解される
2.ものに寄りかからない:だらしない姿勢の代表的な姿勢
3.首から上に手を上げない:耳や鼻をかく、頭髪に手をかける いずれもタブー
4.大声を出さない、小さ過ぎる声でお客様に話さない:手頃な声の大きさを普段から自覚する
5.あくびは絶対しない:生活が乱れていると、あくびがでやすい
6.指差しは絶対しない:サービス業に従事する者として最低である
7.ハンドポケットしない:サービス業に従事する者として最低である
8.特定のお客様を見つめない:電車の中などでこんな最低人間がいる
9.お客様の失敗を笑わない:絶対のタブーである

《山形屋グループ会長 佐藤 フジエ氏 プロフィール》
 千葉県夷隈郡東村生まれ。大妻女子専門学校卒業後、昭和24年に山形屋・佐藤長八さんと結婚。昭和30年、菓子及び商業用飲料卸売業を自転車一台で開業。昭和41年、卸売会社を設立。その後、ホテル・レジャー産業にも進出し、急成長を遂げる。山形屋グループとして観光ホテルスプリングス幕張をはじめ、数々の事業を成功させ、現在、グループの年商は6,500億円を超える。同氏は山形屋工業株式会社取締役会長や市川商工会議所婦人会会長など数々の役職を兼任。