全飲連創立50周年記念東京都大会を控える市野直春理事長に聞く


理事長訪問 第14回 東京

東京都飲食業生活衛生同業組合
   市野 直春 理事長に聞く

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TOKYOならではの
スケールの大きな躍動感を感じてほしい

―ご出身は愛知県だそうですが、東京に出られた経緯は?
市野理事長■義父が渋谷で八代続く「遠州屋」という酒類や雑貨の卸売業を営んでいました。そこに番頭として働いていた人が私の実家の近くの出身で、父親の友人だったことから、働き口として紹介してもらいました。昭和31年に22歳で上京し、翌年23歳のときに遠州屋の娘である妻と結婚。分家として燃料店を始めました。
 しかし、1959年代後半に電化が進み白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫という三種の神器が登場してくると、燃料はだんだん売れなくなりました。そこで「これからの商売は食べることがいい」という人の意見を聞き入れて、燃料屋は廃業して、浅草の定食屋兼酒場に妻と二人、半年間住込みで働きました。
 
―飲食店を開店したのはいつですか?
市野■渋谷の燃料倉庫を改築し、昭和36年5月に「すみや」という魚料理専門の食堂兼酒場を開店しました。当初は収容人数60名ほどの店でしたが、我々夫婦と従業員10名で回しながら、最終的には200名ほど収容できる店となりました。
 まだまだ飲食店も少なく、近くに区役所、消防署、都電の車庫などがあって、たくさんの職員の方々に利用してもらいました。
 
―店では調理場に立っていたのですか?
市野■毎日仕入れには行きましたが、調理場は従業員に任せ、経営に専念していましたね。組合員の皆さんの中には腕のいいりっぱな料理人さんもいらっしゃいますが、私は商売人で職人としての下積み経験はありません。

―飲食業組合とのかかわりは?
市野■昭和61年から渋谷支部の支部長になりました。63年にはそれまでの店舗を壊してビルを建て、地下で落ち着いた和食の「すみや」を継続して営業してきました。今では信頼できる人に運営を委託し、この2月半ばよりまた新たな店としてスタートします。

街全体が元気でないと商売もうまくゆかない

―理事長は戦後の何もなかった頃の渋谷が、現在のにぎわいのある街に変貌してきた様子を見てこられたのですね。
市野■渋谷公園通り振興組合の長も12年間務め、街の活性化に努めてきました。街全体が元気でないと自分のところの商売もうまくいかないからです。大きな駅があり、代々木公園や明治神宮の森がある渋谷は、ニューヨークのパークアベニューと似ていることから、現地を視察し姉妹提携を結ぶといったこともしました。渋谷は現在、100年に一度の大改造に入り十数年かけて駅ビルの高層化なども行われる予定です。この4月にオープンする複合施設「渋谷ヒカリエ」などは、“渋谷から世界を照らす”をキャッチフレーズにし、情報文化の発信基地の役割を果たしていくそうです。時代は、常に変化し、柔軟な思考を持つことの大切さを痛感します。

―理事長は海外旅行も度々行かれるそうですが、日本の食をどう考えますか?
市野■フランス料理などでも和食のテイストを取り入れたものが多いですね。日本の食は衛生管理の面でも高い信頼を得ています。まだまだ外国からの観光客が少ない日本にあって、食文化は魅力ある観光資本となります。高級感を漂わせる必要などなく、夫婦でやっている小さな店でも、プライドやこだわり、もてなしの心をもって営むことで、お客様を十分魅了することができます。昔カーター大統領がお忍びで訪れたという焼き鳥屋の例もあります。グローバルな視点、広い視野に立ちながら、日々のやるべきことをきっちり行っていくことが大切ですね。

食は魅力ある観光資本

―50周年記念東京都大会が開催されますが、どんな大会にしていこうと考えていますか?
市野■東京は日本の政治・経済・文化の中心となる都市ですから、いままでの全国大会になかったような力強いものを打ち出したいです。日本一の高さを誇る建造物・東京スカイツリーに上って見渡す風景。羽田空港を離発着する飛行機。東京湾を遊覧するクルーザーから林立するビル群が織りなす夜景を眺める。100人乗りの屋形船は20艘確保し、江戸情緒あふれる隅田川のほとりの景色を楽しんでいただく。東京という世界に誇る都市の発する躍動感やスケール感を五感で感じ、飲食業界の仲間同士が思いを共有し絆を深め合うことで、明日の商売に向かう活力を養っていただく機会になることを願っています。

―まさに東京ならではの趣向ですね。準備は着々と進んでいますね。
市野■昨年7月より大会の実行委員会が結成され、各委員が全国からいらしていただく組合員の皆様をどのようにおもてなししたらよいか、いろいろと智恵を絞り企画を詰めてくれています。全国から2千人の参加を見込んでいますが、参加者をもてなす役目を担う主催組合としては5百人の参加を目標として、各組合支部にお願いしているところです。

―東京都の組合の先頭に立ち、どのような組合づくりを目指しますか。
市野■わたしは委員など実働部隊として働いた経験がないまま、今日の理事長職にあります。ですからトップダウンで組織を動かすということではなく、役員や委員の皆さんが動きやすいような環境づくりに務め、それぞれに頑張ってもらえることが一番と認識しています。みんなで集まってお酒を飲んだりすることが好きなので、そんなときに親睦を深めいろいろな意見を出してもらい、聞き役に徹しています。組合の皆さんには感謝ですね。

―どうもありがとうございました。