平成22年10月22日 近畿ブロック講習会 喫煙規制条例の動きがある兵庫県の実態についての最新レポート 組合員一丸となって思いを届ける 兵庫県飲食業生活衛生同業組合
入江 眞弘 理事長●受動喫煙防止措置
「受動喫煙」とは、タバコからの煙やタバコを吸った後の煙を、タバコを吸わない人が自分の意に反して吸わされているということです。受動喫煙は健康被害≠ェ一番ネックになっています。WHO(世界保健機関)が「たばこ規制枠組み条約」を2005年2月に発効し、日本は2004年の3月9日にこれに署名し、6月8日に批准しました。それと同時に厚生労働省から発令された「健康増進法第25条」の中で、受動喫煙を防止するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない対象施設≠ノ飲食店が挙げられました。●神奈川県の取り組み
これを受けて、神奈川県がこの4月に、松沢市長が音頭をとって条例を施行しました。「神奈川県の公的施設における受動喫煙防止条例の概要」という資料を見ると、禁煙又は分煙施設という中に、調理場を除き100平米超の大規模飲食店≠ニあります。気を付けたいのは分煙という言葉。分煙というのは、完全に密閉された部屋を作ると決められています。その設備費用は安くても150万、高ければ500万円以上。横浜の新聞には、5階建てのホテルの場合1階ごとに喫煙所を作ろうとすると、5千万円の設備費用がかかるという記事が載っていました。それくらいの費用をかけてはじめて分煙です。
「禁煙又は分煙努力義務施設」という項目がありますが、特例で30坪以下の小規模飲食店は除外されています。これを見たとき、単純にシートベルト≠ニ同じだと思いました。自動車の後部座席も以前はシートベルトをしてください程度でしたが、今は義務化されています。努力≠ニ言っても、数年後には絶対義務化にすり変わる。神奈川県も3年後の見直しが規定にあるらしく、そのときは恐らく全部禁煙は必至です。●兵庫の受動喫煙再発防止委員会
さて、なぜ兵庫県が受動喫煙再発防止に熱心なのかという話です。井戸知事自らが音頭をとっています。兵庫県は平成16年に「兵庫県受動喫煙防止対策指針」を策定しました。いろいろな施設を挙げながら、禁煙もしくは分煙というカタチで進めていったら、22年度で指針が終了し、23年度から新しく何かを策定しなければなりません。そこで行政側は「受動喫煙再発防止委員会」を結成したのです。●医療やWHOの関係者が約半数を占める委員会
驚いたことに15名いる委員は、医療関係が6名、教育委員会、消費者団体、新聞・マスコミ関係5名、WHO(国際保健機構)から一人、所長の外人さんがいます。実は神戸に「健康開発総合研究センター」というWHOの機関があって、これを今回表舞台に出そうということのようです。残りは飲食業界を代表して私、旅館組合の理事長、商工会議所の専務理事と、民間からの選出は3人だけです。●全面禁煙で多くのパブが閉店
最初の会議に参加して驚いたのが、なぜ嫌煙家として有名な北九州産業医科大の医師やWHOの職員がいるのだろうということでした。不思議でしたが、委員会が始まると一番に出た「健康被害」の発言で合点が行きました。今、全世界的な潮流として禁煙があります。イギリスでは施設内全部禁煙で、パブが二千軒近く潰れています。アメリカのニューヨークでも全面禁煙で、その反動としてレストランなどの外では吸い放題。そうすると、タバコの吸い殻などマナーの問題も出てきます。
こういう問題がある中で、なぜ兵庫県なのか。委員会にいて、正直にあんなにエネルギーのいるストレスのたまる会議は初めてです。健康被害というところが話の落としどころと決まっています。「あなたは健康を願わないのですか」という話。今、本当に景気が良くないこのタイミングで、なぜこんな条例をしくのですかと最初に申し上げましたが、健康被害≠ニいう言葉の前に、全部砕け散ってしまうのです。相当な勢いで、「受動喫煙防止対策」が進められています。●無視できない多様な業態の存在
既に静岡県に話が飛び火しているようで、全国レベルで進行していく恐れがあります。私が委員会で言っているのは、「我々の飲食店業界を他人事にしないでくれ」ということです。飲食業界は一つだけれど、業態はものすごく多岐にわたっています。例えば何百坪もあるような料亭と、立ち食いそば屋を一緒くたにできません。絶対無理と言っています。けれど、ストレスがたまる一方というのが実態です。
現在までに委員会は7回開催されています。この委員会は当初3回の予定でした。「そんな3回で何ができるのですか」と私は言いました。行政のほうは3回で、それも9月までに終わらせろということでした。これには仕掛けがあって、9月までに終わらせ、年内に条例の草案を作り知事に提出します。そして県議会を通らないと条例になりません。23年2月、3月くらいに議会にかけられ、それがすーっと承認されてしまうと、4月から条例が施行されます。今現在、兵庫県では自民党の先生方にご支援とご協力をいただけるよう色々お話をしています。どこかで政治的なことを絡ませながら勝負をかけないと、なし崩し的に条例化されてしまいます。●一丸となって業界の思いを届ける
兵庫県のホームページを開いていただきますと、「受動喫煙防止対策委員会」という項目が載っていて議事録が出ています。私の発言が随所消されているところがありますが、重要なポイントだけは伝わるように、議事録を確認しながらやっています。私の言い分が、議会に、最終的に知事のところに届けば、何らかに形は変えていただけるのではないかと期待をこめています。しかし間違いなく3年後、5年後にはまた問題視され、全国的に展開されてしまうとどうしようもありません。県条例ならまだ逃げ道はあると思い、委員会でどんどん発言をしているところです。●兵庫県で条例の規制がかかった場合
一番打撃が大きいのは尼崎市で、壊滅状態になることが予想されます。尼崎市は10分も車で走れば大阪に行けるところ。大阪にお客さんがあふれます。実際神奈川県では東京都に隣接する川崎市に、こうした状況が出ているといいます。つい最近東京都の料理屋さんと話す機会があり、神奈川県の人が増えていると聞きました。事実こういうことが起こってきます。ですからなぜ、兵庫県だけでこういうことをやるのだと言い続けています。東京都の石原都知事は委員会を設立しながら、条例化しませんでした。業界を一まとめにして行うのは無理ということで、努力義務で保留にしています。
飲食店だけでなく一般の事業所、散髪屋さんなども皆、事業所として規制をかけてしまおうという話なので、委員会の中では、飲食店だけというのではなく「民間の事業所」として話をしています。民間の事業所に規制をかけていいのか、一つの議論になると思います。●署名やステッカーでアピール
他にも署名活動を進めています。話の落としどころが健康被害というところで、やりにくくてストレスもたまりますが、なんとか飲食店が規制に引っ掛からないように、飲食業組合に限らず、連絡協議会など生活衛生同業組合もまとめて行い、署名が集まったところで行政に提出しようと考えています。
また、ステッカーを用意し、各店舗に貼っていただいています。例えば「当店では喫煙できます」のステッカーは、健康被害を避けるために、「ここの店では煙草を吸っていますから入店しないでください」と知らせることで、タバコを吸わない人が入ってこないようにすることができます。自分たちもいろいろ考えながら行動しているので、努力義務≠ネどと言われる筋合いはないと訴えています。●小規模店も大規模店も心ひとつに団結!
今が最後の踏ん張りどころで、何とか署名活動を力に変えて後押ししてもらえれば有り難い。隣接する大阪さんもいつ飛び火するか分かりません。大阪府の飲食業組合の皆さんも、一致団結してこの動きを大きくして、行政に対峙していきましょう。神奈川県が条例化してしまったのは、大きな店と小さな店を分けてしまったからです。規制にかからなかった小さい店には関係ないという意識があって、一枚岩でなくなってしまいました。これを教訓に、兵庫では意識を一つに取り組めるよう展開したい。大阪さん、京都さん、近畿地区で一致団結しましょう。こういうときこそ、組合の力が発揮されます。