事故やクレームを予防するためのマニュアル

毎日笑顔でお客様をお迎えするために
飲食店危機管理マニュアル

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全飲連 平成21年度生活衛生営業振興推進事業
「飲食店危機管理マニュアル」を作成
 食に対する安心・安全を求める声が大きくなるのと同時に、自己責任社会になりつつあるといわれる日本において、私たち飲食に関わるものに求められる危機管理とはどんな事があるのでしょうか。
 飲食店営業における危機には、大きく「食中毒」、「飲酒運転」、「食物アレルギー」、「店舗火災」、「受動喫煙」などの事柄が想定されます。本マニュアルではそのような事故や日常に潜むトラブルにおける対応方法を示して、危機に対する心構えや万一の時にお役立ていただきたいと思います。

飲食店における危機管理って何?
 かつて米国ではコーヒーを自分の膝にこぼしてしまったお客様が、飲食店を訴えて一部勝訴したという事件がありました。訴訟社会の米国らしい事件ですが、飲食に関わる事業者にとっては他人事ではないのです。
 飲食業おいて想定される事故やクレームには、「食中毒」、「飲酒運転」、「食物アレルギー」、「店舗火災」、「受動喫煙」などがあります。
 身の回りにある危機について日頃から意識しておけば、トラブルを回避できる可能性が高いものです。毎日、笑顔でお客様をお迎えするために「危機管理」意識の向上に努めていきましょう。
 
まずは心がけから始まる危機管理
 コストを掛けず、かつ効果的な危機管理は、経営者や従業員の意識向上を図ることです。店内に存在しているリスクの再確認や事故発生時の対応策を共通認識として持つことが大切です。
 例えば、食中毒では手洗いを徹底するだけでも、発生リスクは大きく軽減されます。当たり前の事ですが、改めて自らの店の厨房のことを考えたとき、自信を持って「徹底している」と言えように心がけましょう。

標準営業約款の再認識
 一般飲食店営業における標準営業約款「Sマーク」は、安心・安全・清潔を約束する制度です。その中には衛生管理や受動喫煙に対する規定があり、これを遵守することは食中毒の予防や防災対策としての効果が大きいといえます。
 また、損害賠償に関する規定もあるため、万一の事故が発生した場合の対策にもつながります。

コンプライアンスに対する倫理意識向上
 飲食業関連の法令をしっかりと学び、それを遵守する倫理意識の向上が求められます。中でも最も身近な法令として、「食品衛生法」、「健康増進法」、「食育基本法」があります。
 国民の生命や健康に関わる私たち飲食業の責任は非常に大きなものです。まずは、法の精神を理解することが、危機管理の第一歩であるといえるでしょう。

 

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 ケース1 食 中 毒    


食中毒の三原則 +「持ち込まない」の徹底

 食中毒防止の三原則は「付けない」「増やさない」「消滅させる」という三点です。まずは経営者自らが、常にその原則を意識しながら、従業員全員に徹底させることが重要です。
 更にこれを確実なものするために「持ち込まない」ことを加えて、食中毒を絶対に発生させない仕組みづくりを進めなければなりません。「もちこまない」とは、例えば体調の悪い人に調理させないことや食材は段ボールのままや土のついたまま厨房に搬入しない、などが考えられます。

保険加入によるリスクマネジメント
 万一、食中毒事故が発生したときは、被害者への対応を最優先させなければなりません。加害者となった飲食店は、被害者に対して損害賠償金や見舞い金などを支払いなど、誠心誠意の対応をしなければなりません。
 標準営業約款には、一般飲食店事故賠償における法律上の責任を負うべき合理的基準が定められており、公平かつ効率的にトラブルを解決し、被害にあった消費者を簡易迅速に救済することが明記されています。
 生産物賠償責任保険(PL保険)や総合食品賠償共済(食品衛生協会)などに加入することで、万一の場合に備えましょう。
 
■危機管理のポイント(食中毒防止)
 ●食中毒防止三原則の徹底
  「付けない」「増やさない」「消滅させる」
 ●さらに・・・「持ち込まない」
 ●事故が起こってしまったら・・・
  標準営業約款などに定められた賠償基準に基
  づいて迅速で誠意ある対応

 

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 ケース 2 飲酒運転    


ハンドルキーパー運動の積極的な推進

 飲酒運転による死亡事故が後を絶ちません。酒類を提供する飲食店は、ドライバーに対して断固たる態度で酒類提供を断らなければなりません。
そのための手法として、「ハンドルキーパー運動」によって、来店客への啓発をお勧めします。ドライバーか否か、ドライバーである場合、帰る際に運転代行を利用するかどうかなどを声掛けによって確認することは、なかなか難しいことです。
 ポスターやチラシの掲示、ワッペンやバッジなどのアイテムを利用することで、飲酒運転防止に大きな成果を発揮するはずです。
 
組合や地域で行う啓蒙活動
 また、同一エリアにおける組合単位などで一致結束した運動の推進が効果的であるといえます。同時に警察や代行業者に協力を依頼することも大きな成果につながると考えられます。組織的な「ハンドルキーパー運動」が推進されると、マスコミで取り上げられる場合もあるので、飲食店側の前向きな姿勢として、消費者にアピールすることもできるでしょう。

■危機管理のポイント
 (ハンドルキーパー運動推進)
●お客が自動車で来たかどうか確認する。
●帰りに運転する人(ハンドルキーパー)を確認する。
●ハンドルキーパーには、酒類を提供しない。
●バッジやワッペンなど目印になるものをハンドルキーパーに渡す。
●運転代行で帰る場合には、その確認ができるまでキーを預かる。

 

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 ケース3 アレルギー    


食物アレルギーのリスクを知る
 食物アレルギーは、じんましんやアトピー性皮膚炎を伴った皮膚症状、嘔吐・下痢などの消化器症状、くしゃみ・せきなどの呼吸器症状、場合によってはアラフィラキシーショックのような重篤な症状を引き起こすこともあります。
 何らかの食物アレルギーを持つ人が、先進国を中心に増加しているといわれています。加工食品に関しては特定の食材についての表示義務があり、食物アレルギーについての認知度が高まっています。飲食店のメニューへの表示義務はありませんが、店独自に表示することでリスクを軽減することができるでしょう。

従業員教育による意識向上を図る
 そばアレルギーの児童が学校給食に出されたそばを食べて嘔吐、それをのどに詰まらせて死亡するという痛ましい事故がありました。間接的にでも死亡事故につながることであるという認識をもたなくてはなりません。
 まずは従業員が食物アレルギーについて知識を深め、お客様と接する中でリスクを回避することが第一歩です。オーダーを取る際には、必ずアレルギーの有無を確認して、アレルギーがある場合には調理担当者に確実に伝達しなければなりません。その際、調理方法が変更になる場合には、その旨をお客様にお伝えします。

■危機管理のポイント(食物アレルギー対策)
 以下の食材については、提供する際にアレルギーの有無を確認しましょう。
●食品アレルギーを起こしやすい食材
 卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに
●上記に準じる食材
 あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、バナナ

 

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 ケース 4 店舗火災    


従業員の防火意識の向上を図る
 日頃から防火に対する高い意識を持つことで、火災の発生や延焼を限りなくゼロに近づけることができると言われています。燃えやすい紙類などは厨房に置かない、日頃から整理整頓を心がけるだけでも火災リスクの軽減につながります。また、屋外にむやみやたりに引火しやすいものを置かないなどの整理整頓は、放火をさせないことにもつながります。
 また、店舗で起こりうる火災のパターンをイメージしてみることも大切です。出火原因となりうる箇所をリストアップして、従業員と共有しておきましょう。
 日頃から、地域の防災訓練などに従業員と共に参加して、地域防災情報を知っておくことや近隣の方々とのコミュニケーションを図ることも防火への第一歩です。

店における防火体制づくり
 法令に基いた防火体制を整えておくことが必要です。経営者あるいは店長など店内を統括する者を防火管理者に選任して、消防計画の作成や消防訓練を実施しましょう。防火管理者選任の義務付けがない規模の場合でも積極的に取り組むことをお勧めします。
 また、店内に設置してある火災警報器などの機器についても定期的な点検も重要です。場合によっては一定の経年によって交換が必要な機器もありますので、取扱説明書などを十分に読んで適切な対応をしなければなりません。
 
■危機管理のポイント(店舗火災)
●日頃から火災に対する危機意識を高く持ち、以下のことに注意する。
 @店内・店外に引火しやすいモノをやたらに置かない。
 Aコンセント(特にほこり)を定期的にチェック
 B店内の火元となりそうな箇所をリストアップ
 C防火管理者を置き、防火体制づくりを行う。
 Dさらに、防火対象物点検資格を取得する。
 E火災警報器など定期的な点検を実施する。
 F万一の時は、迅速に「通報」「初動消火」「非難誘導」

 

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 ケース5 受動喫煙    


健康増進法や条例への早めの対応
 健康増進法第25条では、飲食店などにおける受動喫煙防止に努めなければならないことが規定されています。日に日に公共の場における喫煙が制限される中、妊婦や子どもに健康被害を与える恐れのある受動喫煙の問題に対して、不特定多数が来店する飲食店では禁煙または完全分煙などの対策を講じなければなりません。
 時代の流れとして、罰則を伴うような条例が制定されることも予想されますので、早い段階から対応策を検討しておくことが望ましいといえるでしょう。

来店客への啓蒙活動
 店内を全面的に禁煙にすることで、空気がきれいになるというメリットが生まれます。また、煙による店内の汚れもなくなります。こういった点は家族連れや妊婦の方にとっては飲食店を選ぶ上での条件になるでしょう。
 店としての方針を明確に打ち出し、入口付近での告知や口頭による直接的な協力依頼を行うなど、来店者への啓蒙活動を積極的に行いましょう。しっかりとした方針は、信頼獲得にもつながります。

■危機管理のポイント(受動喫煙対策)
●危機管理はコミュニケーションから
●スタッフの意識向上と情報共有
●お客様の声を聞く
●意識が変わればリスクが減ります
●法令順守や標準営業約款などを積極利用

 

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