2008年・業界動向ウォッチング!

 西洋料理店/大衆食堂

全国生活衛生営業指導センターでは、生衛業の業種別の業界動向を(2〜3年毎に作成)を取りまとめてホームページで掲載しています。21年度全国各都道府県指導センター経営相談員向け研修会、さらに20年度2月開催の全国16連合会事務局長研修会においても報告がありました。本紙面では飲食業(西洋料理店/大衆食堂)について掲載します。

http://www.seiei.or.jp/advice/1.html

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 西洋料理店

1、概況

(1)事業所数の推移
 総務省「事業所・企業統計調査」により西洋料理店の事業所数の推移を見ると、小規模(従業者1〜4人)層が堅調に推移しており、従業者数が多く雇用負担の大きい事業体ではやや足踏み状態となっている。

■西洋料理店の事業所数(従業者規模別)の推移

年 次 施設数 営業許可 廃止取消 (参考)一般飲食店全体
平成3年度  9,357  17,055  26,412  474,389 
8年度  11,068  18,803  29,871  456,420 
13年度  12,178  18,229  30,407  442,883 
18年度  12,469  16,831  29,300  415,449 

(資料:総務省「事業所・企業統計調査」)

(2)飲食店営業の施設数、営業許可、廃止取消件数の推移
 「西洋料理店」単独での施設(店舗)数の把握が存在しないことから、参考として、厚生労働省「衛生行政報告例」により「飲食店営業」全体の動向を見たい。施設(店舗)数としては減少傾向にあり、新規参入の営業許可と廃業の廃止取消が拮抗しつつ増減を繰り返していることから、参入し易い反面、撤退も著しい側面が伺える。

■「飲食店営業」の施設数、営業許可、廃止取消件数の推移

年 次 施設数 営業許可 廃止取消
平成17年度  1,503,459  162,322  165,614 
18年度  1,496,480  163,026  170,005 
19年度  1479218  154,278  171,540 

(資料:厚生労働省「衛生行政報告例」)

(3)最近の動向
ア:特定の単品料理を提供する西洋料理店の増加
 近年、ハンバーグ専門店、オムライス専門店、ステーキ専門店、スパゲッティ専門店など特定の単品料理分野において、多彩なメニュー構成で料理を提供する専門店が増えている。あたかもラーメン専門店の如くであり、若年層の参入が多く見られる。特定料理に特化することで、広範な調理技能の習得を必要としない点や、開業資金が安価であるなど利点もあるようであり、一部消費者の個食化ニーズに対応している。一方で、専門店であることの幅の狭さは、顧客ニーズとのミス・マッチをひき起す危険性もあり、需要の核心を外さないよう努力が不可欠といえる。

イ:世帯当たり家計支出は年間15,000円
 総務省「家計調査年報」により1世帯当たりの「洋食」年間家計支出額を見ると、平成15年15,091円、16年15,303円、17年15,900円、18年15,714円と推移しており、「飲食代」のうち、ファミリーレストラン等「他の主食的外食」に次いで第2位の家計支出を占めている。

ウ:世帯主年齢階層別の家計支出では若年層が中核
 総務省「家計調査年報」により世帯主年齢階層別の「洋食」家計支出を見ると、「40歳代」が22,241円で最も多く、次いで「30歳代」「29歳以下」と2万円代が続く。「70歳以上」では約3分の1以下となっており、若年層世帯が需要の中核となっている。食生活の年齢階層別差異の両極といえる。

 

2、西洋料理店の特性と現状

 厚生労働省の委託により全国生活衛生営業指導センターが実施した「平成15年度生活衛生関係営業経営実態調査(一般食堂)」から、「西洋料理店」業界の現状の一端を探ってみたい。

(1)開店「〜12時台」、長い営業時間
 飲食店の営業時間は「8〜12時間」が一般的であり、一般食堂全体で58.5%である。そのうち「10〜12時間」が30.3%と最も多く、長時間営業の実態が浮かぶ。
 西洋料理店の開店時刻は「〜12時台」86.2%が最も多く、日本料理店の58.7%に比べても集中度が高い。因みに東洋料理店では「〜10時台」82.1%となっており、西洋料理店の昼食需要への対応がうかがえる。

(2)来店客数の平均107人
 西洋料理店の1日当たり平均来店客数は「107.4人」であり、一般食堂全体81.4人に対しても多く、来店型食事処の業態といえる。店舗の構造や雰囲気作りなどに工夫が必要となろう。

(3)平均食事単価1,900円
 西洋料理店の平均食事単価(客単価)は「1,904円」であり、日本料理店の3,245円に比較すると客単価は低い。一般食堂全体では1,974円であり、平均的といえる。

(4)食材購入「特定農家等と契約」に特色
 主な食材の購入方法では、「小売店からの購入」が58.6%と最も多いが、他の専門料理店では見られない「特定農家等と契約」が13.8%あり、西洋料理店では野菜や魚等の食材を生産者から直接仕入れる方法が取り入れられていることが見られる。

 

3、西洋料理店の業界よもやま

(1)東京・銀座「煉瓦亭」
 明治維新に続く西洋文化導入の過程で食生活の洋風化が進む中、日本本来の米飯に適合した惣菜として調理された“日本の西洋料理”が始まる。明治28年東京・銀座に創業した「煉瓦亭」によってポークカツレツが考案され、西洋料理として広まっていくことになる。以降、海老フライ、牡蠣フライ、白身魚フライなど揚げ物が考案され、オムライス、ハヤシライスへと続く。作家「池波正太郎」も愛した西洋料理店は、今も客足が絶えない。

(2)西洋料理店とは
 総務省「日本標準産業分類」で西洋料理店は、「主として欧米諸国の料理を、その場で飲食させる事業所」と定義されている。具体例として、フランス料理店、イタリア料理店、ロシア料理店、メキシコ料理店などが列挙される。市民生活の中では一般的に、日本人向けにアレンジした多彩なメニューが提供される「洋食店」が多く存在している。ただし、洋食系ファミリーレストランは西洋式大衆食堂として、日本標準産業分類では「一般食堂」の部に分類され、西洋料理店とは区分する。

(3)二極化する経営形態
 西洋料理店は、提供する料理内容やその価格帯によって2つに大別されよう。1つは、大衆的な洋食メニューを比較的低価格で気軽に提供する「洋食店」のグループであり、一方は、特定国の地域料理や高級食材を調理して提供する「専門西洋料理店」のグループである。供給する営業店側と需要の消費者側によって、互いにニーズのマッチングを行うことで分類が発生し、経営形態は二極化の様相を呈している。

(4)経営のポイント
 食材に関する偽装や改ざん事件、輸入食材の残留農薬問題など、「食の安全・安心」に対する消費者意識が急速に高まっており、飲食業界を取り巻く経営環境は厳しいものがある。厚生労働省「飲食店営業(一般食堂)の実態と経営改善の方策」において「西洋料理店」を含めた調査と提言がなされていることから、経営のポイントを探ってみたい。

ア:顧客ニーズの変化を謙虚に認識する
 本格的な西洋料理を提供する飲食店営業として、提供する側のコンセプトが顧客をリードする傾向のある業界であることから、時として独り善がりになることのリスクを内在する。飲食店営業の原点として、常に顧客ニーズを的確 に認識する謙虚さが不可欠である。

イ:経営方針を明確にし、得意分野に特化
 従業員と認識を共有して経営目標(方針)を明確にし、「強み」を活かす対応策を検証して得意分野に特化することから、自店のコンセプトを常に訴え続けることが必要である。
・メインの客層は誰か、明確に認識する。
・客層は何を求めているのか、提供するメニューを絞り込む。
・自店の独自性を創出し、提供するサービスを特色づける。

ウ:損益分岐点を検証する
 店舗施設、設備や食材の調達等に過剰なコストを計上しては、経営を圧迫し継続性を損なうことになる。定期的に損益分岐点を検証し、経営の実態を把握しておく必要がある。

エ:「食の安全・安心」に厳正に対応する
 食品に対する消費者の視線は厳しさを増しており、「食の安全・安心」については従前以上に厳正に対応する必要がある。従業員、取引先等を含めて、食材の産地表示や調達日時等を開示するなど、食品を取り扱う事業者としての基本方針を徹底することが求められる。

 

 大衆食堂

1、概況

(1)事業所数の推移
「大衆食堂」の事業所数を、総務省「事業所・企業統計調査」の「一般食堂」の事業所数の推移で見ると、小規模(従業者1〜4人)層の減少傾向は依然続いているものの、従業者5人以上の事業体では増減を繰り返しつつ堅調な推移となっている。

■「一般食堂」の事業所数(従業者規模別)の推移

調査年次 1〜4人 5人以上 合 計 (参考)一般飲食店全体
平成3年  74,443  27,908  102,351  474,389 
8年  60,240  26,889  87,129  456,420 
13年  52,346  28,092  80,438  442,883 
18年  46,060  27,238  73,298  415,449 

(資料:総務省「事業所・企業統計調査」)

(2)施設数の推移
 「大衆食堂」単独での施設(店舗)数の把握が存在しないことから、参考として、厚生労働省「衛生行政報告例」により「飲食店営業」全体の動向を見たい。
 施設(店舗)数としては減少傾向にあり、新規参入の営業許可と廃業の廃止取消件数が拮抗しつつ増減を繰り返していることから、参入し易い反面、撤退も著しい側面が窺える。

■「飲食店営業」の施設数、営業許可、廃止取消件数の推移

年 次 施設数 営業許可 廃止取消
平成17年度  1,503,459  162,322  165,614 
18年度  1,496,480  163,026  170,005 
19年度  1,479,218  154,278  171,540 

(資料:厚生労働省「衛生行政報告例」)

(3)最近の動向
ア:「スカイラーク」の撤退
 昭和40年代中頃、外資系の外食産業が上陸してきたことにより、日本の庶民派「大衆食堂」が暖簾を下ろし始めた。洋風レストラン形式の「ファミリーレストラン」は新旧交代を宣言して業界を席捲し、FC形式の大衆食堂、メニューを絞り込んだ新業態が参入してくる。庶民派の旗頭は大手資本に翻弄され、過当競争の中で新陳代謝を加速していく。しかしながら、大手資本も互いに競争の波に巻き込まれ、その象徴的な典型が「スカイラーク」の撤退である。

イ:食事代支出の中心は「他の主食的外食」年間53,000円
 総務省「家計調査年報」平成18年により1世帯当たりの「食事代」年間家計支出の内訳を見ると、「食事代」126,317円のうち「他の主食的外食」53,074円が最も多く、次いで「和食」22,901円、「洋食」15,714円、「すし」13,822円と続く。この「他の主食的外食」が「ファミリーレストラン」を中心とする食事代支出であることから、日本の食生活は大きく様変わりしており、伝統的な庶民派「大衆食堂」は消滅の危機にある。

ウ:世帯主「40歳代」「30歳代」「29歳以下」は「ファミレス」世代
 総務省「家計調査年報」平成18年により世帯主の年齢階層別「他の主食的外食」家計支出を見ると、「40歳代」67,837円が最も多く、次いで「30歳代」63,072円、「29歳以下」62,264円と続き、60歳以上では半額程度になる。子供連れ世代と若年層が「ファミレス」需要の中核となっている。

 

2、大衆食堂の特性と現状

 厚生労働省の委託により全国生活衛生営業指導センターが実施した「平成15年度生活衛生関係営業経営実態調査(一般食堂)」から、「大衆食堂」業界の現状を探ってみたい。

(1)進む経営者の高齢化
 経営者の年齢階層を見ると「60歳代」が36.6%と最も多く、次いで「50歳代」34.4%となり、60歳以上では46.6%を占める。50歳以上の経営者で「後継者有り」は57.5%、「後継者無し」は37.9%である。
 創業時期では「昭和元年〜49年」が48.3%で最も多く、昭和時代合計では8割近くを占めることから、二代目、三代目の経営者に高齢化が忍び寄っていることがうかがえる。

(2)営業時間は「8〜12時間」
 営業時間数を総数で見ると「10〜12時間」が30.3%と最も多く、次いで「8〜10時間」が28.2%となっている。「8〜12時間」で58.5%となる。
 「大衆食堂」の開店時刻は「〜12時台」が64.5%で最も多く、閉店時刻は「21時以降」が57.7%と最も多くなっており、昼食から夜の飲食まで、長時間営業になっている。

(3)平均来客数89人、客単価975円
 「大衆食堂」の1日当たりの平均来客数は89.1人で、他の一般飲食(総平均81.4人)に比較して多い方である。また、1人当たり平均食事単価(客単価)は975.3円と、他の一般飲食(総平均1,973.6円)に比較して約半額であり、定食など食事の提供が中心であることがうかがえる。

(4)経営上の問題点、第1位「客数の減少」
 経営上の問題点(複数回答)では、「客数の減少」81.3%、「客単価の減少」52.2%、「諸経費の上昇」23.1%の順となっている。他の生活衛生関係営業と大差はないが、「客単価の減少」割合が高く、「客数×単価」=売上高の低下がうかがえる。

 

3、大衆食堂の業界よもやま

(1)「おふくろ」の味、庶民派食堂
 専門的料理を提供する「日本料理店」「西洋料理店」「中華料理店」等とは業種分類上区分され、和食・洋食・中華あらゆる料理を、主食、副食を問わず提供する庶民派の飲食店が「大衆食堂」である。定食や丼物、麺類、汁物に至るまで、親元を離れて「おふくろ」の味が堪能できる飲食店といえる。惣菜店やスーパーの惣菜売り場で購入する「鯖の味噌煮」や「鯵の塩焼き」等とは、どこか異なる食味が需要を賄ってきた。母親が台所に立つことが少なくなって「ファミレス」に流れていったのか。「ファミレス」が母親から台所を奪ったのか。日本の「食育」が漂流している。

(2)新たな「大衆食堂」の出現
 首都圏、近畿圏等の人口集積地に立地し、敢えて「大衆食堂」をイメージしたFC店が出現している。地名を冠した「**食堂」である。価格の安さ、手軽さ、気安さ、豊富な品揃え等、従来型の大衆食堂以上に庶民性に溢れている。「ファミレス」にない手軽な食事処として、街角に店舗展開する業態の出店が拡大しつつある。

(3)市民生活の中で熾烈な競争分野
 大衆食堂は市民生活の中で、主食を提供する身近な飲食店である。特に、昼食の需要では、事業所向けの弁当販売、配給・宅配事業や、持ち帰り弁当、コンビニエンス・ストアー等、多数の競合分野が参入し、熾烈な販売合戦が展開されている。

(4)経営のポイント
 食材に関する偽装や改ざん事件、輸入食材の残留農薬問題など、「食の安全・安心」に対する消費者の視線は厳しさを増し、業界を取り巻く経営環境はその経営姿勢までが問われている。食材調達コストの上昇やメニューの転換が余儀なくなるなど、経営に際しての対応事項が増加している。   
 厚生労働省「飲食店営業(一般食堂)の実態と経営改善の方策」から、経営のポイントを探ってみたい。

ア:自己点検と革新
 比較的少ない設備資本により勤勉な事業主と家族労働によって成り立ってきた業態が一般的であり、近隣の固定客を主たる顧客として経営革新に無関心な営業ではなかったか。これで「客数が減少」と悩んでも先が見えない。まず、経営者自身が新たな自己認識で保守性を打破し、経営環境の変化に真摯にたち向かう必要がある。

イ:顧客ニーズの変化を認識する
 顧客ニーズの変化や多様化を受け、外食が日常化した食生活へ対応する様々な外食産業が成熟化し、新たな業種・業態が生まれている。「安さ、手軽さ、気安さ」という大衆性の需要分野も浸食が激しい。浸食されるということは、そこに需要が存在することであり、顧客ニーズとその変化を率直に認識することが重要である。

ウ:経営方針を明確にし、「強み」を活かす
 従業員と認識を共有し、目標(経営方針)を明確にすることから「強み」を活かすことが重要である。
・メインの客層は誰か、明確に認識する。
・その客層は何が好みか、提供するメニューを絞り込む。
・自店の「独自性を創出し、提供するサービスを特色づける。

エ:「食の安全・安心」への適正な対応
 食品を取り扱う事業にあって、消費者の視線に真摯に立ち向かうことは当然の責務といえる。残留農薬問題や表示偽装など、心ない一部の業者によって信頼が揺らぎかねない事態となっている。経営の原点に立ち返り、従業員や取引先等と経営方針を共有して「食の安全・安心」に対し適正に取り組むことが求められる。

●資料
1. 総務省「事業所・企業統計調査」
2. 総務省「家計調査年報」
3. 厚生労働省「衛生行政報告例」
4. 厚生労働省「飲食店営業(一般食堂)の実態と経営改善の方策」平成16年10月
5. 厚生労働省「平成15年度生活衛生関係営業経営実態調査(一般食堂)」
6. 全国生活衛生営業指導センター「生活衛生関係営業ハンドブック2008」