原産地表示  
実施状況アンケートを比較 
集計結果から今後の対応策を見出す

●はじめに

 平成17年7月農林水産省は「外食における原産地表示に関するガイドライン」を策定し、外食事業者の原産地表示の取り組みを推進してきました。それから約2年が経過した昨年、各外食事業関係団体はアンケートにより原産地表示実施調査を行い、農林水産省は結果を発表しました。これを受け、現状の把握と今後の課題を見極めるため、全飲連も独自アンケートを行いましたので、農林水産省の結果発表と比較しながらお知らせ致します。

●未だ実施率が低い原産地表示

 平成19年度農林水産省が発表した原産地表示実施率は事業者ベースで62.7%、店舗数ベースで80.6%でした。これに対し平成19年度全飲連調査は事業者ベースで21.8%、店舗ベースで14.3%と農林水産省の発表に比べ、全飲連の原産地表示実施状況は非常に低い結果となりました。これは憂慮しなければならない事実です。今後の実施状況を改善していくためにも、全飲連の行ったアンケートをきちんと解析し、対応策を見出すことが急務です。

●ガイドラインの名称のみが先行している

 まず、原産地表示のガイドラインに関して認知度では、「知っている」が76.9%でガイドラインそのものの認識は非常に高まっているものの、理解度については48.6%の方が「おおむね理解している」と回答しており、半数以上の方は漠然と把握、もしくは名前を知る程度にとどまっており、組合員の理解の低さが活用されていない現状につながっていると思われます。また、原産地表示の問題点については、「作業負担を感じる」が49.3%と最も高く、「難しそう、大変そう」というイメージを持っていると予想されます。
 こういった状況を打開するためにも、ガイドラインの推奨と並行して、丁寧に内容を解説する説明会や講習会を定期的に開催し、理解を深める必要性があります。理解力を高めることが作業の負担軽減にも繋がり、それが原産地表示の導入に繋がるのです。

●消費者意識に合わせた柔軟な対応が必要

 原産地表示を実施しない理由に関して、「メリットを感じない」と答えた方が61.4%と最も多い結果でした。また、「売上アップ効果に疑問を感じる」と答えた方も31.9%と大きな割合を占めたことも特徴的です。しかし、来店客の反応を問う質問では、「多くの客が関心」20.3%、「一部の客が関心」56.5%と両者を合わせて7割以上の来店客が関心を示していることもわかりました。
 18年度と比べてもその数は上昇しており、今の消費者は原産地表示を求めているといえるでしょう。つまり、高まる消費者意識に相反して、経営者はメリットを感じないという意識の食い違いがあるようです。
 食の偽装問題や食の安全が危険視されている現代において、原産地表示はお客様を安心させるための情報公開のひとつであり、直接の利益は生まなくとも、お客様と信頼関係を構築するための義務として受け止めねばならない時代になったと感じております。組合員であることを認識し、取り組んでいくことが必要なのです。

●今後の課題

 今回、全飲連で実施したアンケート調査結果は、農林水産省がまとめた外食事業者の原産地表示の実施割合に大きく及ばないという残念な結果でした。しかし、原産地表示ガイドラインの認知度が高まっていること、原産地表示を求める消費者が増えてきたことが判明し、同時に全飲連内で原産地表示の実施が遅れている理由を予想することができました。
 これをふまえ、ガイドラインの認知度が上昇している今、これまで以上に力を入れて、内容の理解度が認知度に追いつけるような体制作りを進めなければならないと思います。
 また、表示の範囲に関しての質問では「一部の食材について表示」が84.1%と最も多く、農林水産省が発表した結果でも「食肉類」が50.5%と最も多い結果でした。
 原産地表示を導入していくうえで、全店舗で完全表示を行うのは最も喜ばしいことですが、導入措置として段階的に取り入れていくことも必要かもしれません。そうすることで負担を抑え、一部でも表示を導入することで、直接お客様の反応を見ることができ、組合員の意識向上につながると思われます。