全飲連ニュース紙上セミナー 関東・甲信越ブロック講習会  平成19年10月18日
「原産地表示」と「食事バランスガイド」の普及促進
店は「老化」でダメになる
 店もお客様も元気がなければ繁盛しない。
ootuka
■講師 
日本ヒューマン経営研究社 
代表取締役 大塚 徹氏 

はじめに
商売は経営者の心意気次第

「店は『老化』でダメになる」。なんだかビクッとするような言葉ですが、この言葉と、「店やお客様が老朽化でダメになる」は全く意味が違います。
 店がオープンしてどれくらい経ったかは関係ない。老舗100年、200年経っても繁盛しているお店は沢山あります。そうかと思うとオープンしてから1年くらいで閉めるお店もあります。これは何を物語っているかというと、店の経営者のレベルです。ダメな人はダメなんです。暇な店ほどサービスも良くない。お店を見れば、皆さんなら分かるでしょう。店は外観、人は外見です。つまり、目に見えるものには目に見えないものの力が反映されます。経営者にやる気が無くなってくると、お店の電球が切れていたり、埃が溜まり始めたり、掃除がおろそかになったり…。全部その店の経営者や従業員の心から生まれてくるのです。だから人を見れば分かるというのがポイントです。
 店というのは、お金と技術があれば誰でもできます。ただし、繁盛するかどうかは全く別。大手のホテルの厨房で働いている料理人が10年、20年やって、「商売をやりたい」ということで独立しますが、89%が失敗しています。料理を作る腕はいい。ただ、営業力・接客力・売る力がないのです。つまり、商売は作る技術と売る技術の両方がマッチしていないとできない。
 では、繁盛し続けるためにはどうするか。成長なくして永続性はありません。永続性とは、「あの店は感じがいい」という評判がいつまでも続くことです。そして、お客様自身が成長し続けているということも忘れないでください。お客様のレベルが上がったのです。味だけでなく、接客サービスに対してもレベルが上がっていますから、時代はまさに、『質の時代』に入ったといえます。

1、あなたの店は、今、何歳?

 はじめに1.青年期(成長期)この時期は時代の成長に備えて体に「抵抗力」をつける。そして、次に2.壮年期(安定期)です。大体ここで商売はピークを迎えます。ここのところで安心をしてしまうのが多くの方の傾向です。この時期は、少しずつ進む体力低下。まずは常に「基礎体力」アップを真剣に行わなければならないのですが、この時期にほとんどがやられます。やがて下り坂の3.老年期(衰退期)に入る。この時期はマンネリ化が一番危険。「脳の柔軟性」を取り戻すことが急務ですが、長年経験を積んでくると、年齢と共に自分の中に自信が生まれますから、柔軟性は無くなってしまう。衰退の道を走っていってしまいます。柔軟性がなくなるというのをどこで判断できるかというと、人の話をちゃんと聞かないなど、素直さが失われていきます。注意を受けて頭にカッと血が昇るのもこの現れです。
 次に、老化の三大現象です。
1.経営者の意識がマンネリ化に慣れてしまうこと。
 これがまず老化現象の走りです。我々人間の行動は95%が無意識下です。意識しないものは何一つ身に付きません。意識をすることがいい仕事につながります。意識がなくなることがマンネリ。つまり、惰性です。毎日同じことを繰り返していると、徐々に起きる変化や、どこがお客様に嫌われているかが分からなくなってきます。一度来たお客様がその後複数回来なければ、商売の永続性はありません。最初に与える印象で評価が左右されてしまいます。
2.お客様に飽きられたり経営者が意欲を失うことで、店全体のレベルが徐々に低下していくこと。
 定期的な改装は、お客様に飽きられないだけでなく、経営者自身にも従業員にも、大いなる活性化につながる。経営者の意欲が下がることによって、店全体のレベルが下がっていく。商売に対して熱心に取り組んでいた情熱が次第に失われていく。これが問題です。
3.成功体験におごり、固執すること。
 慢心や日常業務に忙殺されて、店の経営理念や創業精神をなおざりにする経営者は危険です。創業から現在までの歴史を振り返り、現在のあり方を素直に考えることが大切。そこから、店が将来向かうべき方向と、そのために自分が何をすべきか、ということを明確にしていきます。このように、時折振り返って、自分の意識を新鮮な意識に呼び戻す必要があります。
 実は、衰退をして、何が失われるかというと、夢と希望と目標です。目標が明確なときには行動も力強くなる。そして、その目標を達成していく。目標があることで、全て姿勢に反映されます。店の掃除、業者への対応、お客様への接し方、これらができないようなら、どんな商売を始めようとうまくいくわけがありません。これを繰り返すことで、お客様との心が近づき、一つになっていくのです。「今日の自分は昨日の自分に勝てましたか」これを毎日、自問自答していくのです。反省を繰り返すことで、職場にも勢いが出てくるのではないでしょうか。「今日一日無事に過ごすことができました」「明日はより一層精進します」「ありがとうございます」いつまでも、この精神を忘れないで下さい。

2、時代は「信頼」と「健康」を渇望している

 私は、癌になってから、食生活に気をつけて癌の再発を防いでいます。だからこそ、食べ物を本気になって考えます。その際、このような表示はプラスになります。今では当たり前のようにカロリー表記がなされています。品質表示なども同様です。どうぞ率先して取り入れてください。それがお客さん自身が本当に求めているものです。求めているということは、お客様自身が学んでいるということです。素材の良さというものを表現してみてください。食材を打ち出した店は流行っている。これが信頼と健康を渇望しているお客様に対してのサービスです。「原産地表示こそメニューの重要価値」です。「食事バランスガイドでお客様に健康を」、「店にもお客様にも元気がなければ繁盛しない」どうぞ実践してみてください。

3、お客様は三つのカテゴリーに分けられる

1.「推薦者」とは:店の味やサービスの熱狂的な信者となったお客様のことで、さらに店の味やサービスを積極的に人に薦めてくれる。
こういうお客様を掴んでください。自ら営業マンになってくれます。
2.「無関心者」とは:満足しただけのお客様。最低限の期待しか満たされなかったため、無関心。無感動で、味やサービスに伴う不快さに耐えたりするほどではない。ライバル店からの勧誘にも弱い。店舗にとって、プラスでも、マイナスでもないという様子です。
3.「刺客」とは:その業界で最低限とされる期待が満たされなかったり、問題が適切に対処されない場合に生まれる。彼らは、その店とは付き合わないように説いて回るなど、強い主張をする。

4、接客サービスの五原則

 これは重要なことです。なぜ、接客サービスが大切かというと、それは飲食店だからこそです。飲食店には、出会い、語らい、味わいがあります。この3つがなければ流行りません。それぞれの喜びなくして繁盛なし。その喜び、それが接客サービス業です。そこで一番重要なのは、
1.笑顔でお客様と接していく。常に笑顔。笑顔にお金はかからない。お金はかからないが、サービスのトップにくるのは笑顔です。笑顔は、人に親近感と安心感を与えます。笑顔は心の現われです。笑顔はサービスの要です。笑顔がある店にお客様は惹きつけられる。笑顔は愛情です。笑顔がない店というのはどう考えても流行らない。笑顔は挨拶。縁起のいい、明るい挨拶です。
2.挨拶とは、自分の心を開いて相手に近づくという意味です。「おはよう。今日も良く晴れてるねぇ。昨日のお客さんも喜んでたよ、ご苦労さん。」という言葉をかける。相手に言葉を投げかけていくことが大切です。そして、挨拶はいつでもどこでも自ら先に言いましょう。挨拶は大切なお客様をお迎えするための要です。飲食店は、「不味い」よりも、「冷たい」ことのほうが嫌われます。従業員間、経営者、お客様ときちんとした挨拶を交わすことが元気、やる気の素です。声は小さいとダメ。声が小さいと暗い印象ですし、やる気も感じ取れません。
3.身だしなみです。第一印象で、その人の55%のイメージを決めてしまいます。髪形・服装・姿勢・表情・態度・話し方・声・物の見方・考え方で決めてしまいます。さっぱり感・清潔感が大切ですね。
4.立ち居振る舞い。基本は立ち方にあります。1に姿勢2に姿勢、3に姿勢。ぐっと背筋を伸ばし、胸を張る。お客様が何か用事がある場合にはすぐに動けるように備える、見ていて感じがいいですね。
5.ことば遣いです。ビジネスでは敬語・丁寧語・依頼語だけです。「ていねい」は「やさしさ」になります。お客様は、姿勢・態度・ことば遣い・仕事振りを見て、敵になるか見方になるかを決めるのです。人を見ています。経営者や、従業員を見ているのです。

5、お客様の求める「店」とは?

 飲食店の三大条件とは、店構え・人構え・品構えです。
 店構えとは、雰囲気の良さ、人構え:人の良さ、品構え:味の良さです。飲食店業界で、「ウマい」「美味しい」は絶対条件であり、これほどの武器はありません。「人の温もりがあって、馴染みのある店で食べたい」こう思われるものを作っていかなければなりません。チャレンジがとても大切になってきます。
 チャレンジとは、想像力と挑戦です。新しいものを創っていく。それはオリジナルの料理、オリジナルの飲み物、これらを創らないということは、繁盛を諦めているという証拠です。他では味わえない味・雰囲気をどこまで作り続けるか、それがお客様の中に価値を生むのです。
 商売の中での成功とは何でしょうか。人に喜ばれ、感謝される人間になることです。つまり、周りを幸せにすることです。お店で値段以上の価値がある料理や飲み物を提供することが、お客様に満足を与え、気分を良くしてあげることになるのです。お客様に対して「ありがとうございます」は当たり前、しかし、お客様から「ありがとう」と言われる店になりなさい。
 お客様を大事にする、当たり前です。けれども、お客様から大事にされる店を目指すべきではないでしょうか。皆さん、お客様が喜ぶことであれば、徹底的にお客様の方向を向いて下さい。

(紙面の都合により講演要旨を掲載いたしました)

●プロフィール
〈経営・商売・生き方〉研究家・講演家
1940年 栃木県生まれ。高校卒業後東京へ。1966年 様々な仕事をしながら法政大学経済学部2部を卒業。1974年 宇都宮市にパブ・レストラン「パイプのけむり」をオープン。1975年 大塚経営研究所設立。1991年 株式会社日本ヒューマン経営研究社とする実践経営の中から修得した独自の人間学・商人学・経営学をベースとし、講演・研修・執筆と各方面で活躍中