全飲連ニュース紙上セミナー 関東・甲信越ブロック講習会 平成18年9月27日 食の安全と安心を目指す
全飲連の姿勢と加盟店の繁栄株式会社 日本ヒューマン経営研究所 大塚 徹 氏 1、時代背景…ウソとダマシに学ぶ
日本始まって以来の嫌な時代ではないでしょうか。かつてなかったような犯罪が増え、食品業界でも肉や魚のインチキ表示、ブランド米に中国米を混ぜて販売など、信用と信頼ができません。立派な人物が平気で犯罪を行っています。喫茶店に行くと、小さなミルクがありますね。あれは油、化学薬品だそうです。イクラも薬品ですぐに偽物が作れるそうです。
関サバや関アジは有名ですね。豊後水道、大分県関町の漁港に水揚げされたサバやアジにつけたブランドです。投網ではなく、一本釣りされたものですが、それが全国のスーパーで売られています。それに安いですね。本物には漁港で付けるシールがあります。スーパーのものには貼ってないので聞いてみると「箱に付いています」と言う。取れちゃったという、それは調べようがありません。
では、どんどん偽装がばれるのはなぜか、それは内部告発です。車でも何でも、社内からばれますね。しかし謝罪の仕方というものもあります。松下のファンヒーターがありましたね。私の家にもハガキが来ました。うちにはファンヒーターはとっくにないですし、買ったかどうかも覚えていません。テレビではずっとお詫びと回収の放送をしているし、チラシは来るしハガキも一軒、一軒に届く。それを見たときに、さすがは松下だと思いましたね。徹底した謝罪で、誠意を表したんですね。逃げようとするから弾圧されて、会社が傾くのです。謝罪を徹底しないと、日本人はそれが自分のことでなくても義憤を感じるんですね。だからパロマ製の湯沸かし器を自分が使っていなくても怒る、それが日本人の常識です。だから内部告発が起こります。そしてもう一つ、取引先があやしいと思ったら徹底して調査します。そして三つ目は、社会の意識の高まりです。この三点でばれます。
では、どうして偽装がなくならないのでしょうか。食品表示基準には二つありますね。一つはJAS法、もう一つは皆さんよくご存知の食品衛生法。JAS法は、食品の原産地や水産物の場合は養殖なのか冷凍かどうか表示を義務付けていますが、最終的に偽装が見つかっても罰金は50万円だけです。大手の食品会社にとっては50万円なんて何のことはありません。
もう一つ、食品衛生法は添加物や残留農薬、容器や包装などをチェックして安全な食品を確保するための法律です。これはまだ徹底されていませんが、飲酒運転のように、やり続けると社会問題になって、どんどん厳しくなります。これからはますます食品表示の偽装問題は社会現象化していくでしょう。
そこで、産地直送が注目されています。皆さんはどこで仕入れをしていますか。今、農家でパソコンを使う人は大勢います。インターネット上で米や野菜がいくらでも買えます。市場、仲買人、小売もいらない、農家から直接買うんです。今はインターネットで米も野菜も、肉も魚も手に入ります。「作り手の顔が見えるところから買いたい」と、消費者が安さや銘柄よりも、安全性や質を重視するようになってきました。また、業者も、経営姿勢や人間性、評判をチェックするようになりました。こういう人たちがかなりの勢いで増えてきていることを覚えておいてください。偽物の横行によって本物のブランド品の価値がアップする、本物を持つ喜びがあります。飲食店も同じです。2、もうすぐ訪れる短命国世界一の「日本」
現代人はアトピーやアレルギーが多く、噛む力や骨も発達していません。子どもの頃から骨が折れやすいそうです。精子不足の若者や、子宮が未熟で生理不順、子どもの産めない女性が大勢います。これは食という問題をあまりにもいい加減にしてきたからです。食べ物が身体を作っているのです。強靭な肉体を作る食べ物を食べさせていないからキレる。引きこもる。自分の感情や一生をコントロールできない、精神的に非常に弱いのです。大人になってからでは間に合いません。今は長寿国世界一ですが、これからは短命国世界一日本になるかもしれません。
あなたは健康で暮らしたいですか。当たり前ですが、100%ですね。「あなたは食品の安全性に気を使っていますか」というアンケートに対して、76%の人がイエスと答えました。76%というのはすごい数字です。食育→知育→体育→徳育なのです。今こそ食の大切さを訴えるべきです。
以前は有機野菜、天然、自然という言葉は重苦しいイメージでしたが、今はブランドです。お客様も添加物を意識するようになりました。そして社会の関心がますます高まっているのが食育です。『日経レストラン』の「食育を売りにしている飲食店があればぜひ行ってみたいと思いますか」というアンケートでは、84%の人が「行きたい」と答えました。
では我々飲食店はどうすればいいか。まずメニューブックで食材の産地を明記しよう。使っている食材をクイズ形式で表示しよう。バランスよく食べることを教える子ども向け料理教室を開こう。なぜ好き嫌いが良くないか理解できる事例の紹介をしよう。定番のお子様ランチではない子ども向けのメニューの開発をしよう。子ども向けのメニューは多いようでそうでもないのです。デニーズは子ども向けのメニューを20品に増やそうとしています。お子様ランチというようなバカにしたようなメニューではなく、しっかりした子どもさん向けのメニューを作ろうというわけです。
簡単に始められる食育の取り組み例として、野菜を使ったメニューを差し込みメニューにして、そこから1品お客様が選んで追加してもらえれば、不足しがちな野菜を摂取できます。グランドメニューに載せないで差し込む。そして、客席で最終調理をするメニューを増やす。例えば、サラダにドレッシングをかけるところを客席で、子どもさんにやってもらう。そうすると、食材に対して興味が湧いて、誰かが作ったものを出すと食べない子でも、食べてみようという気になる。「自分が育てた野菜は捨てるところがない」と皆が言いますね。それと同じです。
子ども向けの料理教室。素材の形を知らず、魚は切り身で泳いでいると思っている子どもがいますね。かぼちゃ、さつまいも、ニンジン、きゅうり、なす。料理教室でその野菜に親しむことができます。調理に際しては、衛生の大切さ、調理する楽しさも学ぶことができる。自分で調理すると絶対に食べるんですね。
そして食材の産地や調理法や保存法などの豆知識をメニュー欄に記載する、または別刷りにしてお客様に差し上げる。そうすると親も食材の知識を身につけることができるし、家庭の食育にもなりますね。3、「安心保証」が繁盛店の要
まさしくこれが標準営業約款ですね。実は私も委員の一人になりまして、約6回委員会に参加させていただきました。そこで、標準という話ですが、時代はとっくにスタンダードは終わり、スペシャルです。食中毒は実際に起こせばお店は打撃を受けます。ですが、食中毒を心配して飲食店に入るお客様は一人もいない。「今時食中毒を起こすような不潔な店が営業できるはずがない」というように考えているのです。もちろん、指導によって皆さんはしっかり衛生管理をされているから心配はないと思います。
しかし、それ以上のものをお客様は望んでいるのです。腹が空いたから何でも食べるという時代はとうに終わりました。現代は全てに不安な時代だからこそ、安心、安全が求められているのです。地域のお客様が見ている、信用、信頼の取り組みをしっかりしなければなりません。そしてもっと表示せよ、産地、品質、カロリー、作り方、全飲連加盟店表示、安心保証表示と、表示すべきことはたくさんあります。普通の店、何の特徴もない店はお客様から選ばれない時代です。だから全飲連の全組合員ががんばって実行すれば、集団だからこそ効果が早く浸透します。この標準営業約款、安心保証を全飲連のブランドにすべきです。クリーニング、旅館業もやっていますが、その時代とは全く違います。
理想はスタンダードではなく、スペシャルです。品質を高くしていかなければなりません。ですから、食材を打ち出した飲食店は流行ります。食材の良さを書いた看板料理をこれから作るべきです。それは社会を構成するお客様がこだわっているからです。毎日の新聞、テレビ、インターネット、口コミの情報で、お客様のレベルが高くなっているのです。お客様はだんだん勉強をするようになりました。多くのメーカーの偽装表示や嘘にうんざりしているのです。消費者の団体は刺激を受けて学ぶことが多くなっています。そのおかげで、しっかりした飲食店はお客様から支持されるようになって来ました。
水一杯ですらお客様の関心は高くなっています。つまりレベルの高いお客様にご満足いただけるおもてなしを展開しなければやっていけないのです。例えば米の表示は、ササニシキ、コシヒカリではだめなのです。どこの誰がどういう作り方をしたのか、その田んぼにはドジョウやタニシがいるのか、こういうこともインターネットで調べてきますからびっくりしますね。その上、昔は雑穀、粟やヒエなどは貧乏人の食べ物でしたが、今は五穀米、七穀米、十六穀米というように、雑穀と小豆や大豆のような豆類とを混ぜ合わせながら、健康食として食べている人も多くなりました。インターネットで扱っている店は非常に多く、またよく売れています。古代米や玄米、有機野菜、自然、天然、調味料もそうです。皆さん、調味料も表示してください。天然の醤油、オリーブオイル、ごま油、砂糖、ワサビ。今はびっくりするほど天然塩が売れています。どこどこの塩、何とかの岩塩がテーブルの上にあるだけで、この店は違うなとお客様は必ず思うわけです。昔の、食卓塩を置くのは裏目に出ます。より専門家を目指してください。
飲食業界の再生は、携わる人たちの再生をしなければなりません。昔ながらのものを、お客様に提供するだけでは何の関心も持たれません。原産地表示ガイドライン、こういうふうにこれからはメニューに載せるべきです。
そして標準営業約款、安心保証のマークはいい加減な店を入れると、ブランドになりません。「あの店は誇りや使命感を持って飲食業に携わっている」という店にだけこのマークを表示し、全飲連が食品に本気で取り組んでいるという姿勢を出してください。今マスコミはこの話題に食いついてきます。社会現象だからです。
酒屋は免許制ではなくなりました。もう普通の酒屋さんはやっていけない。しかし世の中で本当にこだわりを持って大繁盛する酒屋さんはたくさんあります。例えば、東京の亀戸の酒屋さんは、すごいです。価格競争はディスカウントショップに太刀打ちできません。同じものを売ったのではだめです。勝つためには、一般的には売られていない、本当に自分の舌で感じておいしいという、きちんと作られているお酒は全国にたくさんあるわけです。そのお店では、全国の酒蔵の半数近くにあたる5百軒を回ったといいます。この店に行きますと、たった30坪ほどの店内に、8百種類以上のおいしい銘酒が並んでいます。一切値引きしません。一般のお客様にも、飲食店などの業務用でも、値引きしないで同じ価格で販売しても売れています。オンリーワンだからです。
うちの店の特徴、自慢できるところは何だろうか。イオン水を使っている、イタリアの塩を使っている。醤油は蔵で5年間寝かせたものだ、米は有機栽培されている。野菜も何でもそうです。胸を張って言えます。従業員も自分の働く店を誇りに思います。そういう店にはお客様も一目も二目も置くのは当然です。厚生省の保証つきである安心保証という表示が最高の戦略に使える時代が来たのです。加入すれば誰でも入れますが、そんな感覚で数だけ増やしてもお客様は振り向いてくれません。「全飲連に加入している組合店は違う、食品に対する姿勢がしっかりしている、プロ意識がある」ということを組合の方々に徹底してください。ただ入ったからといって商売が繁盛することはありえません。その表示によってメニューを作り、店内に自分たちの姿勢を表示する。産地、地産地消、カロリーなど、どこにこだわっているかをしっかりと表示する。4、お客様のために何ができるか
例えば、スナックへ行くと、相変わらず糖尿病の人に甘いポッキーを出しています。そんな商売をしないで、お客様の身体を気遣って、身体にいい料理を出しましょう。飲酒運転の取締りで大変なのは、当然のことです。タクシー会社と契約したり、自分のところでワンボックスを買って送迎するなど、工夫が必要です。
高齢社会になり、この方々は金持ち、暇持ちでさらに健康です。お金を使いたくてしょうがない。その人たちに本当に身体にいいものを出しましょう。お客様に喜ばれます。ホテル業界では、どんどん新しい工夫をしています。アンチエイジング、若返りの料理がとても人気です。アレルギーの人のためのメニュー、そばや小麦、牛乳などを使わない料理をどんどん取り上げていますね。ぜひ皆さんもやってください。
もしお客様から選ばれなければ、その理由を考えることです。ただ単に安いだけではだめです。質を上げることです。人気のイタリアンレストラン、ラ・ベットラの落合務さんは、お客様が少ないとき、徹底して反省し、食材のレベルを上げたそうです。暇で儲からないと食材のレベルが下がる、だからますます暇になる。お客様が入らないときにこそ食材とお客様のレベルを上げるのです。今、自分の店は常連が多いから安心だと思っているうちに暇になります。病気、年をとると食べなくなる、飲めなくなる、隠居。今元気であっても、お客様は自分の懐のお金で来るのですから、もっとおいしい店、感じのいい店を探し、いずれは去っていくという現象もあります。
皆さんのお店で、お客様のことを「客」「お客」と呼んでいませんか。そういうお店は間違いなくお客さまを大切に扱っていません。「お客さん」でもだめです。「お客様」です。お客様がいないところ、従業員同士の会話であっても、です。例えばクレームに対しても、「うるせえ客だ」と思う心のつぶやきが、必ず伝わってしまうのです。「お客様」以外にはありません。これを徹底してください。地域一番店になる五カ条があります。
1、地域一番店と言われる部分をつくる
2、飲食店はおもてなし業
3、コンセプトに忠実に
4、家族が支えあう
5、料理人であっても経営者の視点を飲食業はお客様に密着した商売です。だめになるのはお客様をお客様として扱わなかったときです。お客様が来なくなるのは、全て店側に原因があります。それを社会のせい、不景気のせい、飲酒運転取締りのせいと言っていたら商売ができません。それは全ての飲食店に当てはまる条件なのですから。お店の利益に貢献できない人は、お客様の満足に貢献できていない人なのです。お客様の満足のために何が出来るか、全組合員で考えて、全飲連の安心保証のブランドを更に広め、マスコミに取材させ、改革をしていくことが、全飲連加盟店だけの繁盛につながると私は信じております。
本日はありがとうございました。