I n t e r v i e w

(社)全国生活衛生同業組合中央会理事長
田中 清三 全飲連会長に聞く

明るく元気な雰囲気を醸し、
「臍の緒」としての役割を担います。


 
   
全飲連事務局スタッフと共に  

―中央会理事長就任おめでとうございます。生衛業界は、個人経営や零細企業が多い業種ですが、日本の経済の基盤を担っているとも言えると思います。そういった生衛業界の代表という立場は、とても重要な役職だと思います。

田中大変重責を感じますね。我々は生衛法という法律によって生まれ、守られてきていますが、その存在意義や価値が大きく問われていると思います。ギブアンドテイクのバランスも崩れかけてきています。リーダーとしては非常に苦しいことです。我々は守られてきたし、守られていることをメリットとして40年以上組合活動を頑張ってきました。
 現在の生活衛生資金貸付制度は大変ありがたいですが、やはり当たり前のこととして、借りたら返さなくてはなりません。その返す裏づけである経営環境が非常にシビアになってきています。個性と工夫とお客様に対する思いが揃わないことには商いが成立しません。
 行政、生衛議員連盟の政治家の先生方、そして我々業界の三者が相俟っていくように、私は「臍の緒」になろうと思います。お互いに栄養を分かち合う、決して盲腸になることなく、健康体を維持していくことが努力目標です。


「信頼され、好かれる」これが客商売の原点

―今までは全飲連会長として、飲食業の考え方を主張していけば良かったわけですが、多様な生衛業16団体の考え方やニーズをまとめていくことは大変なことですね。

田中とにかく業種といいますか職が違うのですから、各分野の専門的なことは熟知しておりませんが、中央会は構成しているそれぞれの連合会のリーダー集合体ですから、その人間関係を大事にしていきたいと思います。16団体が集まっているというパワー(元気さ)と、明るさで、「よし、頑張ろう!」という雰囲気を醸し出すのが中央会の理事長としての勤めだと思います。政治や経済やそれぞれの業種や仕事のことも大事ですが、常に明るく元気でいること。そういう雰囲気を醸し出すことは難しいですが、それは、私自身に己の徳があるかどうかが、問われているのだと思います。
 やっぱり、皆さんに信頼され、好かれる男にならないといけません。理容業にしても飲食業にしてもお客さんあっての商売です。全てお客様の接客はマンツーマンで、人に好かれる人間でなくてはなりません。ですから、中央会も厚生労働省のお役人の方にも、生衛議員連盟の先生方にも好かれる組織にならなければと思います。そして、常日頃から絶えず血が通っている組織でなければいけません。私はその頂点に立って、「臍の緒」になっていくということです。五臓六腑の話をするならば、沈黙の臓器ではいけません。
 一期2年間ベストを尽くします。生きているわけですから、いろいろなことが起きるのは仕方がないのですが、何かが起きた時に乗り越えていかなければなりません。

―中央会の理事長として、当面の具体的な課題はどんなことがあるのでしょうか。

田中政策金融改革、三位一体改革、税制改革の3点が課題だと思っています。当面これが大きな壁ですね。生活衛生資金貸付制度の堅持、都道府県指導センターに対する国庫補助金の問題、同属会社役員給与の損金不算入の見直しなどについて、しっかりした形で取組んでいきます。今は曖昧模糊としていますが生衛16団体が一致団結していかなければと考えています。

―生衛16団体の一般の組合員さんには中央会の役割があまり知られていないような気もしますが。

田中各連合会の全国大会では、中央会の理事長表彰というのがありますが、これからは、もう一度原点に返って、理事長と専務理事二人三脚で一期2年付き合ってもらおうと思っています。幸いなことに、今の中央会は小宮山専務理事さんと言う得がたい人材がいらっしゃるので、大いなる心の杖になると思っています。


集まることで、喜びや元気を生み出す

―さて、田中会長は全飲連の会長としても、初めて4期連続会長に選出されました。今後の全飲連や飲食業のあり方についてのお考えをお聞かせ下さい。

田中組合活動は、皆さんが集まって楽しくやることが一番です。みんな「しんどい」ですが、集まったら元気になります。自分だけセンチメンタルではだめです。「しんどい」のは当たり前、全飲連に明るいムードをつくりだし、お互いの心が元気づけられるような集団にしたいと思います。組合に入ると仲間に会えて楽しい、そこが人間と動物の違いだと思います。動物は弱いから集まるのですが、我々人間は違います。集まることで、喜びや元気を生み出すのです。組合はそのユニオンだという事です。それがメリットです。親睦というのは、字にものすごく意味があるのです。集まることに対して、非常に楽しみを感じ、酒の味もひと味もふた味も違うのです。
 商売を個人でやっているアウトサイダーの方々は、相当の精神力の持ち主だと思います。我々は普通の人間です。集うことで情報や悩みを共有することができます。聞くだけではだめで、こんな問題に悩んでいるということを打ち明けること、またそれを話せる雰囲気を作るということが大事です。難しいと思いますが、若干の自信はあります。ありがたいことで社交も飲食も経験していますから、この経験を皆さんのために活かしていきたいと思います。


団塊の世代の問題と組合員の減少は同じ問題

―これからの飲食業界が直面する問題として、田中会長はどんな問題を最も注視していますか。

田中2007年問題。団塊の世代の退職は我々の業界にも大きな影響があると思っています。我々飲食店は基本的には個々の経営です。これからの商売の相手としては、団塊の世代のお客様を取り込んでいかなければなりません。この世代は、マスコミやチラシではなく、口コミで自分に合った好きな店を聞いたり、探したりして来店します。そういったお客様の志向やニーズを研究して、時代のふるいにかけられないようにすることが大事です。標準営業約款制度もそのためのものです。生き残りの一つの術です。人数の問題ではないのです。量ではなく質の問題なのです。

―組合員の減少も大きな課題の一つだと思いますが。

田中組合員の数が減少していく流れは、人口減もあり自然なものとも言えます。そんな中で、生衛の飲食業組合がどういう組織なのかと、新しい人が知ろうとしている流れもあります。これは一つのチャンスです。こういった人たちを取り込んでいくことは理想ですが、人口減少、少子化の問題をもっともっと研究し、真剣に考えていきたいと思います。
 昔は店の廃業と、新しく開業するバランスがうまくとれていました。しかし今は、廃業はあるけれど開業が少なくなりました。我々飲食業も高度成長の時代に独立した人が多く、もう高齢だからと言って辞めていく流れは、団塊の世代の退職の流れと同時進行しています。


心が通い、食によって人が集うことが飲食業の原点

―飲食店の経営そのもののあり方について、何かアイデアをお持ちですか。

田中従業員の給料を固定給のほかに、チップ制の導入も今後の研究課題としてあるのかと思っています。これには経営者も従業員も大きく意識を変えないと実現できません。その壁を打ち破るのは大変なことです。飲食店経営では人件費の割合は大きいのですが、大企業のようにリストラはできないし、反面、3Kの職場ですから絶えず募集を出さないといけない。社会保険料や年金の負担も大きいものがあります。また、味もいいけどサービスもいいという口コミを作っていかなければなりません。少子化対策、団塊の世代をお客様にすること、人件費の問題。従業員も経営者も個性的で楽しく、心が通い、食によって人が集う原点に返らなければなりませんね。

―最後に、全飲連の組合員の皆さんに一言お願いします。

田中私は関西ですが、関西人には関西人の商いがあります。関西で仕込まれた「ど根性」もさることながら、愛想も大事。人があっての商いですから、お客さんに好かれることが大事だといつも思っています。ですから全飲連の皆さんにとっても好かれるリーダーになっていこうと思います。どうかご支援、ご協力をお願いいたします。