2006年 酒類企業社長年頭挨拶

酒類企業社長から年頭挨拶が全飲連に寄せられましたので、その概要を抜粋して掲載させていただきます。

アサヒビール株式会社
代表取締役社長 池田 弘一

 酒類業界、および流通・外食業界において、2005年は新取引制度の導入で幕が開けました。流通をはじめ多くの皆さまのご理解とご協力により、コストオンの考え方が浸透しつつあり、取引の正常化に向けて大きな一歩を踏み出すことができました。しかし、酒類の消費は、焼酎は堅調に推移したものの、低アルコール飲料の伸びが一段落し、またビール類合計も微減となり、全体としては減少となる見込みで、まだまだ景気回復が実感できない状況となりました。
 こうした状況の中で、第2次グループ中期経営計画の2年目となる2005年、弊社は「成長への決意」をスローガンに掲げ、「国内酒類事業の新たな成長」「グループ事業の新たな成長」「世界に向けた新たな成長」の3つの成長に挑戦してまいりました。
 国内酒類事業においては、主力の「スーパードライ」を中心としたビールでシェアを伸ばすことができました。全社で取り組んでおります「うまい樽生」「鮮度」追求の活動も2年目に入り、お客様に広くご支持いただけたものと考えております。また、発泡酒と新たに参入した新ジャンルでは、「本生ゴールド」「新生3」がご好評いただき、発泡酒と新ジャンルを合わせた販売数量は前年の発泡酒の実績を上回りました。しかしながら、ビール類トータルの成長という面では、課題を残しました。
 焼酎・低アルコール飲料・洋酒・ワインでは、焼酎「かのか」、低アルコール飲料「カクテルパートナー」、ウイスキー「竹鶴」、ワイン「サントネージュ」など、各カテゴリーの中核ブランドで大きく売上げを伸ばし、着実なブランド育成を図ることができました。
 海外事業では、重点市場と位置づける中国・アジアで大きく成長を図ることができました。特に、成長著しいタイ・カンボジアで大きく売上げが伸びました。一昨年に新工場が竣工した北京ビールもお客様からのご支持を広げ、順調に売上げを伸ばしております。また、一昨年中国で飲料合弁事業を開始した康師傳飲品も、業績が好調に推移しております。
 さて本年は、第2次グループ中期経営計画のゴールの年となります。定量目標とともに、「事業構造」「収益構造」「企業体質」の3つの変革を全社員で達成していく所存でございます。そのために、「スーパードライ」を中心としたビール類の成長を最優先に取り組んでまいります。お客様にとってより魅力的な、そして新価値をご提案する商品・活動を展開し、ビールNo.1メーカーとしての使命を果たしていきたいと考えております。また、焼酎・低アルコール飲料・洋酒・ワインでも、引き続き大幅な売上げ増にチャレンジし、酒類事業の成長を基盤としてグループ全体の成長を図ってまいります。一方で、業績面だけでなく、企業活動全般にわたり、お客様からのご評価を得ていくことに努めてまいります。
 昨年、不退転の決意で導入しました新取引制度については、引き続き浸透・定着に向けて努力してまいります。酒類業界の健全な発展に向けて、卸・小売の皆様とともに市場安定化に取り組んでまいります。本年も皆様のご理解とご協力を賜りたく、重ねてお願い申し上げます。

 

キリンビール株式会社
代表取締役社長 荒蒔 康一郎

 昨年は、我が酒類業界におきましては、年初にビール・発泡酒においてオープン価格制度が導入され、かつてない新たな取組みが開始されました。従来からの商慣行が大きな変革の時を迎えたという意味でまさにエポックメイキングな年であったと思われます。
 また、年末には与党の「平成18年度税制改正大綱」において本年度の酒税の税制改正が盛り込まれました。ビールについては小幅の減税が実現したものの、新ジャンル商品、その他の低アルコール発泡性酒類、果実酒他が増税されることとなり、『ビール・発泡酒の大幅減税、新ジャンルの増税反対』という基本的な業界の要望が受け入れられず不本意な結果に終わったことは、大変残念であったと言わざるをえません。
 これまで減税活動に多大なご支援を頂いた多くのお客様のご期待に報いるため、今後とも適正な酒税減税についての訴えを継続していきたいと考えております。
 弊社の昨年を振り返りますと、事業計画の分野におきましては、「2004年―2006年 中期経営計画」の方針に基づき総合酒類事業を積極果敢に展開してまいりました。
 ビールカテゴリーにおきましては、まず「ラガー」「一番搾り」の主力商品について様々なSP・広告政策を実施することによりブランド価値の向上に努めてまいりました。また、チルドビールにつきましてラインアップを充実し、高付加価値型商品であることのベネフィットを大いにアピールいたしました結果、市場における存在感が高まりお客様の認知は大いに進んだものと思われます。
 発泡酒カテゴリーでは、年初に「淡麗」シリーズをリニューアルし、ブランド力の強化に注力した結果、ダウントレンドの厳しい市場環境の中ではありましたが、その地位の向上が大いに図れたものと考えております。
 また特に、話題の新ジャンル市場に参入いたしました「キリンのどごし〈生〉」は4月の発売以来、店頭においてお客様の圧倒的なご支持により、6ヶ月後の9月までに早くも同市場(=その他の雑酒A)においてNo.1の売上(課税移出数量ベース)を達成することができました。
 その結果、ビール・発泡酒・新ジャンルの総市場がマイナスを強いられる中で弊社の商品群はトータルで著しい健闘を見せたものと思われます。これらはひとえに、消費者ならびに流通の皆様の熱いご支援・ご協力の賜物でありここに改めまして深く感謝申し上げる次第でございます。
 さて、弊社は本年を「中期経営計画」の総仕上げの年と位置付け、昨年来の好調な勢いを加速することに努めるとともに、これまで実施してきた開発確実型および高付加価値型のマーケティングを従来にも増して深化させ、環境変化に適応し非価格競争を戦える柔軟かつ強力な販売体制の実現に向けてさらに邁進いたしてまいります。
 特に、公正取引に基づく健全で持続的な発展は、引き続き業界全体の大きな課題であることに変わりはございません。弊社といたしましても粘り強くその取組みを継続してまいりたいと存じますので、何卒、皆様のご理解とご尽力を賜りますようよろしくお願い申し上げる次第でございます。

 

サントリー株式会社
代表取締役社長 佐治 信忠

 昨年を振り返りますと、経済界では、IT業界を中心とした様々なM&Aが最大の話題を集めたものの、いまだ議論が収束しておらず、わが国の資本主義社会が成熟していくためには、更により深い議論が必要とされていることを感じた1年でした。
 そうした中、日本経済は、全体では株価の続伸、企業の経常利益の最高額更新など回復基調にあり、酒類市場におきましても、定率減税、消費税、社会保障問題等に関する消費者の将来に対する不安感もあるものの、ようやく秋以降、回復に向かう足音が聞こえるようになっています。
 2006年、新しい年の幕開けです。
 本年は、新しい酒税制度が導入されるなど、成熟化した酒類市場を取り巻く環境には、益々大きな変化が起こるのではないかと思われます。更に、消費者の価値観の多様化、個性化が進み、より多様で魅力的な価値の提案が益々求められて来るものと思われます。このような状況下で、私どもは、公正取引の遵守を更に推進し、酒類業界の健全な発展のためにより一層努力を重ねるとともに、常に新しい価値の提案を積極的に行ってまいろうと考えております。
 ここ数年当社では、事業の「選択と集中」を進め、筋肉質な企業体質への転換を図ってまいりましたが、本年は、新たな成長を目指して飛躍するスタートの年にしてまいる所存です。
 すでに昨秋より、これまでビジネスモデルの違いによって2つに分かれていた酒類のカンパニーを、1つの酒類カンパニーに統合。より、総合的な提案力を可能にする体制を整えました。
 また、海外の国際酒類コンペティションで最高の評価をいただいた「響」「山崎」等のプレミアムウイスキーや「プレミアムモルツ」等が好評を博していますが、本当にいいものをお求めになるお客様のニーズに更に応えていくために、ビールと洋酒の事業部に、それぞれプレミアム戦略部を新設、高付加価値商品の開発や提案に注力していく体制も整い、本年からはより積極的な活動を展開してまいります。
 リスクを恐れず、創業以来、脈々と流れている「やってみなはれ」の企業家精神を発揮して、成長のための新たな価値創造に挑戦し続けたいと決意を新たにしております。
 また、コーポレートメッセージ水と生きるSUNTORY≠フ言葉どおり、本年も、地球環境を大切な経営資源の一つと認識して、環境保全活動に更に真剣に取り組み、企業としての成長を続けながら、社会に対しても誠実で信頼される企業、Growing & GoodCompany<Tントリーを実現したいと思います。
 何卒、本年も倍旧のご指導とお引き立てを賜わりますよう、心よりお願い申し上げます。