全飲連ニュース紙上セミナー 第2回00 生衛業の現状と展望 2 (財)全国生活衛生営業指導センター0
専務理事 小宮山健彦氏0この講演録は6月22日に、群馬県飲食業生活衛生同業組合総会及び、平成17年度全飲連ブロック会議で行なわれた小宮山健彦全国生活衛生営業指導センター専務理事の記念講演の要旨を編集部でまとめたものです。
前号では、講演の前半部分である生活衛生組合のなりたち、生衛業と生衛融資機関、生活衛生組合のキーワード「営業者の自主的活動の促進」、組合の存在意義を掲載させていただきました。
今回は、前号に引き続いて後半部分を掲載いたします。■いろいろな法律による制約への対応
皆さんが商売をされていく上で、関連のある法律はたくさんあります。その中でも最近大幅な見直しがあったものや、新しく制定された重要な法律があるのをご存知でしょうか。
例えば、「消費者基本法」の大幅な見直し、「PL法(製造物責任法)」「消費者契約法」「健康増進法」「個人情報保護法」。それから一番身近な、食品衛生法の大幅な改正に伴い「食品安全基本法」が制定されました。
「食品リサイクル法」は、平成18年度までに、食品廃棄物の再生利用等の実施率を20%に向上しなければなりません。再生利用等には肥飼料化などの再生利用のほか、ゴミの発生の抑制やゴミの減量が考えられます。ゴミを再生化する事業に業界としても取組みましたが苦戦しております。やはり個々人が取組むことができる、ゴミを出さない、ゴミの分量を減らす努力が重要になってくると思います。
「身体障害者補助犬法」も施行されました。飲食店に身障者が補助犬と同伴することができるようになり、補助犬が一緒に入店することを断ってはいけません。そうなると身体障害者の受け入れ態勢や施設のバリアフリーも考えなければなりません。
去年「消費税法」が改正になり、総額表示が義務付けられました。消費税が初めて導入された十数年前、我々は「外国は総額表示。日本でも総額表示に」と主張したときは、政府は外税でやるという決定をしました。ところが外税が定着した今、総額表示に変更。総額表示への変更はそれぞれのお店に負担がかかってくるのです。この時期に総額表示にしたことは、今後消費税を上げたいがためではないかと思ってしまいます。
また、食に対する消費者の不安を解消するため「食品安全基本法」が制定されました。この法律では、国は食品の安全性の確保に関する施策を総合的に策定・実施する。食品関連事業者は、自ら食品の安全性の確保について第一義的責任のあることを認識して、安全性を確保するために必要な措置を各段階において適切に行う責務がある。消費者は、食品の安全性の確保に関する知識と理解を深め、施策について意見を表明するなど安全性の確保に積極的に関わる。また「食品安全委員会」を設置し、科学的知見に基づき客観的かつ中立公正にリスク評価を行い、リスク管理機関はこの評価結果に基づき食品の安全性確保のための施策を策定、実施することとなっています。
パートタイマーの厚生年金適用問題も昨年取りざたされました。私個人的にはパートタイマーにも厚生年金を適用すべきではないかと思うのですが、業界の皆さんのお話しを聞くと、そう簡単なことではない。正社員と同じような待遇で働いているパートタイマーさんの適用はいいとしても、飲食店で忙しいときに、その場その場で効率よくパートタイムで来てもらう短時間、短期間のパートの方まで加入しなければならないのは、手続き的にも事業主の保険料の負担を考えてもどうかと。
この問題については、組合員の皆さんの署名運動をはじめとする業界全体の陳情により5年先送りになり、今後の検討事項ということになりました。今後、健康保険法の改正や介護保険法の改正もあろうかと思います。厚生年金を許してしまっていたら雪崩現象になってしまうことも考えられます。事業主の負担がどんどん増えていくのは目に見えています。
業界に係わるさまざまな法律への対応についてきっちり議論をし、業界の実態を踏まえたうえで、行政に言うことは言っていく姿勢でやっていきたいと思います。手かせ足かせをされ、自分たちのせいではないのに苦しめられるのでは困ります。■標準営業約款への取り組み―自己意識を高く持って
標準営業約款制度は、厚生科学審議会生活衛生適正化分科会で長い間審議し、今年の11月から登録開始となりました。審議会は学識経験、業界代表、それから消費者団体、経営者、弁護士など30名ほどで構成されています。理容・美容やクリーニングは25年前に導入し取り組んでいます。導入が遅いという指摘もありましたが、今回の麺と一般飲食の導入は、時代の要求に添った新しい標準営業約款を取れ入るわけです。さまざまな立場の方に集まっていただき審議を重ね認めていただいたこの約款制度、大変なことだと思います。そしてこれを一般飲食業、麺業が真剣に取り組んでいくという姿勢は高く評価されていいと思います。
この標準営業約款も、「営業者の自主的活動」の意識で取り組むことが重要です。誰かがやるだろうではなく、一人一人が「自分がやるのだ」という気持ちで取り組めば、必ずうまくいきます。
約款の資料の中に「標識等の掲示」の項があります。「登録を行った場合は、全国指導センターが定める約款標識を提示しなければなりません」と書かれています。「しなければならない」と言われると、やりたくなくなってしまうのです。しかし、これは「することができる」と読み替えてください。「標準営業約款をクリアした店として堂々とやっていい」とお墨付きをいただいているのですから。■原産地表示を推進しましょう!
また、標準営業約款の中に、主要なメニューについては原産地表示をするという項目があります。組合員の方から「産地表示は無理。我々は卸売りや仲買から材料を買うので、そこで産地を偽られたら我々の責任になる…」。しかし現在、生鮮食品は原産地表示が義務づけられています。輸入食品ももちろん表示されています。全てのメニューに対して表示をしろといっているわけではありません。できることからやりましょう。このことによって卸売り、仲買の人に対してもチェックが働き、問題になった原産地表示の不正などが減ることにもなるのです。飲食店各々が行うことが大きな力になり、消費者のためになるのです。
■国民生活に貢献しているという自覚を持って
我々業界は国民生活に密着しています。そして一人の営業者のよしあしが国民生活に重大な影響を与えることがあるのです。食中毒やBSE 、鳥インフルエンザ等…。どこかで怠ると、多くの人に迷惑がかかってしまうのです。
営業する傍ら、国民生活に貢献しているのだということを、肝に銘じて欲しい。営業で、仕事で商売をしているけれど、我々の業界は国民生活にとって必要不可欠、国民生活に大きく寄与しているのです。だから法律である意味守られているし、反面厳しい視線も受けているのです。生衛組合だけ、恵まれているのではないかと言われますが、それだけ我々の業界は国民生活に密着しており、組合は大変重要なものなのです。
これらの法律は議員立法、国会議員が出した法律です。国会議員は一般国民から選ばれた人です。その人が「生衛はこのような法律でいい」と言っているのだから、堂々としていいのです。ですからこの法律を大事にし、組合員はお互いを尊重し、組合は消費者を大事にする。「人にやさしい店づくり」を堂々とやっていきましょう。これからは、それをもっと国民一人一人にアピールしていくことが必要だろうと思います。