全飲連ニュース紙上セミナー 第1回00 生衛業の現状と展望 (財)全国生活衛生営業指導センター0
専務理事 小宮山健彦氏0今日お話しさせていただきますのは、「こんなに我々飲食業界は大変だよ」ということ。これは私がするまでもなく、もう皆さんの実感です。ところが「意外と恵まれているのではないか」というお話を申し上げて、「ではこれからどうしたらいいのか」というお話と、最後は「一緒に頑張りましょう」というお話をしたいと思います。
■生活衛生組合のなりたち
まず、生衛業の基本となる「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律」についてふれてみたいと思います。
昭和32年にこの法律ができました。どのようにしてこの法律ができたのでしょうか。昭和24年、中小企業等協同組合法という法律ができました。この法律で中小企業を全部カバーしていたのです。しかし我々生活衛生業は、一括りの法律にはあてはまらなかった。昭和20年代の後半から30年代にかけて、皆さんの先輩方が我々のための法律を作ってもらいたいと大陳情合戦を繰り広げました。そのときの柱は「衛生水準を維持する」ということと、「国民のために一生懸命役立ちたいのだ」という主張をしました。また一方で、「我々は国民生活に密着しているので助けてもらいたい。過当競争は嫌だ」という主張をしています。それらが受け入れられ、議員立法で昭和32年に成立しました。
中小企業等協同組合法が十分であれば、この法律もなかったし、我々の組織もなかったかもしれません。これはある意味、先輩方に先見の明があり、やはり我々にはこの法律が必要であったからだ、ということだと思います。必要だと切実に認め、武器も何も持たない零細企業の集まりの我々が団結し、組合を組織し、陳情や要望を仕事の傍ら続けたのです。そのおかげで今のこの大きな組織ができ、法律ができたのです。■生衛業と生衛融資機関
この秋、国民生活金融公庫の入っている八つの政府系金融機関の見直しが予定されています。大きな問題です。 少し前までは環境衛生金融公庫という、我々単独の金融機関がありましたがこれが統合され国民生活金融公庫となり現在に至っています。
生活衛生融資の貸し付けは絶対に残すべきです。
ではどうしたらいいか。
昭和32年に環境衛生の法律ができ、昭和42年、環境衛生金融公庫ができました。それには相当な努力があったのです。当時、農林従業者には農林中央金庫があり、商工業者には商工組合中央金庫、そして我々には国民金融公庫がありました。ところが実際国民金融公庫ではなかなか貸してくれない。町の商工組合、商工金庫に行っても、「水商売はダメ」と言われてしまう。だったら自分たちの金融機関を作ろうということになりました。総決起大会は渋谷公会堂に2万人、日本武道館に3万人集め、国会議員も200人参加。また50〜60万人もの署名を集めました。先人の知恵と情熱と行動力。「どこもダメ、誰もダメ…」と言っていたのではないのです。さまざまな運動を繰り広げ、5〜6年の闘争の結果としてできたのが環境衛生金融公庫です。
そのような経緯で作られた環境衛生金融公庫、政府系金融機関としてひとくくりで考えられては困ります。ではこの指し詰まった問題に我々はどうしたらいいのか。生活衛生議員連盟の国会議員さんにお力をお借りしたり、皆さんが県庁に出向き県知事に必要性を説いていただく。一人一人が強い気持ちで「生衛への融資を続けてもらいたい」と強く働きかけることが必要なのです。■生活衛生組合のキーワード「営業者の自主的活動の促進」
この生活衛生組合にはいくつかの重要なキーワードがあります。1つは「衛生水準を維持する」こと。衛生水準は最大のキーワードであり、維持するということはたいへんなことです。しかし我々は行わなければならないのです。
そしてもうひとつ、今日皆さんに強く言いたいのは「営業者の自主的活動の促進」についてです。飲食業界に携わる我々は、国民生活に寄与しているという意識がやや薄いのです。また、国がやってくれる、組合に入れば、組合の人たちがやってくれる。会費を納めていますから当然の要求ではありますが、ちょっと違うのではないかという思いが私にはあります。自分が頑張らなくてはだれも助けてくれないのです。■組合の存在意義
組合はなぜあるのでしょうか。そして組合員はなぜ減っているのか。医師会や歯科医師会、どんな団体でも組合員は減っています。これから先もどんどん減り続けていくでしょう。では、どうしたらよいのでしょうか。
まず、どうして減るのか、真剣に考えてもらいたいと思います。理由は幾つかあると思いますが、「組合に加入しているメリットがないから」という理由を多く聞きます。何に対してメリットがないのか。払っている会費のわりにメリットがない、ということなのでしょうか。メリットがないから入らない、メリットがないから出ていくという人は、組合に入らなくてもいいでしょう。
そして、今いる仲間を大事にして一緒に頑張りましょう。実は、我々は法律や組合で守られており、飲食業を取り囲むこの環境は、けっこう恵まれているのです。ところが中にいるとそのこと自体気づかなかったり、忘れてしまっていたり…。気づこうとしていないのかもしれません。一人一人がこのことをきちんと認識し、自覚すればメリットに気づき、組合の意味は自ずとわかるはずなのです。 組合は「人が基本」で成り立っています。「相互扶助」が組合を貫く基本の精神なのです。相互扶助とは、「組合自身の利益追求ではなく、組合員に直接事業の効果を与えることが目的で、組合の事業に役立つ、補完することが目的」なのです。
進化論を説いたダーウィンの「生存競争説」は、生存競争をすることによって微生物や動物、植物は進化していくというものです。ところがある学者がこれに真っ向から反対して主張しました。「生き物や社会の進化は、生存競争や競争によるものではなく、自発的に助け合うことによって、進化をしていく。相互扶助である」といっています。
組合は、生存競争をやるのではないのです。自発的に助け合うこと。自発的に自主努力することが大事なのです。そして、何より事業の補完は当たり前ですが、組合で大事なことは、人間を尊重する、お互いを尊重するということです。
生存競争は悪いことではないです。大事なことですが、組合の基本は、お互いに助け合いお互いを認め合うということ。したがって組合にメリットがなくて入らないという人は、そういう気持ちがない方であろうと思います。メリットは与えられるものではなくて、自ら作り上げるものなのです。※この講演録は6月22日に、群馬県飲食業生活衛生同業組合総会で行なわれた小宮山健彦全国生活衛生営業指導センター専務理事の記念講演の要旨を編集部でまとめたものです。今号では、講演の前半部分を掲載し、次号にて後半部分を掲載いたします。