2005年 新春ミニ特集2005年は食育元年。
食育の推進は
新しい食文化の創造を目指す地域の飲食店の役割
国民運動として展開される食育
食育は、すでに明治時代には、知育、体育、才育、徳育と並ぶ重要な教育の原点であったと言われています。食育は、人間の心と身体の健康を増進し、豊かな人間性と健全な食生活を目指すもので、消費者の食に対する考え方を育て、その選択を手助けするとともに、食卓から食材の生産現場まで顔の見える信頼関係を構築することによって、食糧自給率の向上や環境と調和した持続的な食糧の確保・生産にも貢献しようとするものです。
BSE(牛海綿状脳症)の発生に端を発し、食の安全・安心が大きな国民的な課題となってきました。また、地元の食材は地元で消費する地産地消やスローフードのような産地の特色を生かした食のあり方も大きな流れとなっています。
さらに、健康づくりや自然の恵みへの感謝、食を提供する人々の感謝なども、食育という概念に含まれるテーマとなっています。
今まさに、国民一人一人が食について考え、意識を高め、食・子育て・教育・医療・地域振興等の専門家とともに、食育に関わる実践的な活動が一大国民運動として展開されています。
そのような状況の中で、今年の4月から小中学校などで、子どもたちに食の教育を行う栄養教諭制度がスタートし、まさに全国で食育が本格的に動き出す年になります。この制度は、朝食を食べない子どもが増えるなど、食生活の乱れが問題になる中、子どもに食の自己管理能力をつけさせるのが目的で、大学などに栄養教諭養成課程が新設されるほか、現在、学校栄養職員として働いている栄養士は、一定の講習を受けることにより栄養教諭の免許を取得できます。
食育基本法案も国会に再提案
食育基本法案も、昨年に続いて国会に提出される見通しです。同法案は、食育を知育、徳育、体育と並ぶ重要な教育と位置づけ、国民全体で推進するとしています。食育基本法は、学校や保育所、施設等の食育推進。家庭における食育推進。地域における食育推進。生産者、消費者との交流の推進。食文化の継承の為の活動などが盛り込まれ、法律が制定されると、子供達、地域、高齢者の食事の育成が検討され、原材料の生産における農産物、家畜等の生産における化学肥料の使用や、加工作業工程等が開示されることとなります。
地域の食育を担うのは地域の飲食店!
核家族が進み、家庭での食のあり方が大きく問われていることも、食育が大きくクローズアップされた理由のひとつです。また家庭料理や伝統的郷土料理の継承も、家庭だけでは難しいといえます。
そのような状況の中で、地域の飲食店が果たす役割は大きいといえます。食のプロとして、日常の営業活動の中で展開していくことが求められています。安全で健康でバランスのとれた美味しい食事の提供や地産地消の普及を図る意味でも、その役割が期待されています。
また、お年寄りや未来ある子供たちが楽しく暮らすには「安心・安全な食」が不可欠です。安心・安全な食からは、健康な体や心が育(はぐく)まれます。体や心が健康であれば、家庭も、まちも、経済も元気が出ます。
食育は知育・体育・才育・徳育の基礎
食育は、人間が生きていくために最も重要なものです。社会の高度化や地域社会や家族関係の変化、そして、情報化・IT化の進展など目まぐるしく変化する社会のなかで、私達は毎日の食の大切さを忘れがちです。また、自然の恵みのもとに、古代から育まれてきた地域色・文化の香りあふれる豊かな日本の「食」を、いま再発見し直さないと、失われる危機に立っています。「食の安全」への国民の信頼が大きく揺らいだ後、スローライフやスローフードや地産地消に関心が高まったのも、そのことに気がつき始めたからです。
全飲連は、その活動方針として、安心・安全・地域・健康というキーワードを掲げ、新しい食文化の創造を図ることを宣言しています。食育の推進はまさに、これを体現するものと言えます。食育基本法が制定されると、国、県、市町村に「食育推進会議」が設置されることになります。
食育の単位として一番ふさわしいのは「校区」だといわれています。小学校区で豊かな「食育推進計画」をつくっていく。それは子どもの教育の計画にとどまらず、その地域や街をどうしていくかという基本計画にもつながっていくはずです。
「地域の食文化の創造」が「食育」を推進し、地域の「食育」が豊かで個性的な「家庭の食卓」を育んでいくことができるような、飲食店の食育に対する取組みが必要ではないでしょうか。標準営業約款はまさに食育推進の基本
食育は人間が生きる源
現在、全国生衛営業指導センターと全飲連が取り組んでいる標準営業約款制度は、この約款に盛り込まれている項目は、いわばお客様(消費者)から見れば常識。これがクリアーできていないことでは、消費者の信頼を得られないと言えます。
ここ数年の食をめぐる環境や時代のニーズは、より質の高い水準を求めているとも言えます。
その意味で、今回導入される、標準営業約款制度は飲食店営業の最低限のベーシックな基準であると言えます。時代やお客様(消費者)の意識や価値観が多様化し、その意思の方が先行しているのが実情ともいえます。
地域において食育を推進し、その中核に飲食店がなっていくためには、先ずこの標準営業約款制度に登録していくことが、地域の食育を担える資格を得ることだとも言えます。そしてさらに、時代や消費者のニーズに応え、よりグレードの高い飲食店づくりをめざし、地域の食の「範」となるような存在になるような営業活動や組合活動を展開していかなければなりません。
そういった意味で、標準営業約款制度も食育も、受動喫煙防止対策も、さらにユニバーサルデザインの店づくりも、食品リサイクルも、宅配給食サービスも、トータルなものであり、新しい食文化を地域の中で、「どうつくっていくのか」という課題なのです。
地域に根ざした飲食店づくりを
地域の飲食店がめざす店づくりは「楽しい食事が元気をつくる」「もっとおいしく安心に」これにつきると思います。そして、選べる楽しさを提供し、健康を考えたメニューづくり、ゴミを出さない工夫や料理づくり、安心を与えるキッチンづくり、出来たてを実感してもらう食事の提供。きれいな空気のある空間などをコンセプトにして、地域の食づくりのプロとして、信頼される店づくりをしていくことが求められています。