2005年 酒類企業社長年頭挨拶

酒類企業社長から年頭挨拶が全飲連に寄せられましたので、その概要を抜粋して掲載させていただきます。

アサヒビール株式会社
代表取締役社長 池田 弘一

 昨年酒類業界では、明暗の一年となりました。7月までは景気の回復基調に加え猛暑効果もあり、酒類消費は堅調に推移しましたが、8月以降は相次ぐ自然災害の影響もあり伸び悩みました。またカテゴリー別で見ると、ビール回帰の基調がより鮮明となってきましたし、乙類焼酎・低アルコール飲料も好調に推移しております。一方で、一昨年増税された発泡酒は苦戦を強いられ、ワインも「ボージョレ・ヌーヴォ」は過去最高の輸入数量を記録したものの、市場全体は前年を下回る結果にとどまりました。
 本年も酒類市場全体の消費は伸び悩む中で、カテゴリー間で伸びる・伸びない、同じカテゴリーでもブランドにより伸びる・伸びないといった二極化が進むと考えられます。
 こうした状況の中で、2004年、弊社は「挑戦と創造」によるグループの新たな成長を目指して第二次グループ中期経営計画をスタートさせました。2004年は総合酒類事業の新ステージと位置づけ、「成長と効率」「お客様からの信頼」「社会からこの信頼」を柱とした経営を進め、お客様の信頼に最もお応えすることができる企業ブランドの構築に努めました。
 ビール・発泡酒では、ブランド価値の向上策の一つとして「鮮度」に取り組み、工場製造後出荷までの日数は「スーパードライ」で三日台、「本生」で五日台を達成いたしました。併せて昨年に引き続き樽生ビールの品質向上にも努めました。これらの結果、業界全体が苦戦する中で、ビール・発泡酒ともに前年実績並みを確保することができました。
 焼酎・低アルコール飲料・洋酒・ワインにおいても、着実に成果を上げることができました。焼酎で「かのか」「一番札」、低アルコール飲料で「カクテルパートナー」「旬果搾り」、洋酒で「竹鶴」、ワインで「バロン・フィリップ」「ルイ・ラトゥール」など、各カテゴリーの中核ブランドで売上を伸ばすことができました。
 海外事業では、五月に北京ビールの新工場からの出荷を開始し、日本で培った生ビール製造技術を生かした新商品は、北京のお客様から高い評価を頂きました。
 さて本年は、中期経営計画に基づき成長戦略を強力に推進してまいります。「お客様満足」を追求した新価値・新需要の創造に挑戦し、成長に向けた取り組みを強化いたします。また、お客様・市場の動向をよく見極め、地域密着の営業をより一層進めてまいります。
 本年一月から導入いたします新取引制度の定着に向けて、強い決意で臨み、卸・小売の皆様と連携して取り組んでまいります。ご理解・ご協力を賜りたく、お願い申し上げます。

キリンビール株式会社
代表取締役社長 荒蒔 康一郎

 昨年弊社におきましては、年初にキリングループの「2004年―2006年・中期経営計画」を発表し、「うれしいを、つぎつぎと。」の企業スローガンの下、グループをあげて?キリンブランドの価値向上?に取り組み、開発・提案型の強い企業グループへの質的転換を推し進めてまいりました。
 ビールにつきましては、「一番搾り」のリニューアル、チルドビールのラインアップの充実などにより、お客様が求めるビール本来の価値の提案・浸透に注力いたしました。
 発泡酒では、長年培った独自の技術力に裏付けられた「小麦」「やわらか」など、独創的な新商品を発売し好評を博すことができました。尚、年末には本年から実施する「淡麓」シリーズのリニューアルを発表いたしました。このような施策により今後とも、弊社の発泡酒はカテゴリーNo1としてそのブランド価値をますます高めてまいります。
 また、缶チューハイ「氷結」は「バレンシアスパークリング」「パイナップルクーラー」「グリーンアップル」「ラ・フランス スパークリング」の四フレーバーを次々に追加することによって、お客様の支持を拡大しさらにその地位を揺るぎないものにすることができたと確信いたしております。
 2005年の酒類市場は、規制緩和による業態・売り場の多様化や酒類カテゴリー間のボーダレス化がさらに進行することが予想されます。こうした中にあって、弊社といたしましては2年目となる「2004年―2006年・中期経営計画」の実現に向け一貫した取り組みを推進してまいります。とりわけローアルコール・ビバレッジ市場を中心とした総合酒類事業の展開におきましては、国内酒類事業の強化を最優先の課題とし事業規模の拡大を目指してまいります。すなわちキリンブランドの価値の向上を目指し、積極的な商品政策を実行する一方、営業部門の組織力の改革・強化に努め、店頭のマーチャンダイジングならびに料飲市場における品質維持・向上を担うキリンコミュニケーションステージ社との連携を深めることによって、開発・提案型の活動の質的レベルをさらに高めてまいりたいと存じます。
 さてこの一年間、弊社が強い決意の下、率先して本年からのオープン価格制度の導入に向けてその準備を進めてまいりましたことはご承知のことと存じます。これは酒類市場における公正な取引環境を整備し、将来に繋がる健全な酒類業界を実現していく上で、必要不可欠な取組みであります。このような改革には多くの困難が伴うことも予想されますが、なんとか皆様とご一緒にそれらを乗り切り、新しい実りあるステージを切り開き業界の繁栄を招来したいと存じます。何卒引き続き皆様のご理解とご尽力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

サントリー株式会社
代表取締役社長 佐治 信忠

 昨年は、世界の各地で紛争やテロが繰り広げられる中、我が国では自衛隊のイラク派遣が開始され、様々な論議が沸き起こる一方で、スポーツの祭典アテネオリンピックでは、世界のトップレベルの人々が競う姿に様々な感動を覚えました。また、解決の道を模索し続ける北朝鮮拉致問題、相次ぐ企業の不祥事、異常気象による自然災害の多発、定率減税、消費税、社会保障問題等に関する消費者の将来に対する不安感もあり、緩やかな景気回復基調にあると言われている中で、未だ力強い個人消費に至らない経済等、我が国を取り巻く社会経済環境には、まだまだ厳しいものがあることを実感した一年ではなかったかと思います。私どもの酒類業界におきましても、様々な取り組みを進めてまいりましたが、厳しい状況にあったことには変わりなかったように思います。
 いよいよ2005年、新しい年の幕開けです。本年は、ビール・発泡酒の新取引制度がスタートし、また、酒税制度の全般的な見直しの検討が開始されるなど、成熟化した酒類市場を取り巻く環境には、益々大きな変化が起こるのではないかと思われます。更に、消費者の価値観の多様化、個性化が進み、より多様で魅力的な価値の提案が益々求められて来るものと思われます。このような状況下で、私どもは、公正取引の遵守を更に推進し、酒類業界の健全な発展のためにより一層努力を重ねるとともに、常に新しい価値の提案を積極的に行ってまいろうと考えております。
 当社は、本年より東京のお台場に竣工した新社屋を新たな拠点とし、新ロゴタイプの社名と共に力強く企業活動を進めてまいります。本年を当社の21世紀の?新創業?の年と位置付け、リスクを恐れず、創業以来、脈々と流れている「やってみなはれ」のアントレナーシップ、企業家精神を発揮して、成長のための新たな価値創造に積極的に挑戦し続けたいと決意を新たにしております。
 また当社のビール・発泡酒の仕込みにはすべて天然水を使用してまいりますが、コーポレートメッセージ?水と生きる。SUNTORY?の言葉どおり、本年も地球環境を大切な経営資源の一つと認識して、環境保全活動に更に真剣に取り組み、企業としての成長を続けながら、社会に対しても誠実で信頼される企業、?Growing & Good Company?サントリーを実現したいと思います。
 本年の干支は酉です。思い切り羽を広げて、より力強くより高く羽ばたいていくことが出来るよう、新しい価値の提案を積極的に行い、皆様と共に豊かな未来を切り開いてまいりたいと思います。
 何卒、本年も倍旧のご指導とお引き立てを賜わりますよう、心よりお願い申し上げます。