求められる多様なサービス
安全・安心・お手ごろ・くつろぎ・やすらぎ

飲食店に関する消費者の意識調査結果報告(財)日本消費者協会

 大きく変動している経済社会の中で、消費者の意識も変化している。女性の社会進出は一般化し、活動的な高齢者・障害者が増えている。このような社会状況の中で、消費者は何を基準として飲食店を選択しているのか、消費者が飲食店に何を考え何を期待しているのか、消費者の意識の実態を調査するため、「飲食店に関する消費者の意識調査」を行った。
 調査対象は一般公募した家族数4人以上のモニター300人及び一般消費者百人の合計400人。「飲食店」の調査の範囲は、食堂、レストラン、定食屋、天ぷら・揚げ物・うなぎなどの専門店、アジア系料理店、焼肉店、ホテルの食堂などとした。(そば、うどん店、すし店、中華料理店、料亭、喫茶店は含まない)。調査期間は平成14年2月5日〜18日。
 

■調査結果

最もよく利用するのは、いろいろなメニューがある食堂

問1 あなたが最もよく利用する飲食店はどのような店ですか。(単一回答)
 「いろいろなメニューがある食堂」が42.9%と圧倒的に多く、次いで「イタリア、フランスなどの西洋料理店」が20.3%である。「その他」はすべて、「ファミリーレストラン」であり、全体的にも8.8%を占めた。
 限られたメニューしかない飲食店より、多様なニーズを満たしてくれる豊富なメニューのある飲食店を選んでいる。家族で団欒の時に食事をするためにファミリーレストランを利用している人が多い。最近、増えてきた「アジア系料理店」は少なく、まだ「最もよく利用する店」にはなっていないようだ。

利用頻度は1カ月に数回が約半数

問2「飲食店」をどの程度利用していますか。(単一回答)
 「1カ月に数回」が54.3%で30〜40代が多く利用している。次いで「滅多に利用しない」が29.0%である。
 利用の傾向として「ほぼ毎日利用する」に女性が少なかったこと以外、男女差、年齢差、地域性に大きな差はなかった。

店を選ぶ基準は「味がよい」が61.4%

問3「飲食店」を選ぶ時、何を基準にしますか。
(複数回答3つ)
 「味がよい」が回答数386人に対し、61.4%(237人)を占め最も多い。次いで「店がきれいで清潔感がある」が50.3%、3位が「味、サービス、価格がほどほど」で41.5%だった。
 複数回答で優先度の高いもの3つをあげてもらっているため、飲食店に求められている最低条件が上位になった。「老舗」は少なく、2.3%で名前だけでは選択されない時代になったといえる。「調理・栄養の知識を持つ調理師がいる」が1.8%で最も少なかったが、消費者にはどの店に調理師がいるのかわからず、その効果が見えないためではないだろうか。
 結果として、「味がよい」や「清潔感」を重視して利用する飲食店を選んでいるのではないか。

利用目的は「家族の団欒」が38.7%

問4「飲食店」を利用する時は、どんな時ですか。(単一回答)
 「家族の団欒」が38.7%で最も多く、次いで「友人に会う時」が22.9%で、「外出時」が21.0%になっている。「家族の団欒」に利用するは、男女、年齢、地域性を問わず、最も多い。
 但し、50代のみ「友人と会うとき」が多くなっている。子供が成長し、度々家族で食事に行くことが少なくなるのだろう。

利用金額は1,000円〜1,500円が75.3%

問5「飲食店」を利用する時の利用金額はいくらですか。(単一回答)
 「1,000円〜1,500円」が75.3%で過半数であった。飲食店を利用する場合の限度額は5,000円のようである。男女、年齢、地域性の差はなかった。
 この設問への回答のみ、無回答者が386人中、200人もあった。利用金額が一定していないためだと思われる。

一番の不満は注文してからもってくるまでの時間

問6「飲食店」を利用して不満に思うことは何ですか。(複数回答3つ)
 「注文してからもってくるまでに時間がかかる」が回答者数386人のうち246人で最も多く、次いで「値段が高い」で48.7%となっている。3位は「従業員の態度が悪い」で、42.5%である。「その他」は3.6%であるが『子供たちへの配慮』が半数で、そのほかでは『禁煙対応』、『店内清掃』があげられている。
 飲食店の形態によって、注文品が来るのを待てる時間の許容範囲があるのではないだろうか。この店なら5分とか10分と消費者は期待していて、思いがけず待ち時間が長かったり、後から注文した客の料理の方が先に届くと、自分のはどうなっているのかといらいらする。注文をとったときに待ち時間の目途を言ってくれると不満が少なくなるのではないか。
 また一般的に、日本の飲食店の価格は高いと感じられているのではないか。「従業員の応接態度が悪い」と感じた人が半数近くいたことに、業界の反省が必要ではないだろうか。

メニューの表示に望むのは価格、食材の産地

問7「飲食店」のメニューの表示に何を望みますか。(複数回答3つ)
 最も多かったのは「価格」で回答者数の76.9%を占める。次いで「料理のサンプル、または写真」が59.1%、「料理の内容」の49.5%である。「カロリーの表示」の要望も30.8%あった。男女、年齢、地域性の差はほとんどなかった。

問8 使用食材についてメニュー表示などに何を表示して欲しいですか。(複数回答3つ)
 「産地」は67.1%、「栽培方法(有機、無農薬、露地等)」は65.3%で、「遺伝子組換え」は62.3%、「天然と養殖の別」は54.7%である。しかし、「必要としない」も10.9%あった。
 「産地」表示の不正表示事件が次々と明るみに出た直後のアンケートにもかかわらず、表示の要望は多かった。

求められるサービスは「分煙(禁煙席)」が79.5%

問9「飲食店」に欲しいサービスは何ですか。(複数回答3つ)
 「分煙(禁煙席)」が79.5%で最も多く、次いで「少食用のメニュー」が66.6%、49.5%が「成人病予防のメニュー」である。「宅配サービス」の要望も33.2%あった。また「その他」は8.8%であるが、その内半数が『子供への配慮』、残りは『個室的な雰囲気』、『従業員の接遇の向上』である。分煙(禁煙席)に対する要望は強く、飲食店も設備対応が急務といえよう。高齢者や子供への対応を求める要望が多かった。

充実が望まれる椅子やテーブルのサイズにゆとり」

問10 「飲食店」の店舗、施設で充実して欲しいものは何ですか。(複数回答3つ)
 「椅子やテーブルのサイズにゆとりを」が69.9%で、最も多い。次いで45.3%で「店内の通路を広く」、「座敷に足を下ろせる掘り炬燵式座席が欲しい」が42.5%である。「トイレを広く」も35.5%である。なお、「その他」が11.7%あり、その内『子供への配慮』が半数で、残りが『禁煙への配慮』、『個室的な雰囲気』を要望している。
 スペース的にもゆとりがあり、くつろげる店舗が求められている。男女、年齢、地域性の差はなかった。
衛生・安全面では「安全な食材を使う」に73.1%
リスクマネージメントにも高い関心

問11「飲食店」の衛生・安全面でさらに充実して欲しいものは何ですか。(複数回答3つ)
 「安全な食材を使う」が最も多く73.1%で、次の「食材、食器はきちんと洗って欲しい」は61.4%だった。続いて「トイレを清潔に」が39.6%、「調理場を清潔に」は38.3%であった。食品を巡る様々なトラブルから、食材の安全性に対する関心が強い。飲食店として営業の大前提である衛生管理が不十分であることが顧客の目にも分かる店が多いのではなかろうか。傾向としては男性が「トイレを清潔」に、女性は「調理場を清潔」にウエイトが置かれていた以外は、男女、年齢、地域性の差はほとんど見られなかった。

事故対応のマニュアル化が必要

問12「飲食店」で事故にあったことがありますか。どんな事故でしたか。(複数回答3つ)
 「事故の経験がない」が回答者数の74.6%を占める。事故の経験のあった人は「お腹をこわした」が回答者数の10.9%あり、「衣類を汚された」が10.6%であった。「その他」は、異物混入がすべてで3%であった。事故の経験をした人が4人に1人いることになる。
 しかし、「お腹をこわした」の因果関係は難しく、店舗による重大な事故は少ないといえよう。

問13 事故にあった時の店の対応はどうでしたか。(単一回答)
 事故にあった人の44.0%は「謝罪の言葉があった」としている。「損害の実費を支払ってくれた」が15.5%あった。しかし、7.1%は「店からは何も無かった」であり、「店に何も伝えなかった」は28.6%である。

問14 事故にあったときの損害賠償についてどのようなことを望みますか。(単一回答)
 「損害保険を掛けるべきだ」は41.3%を占めた。「損害賠償の基準のマニュアル化」も37.7%が望み、「損害の補償の有無についての明示」の要望も19.2%あった。飲食店は日頃事故の根絶を目指すとともに損害賠償責任の保険に加入するなど、リスクマネージメントが必要であろう。