農林水産省・厚生労働省が主導する
省力化投資推進プラン(飲食業)

 農林水産省・厚生労働省は、顕著な人手不足と低い労働生産性を改善するため、2029(令和11)年度までに飲食業界の労働生産性を35%向上させる意向を表明。実現に向けた「省力化投資促進プラン」を策定しています。

多面的な促進策
〇日本政策金融公庫における「設備投資への資金繰り支援」や「中小企業省力化投資補助金」、生産性向上への支援を含む「賃上げ支援助成金パッケージ」等を総動員。
〇数軒の店舗を展開している中小の飲食事業者等を、省力化投資促進等を通じて中堅規模へと成長を促進。

サポート体制の整備・周知広報
〇本プランを基本に、人手不足や低い労働生産性を改善するための業態別ガイドブックを令和7年度中に作成。
〇優良事例の収集・横展開、生産性向上に資する取組を積極的に行っている事業者を表彰。
〇農林水産省と厚生労働省が連携し、業界団体等を通じた情報提供や相談対応を実施。
〇専門家による経営診断、省力化投資へのアドバイス、補助金や税制の活用等について、伴走型の相談支援を実施。

■投資促進施策①
日本政策金融公庫による資金繰り支援
◇振興事業貸付

(実績:約850件/年 ※うち飲食業は約47%)
 生活衛生関係営業(飲食業など16業種)について、都道府県知事による振興計画の認定を受けている生活衛生同業組合の組合員である場合に、低利の特別利率を適用した設備資金、運転資金を融資。
◉貸付限度額:1億5000万円(飲食業)
◉貸付利率:組合員に対する軽減した特別利率を適用
◉貸付期間:設備資金/20年以内・運転資金/7年以内

◇賃上げ貸付利率特例制度
(実績:約1100件/年 ※うち飲食業は約66%) 従業員の賃上げに取組もうとする事業者に対し、金利負担軽減により、賃上げの取組みを促進。給与等支給額が最近の決算期と比較して2・5%以上増加する見込みがある者を貸付対象とする貸付けを行う場合において、各融資制度に定める貸付利率からマイナス0・5%の利率を控除するもの。

■投資促進施策②
◇中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しする施策の一つとして、中小企業庁では中小企業省力化投資補助金(3000億円、令和6年に再編)、IT導入補助金(3400億円の生産性革命事業の内数)を措置している。
◇令和5年度補正で措置した中小企業省力化投資補助金「カタログ注文型」では、人手不足解消に効果がある汎用製品を「カタログ」に掲載し、中小企業等が選択して導入することで、簡易で即効性がある省力化投資を促進している。

■飲食業における取組事例

(大規模事業者だけでなく、中小の事業者においても省力化の取組が進んでいる)

◇スチームコンベクションオーブンの導入による省力化(カフェ)

スチームコンベクションオーブンの導入により、フライパンでは1度に2~3個しか作れなかったハンバーグを一気に20~30個仕込めるようになったほか、同時に複数の調理が可能になり回転率もアップ。また、調理中はコンロの前で待機する必要が無くなり、空いた時間をサービス向上や新メニュー開発に充てられるようになった。

◇配膳ロボット導入による回転率アップ(ラーメン店)

ホールスタッフの人手不足と従業員の労力軽減に向けて配膳ロボットを導入。ロボット導入に併せて、座敷だったスペースは全てテーブル席に改装した。これにより、子供や高齢者も利用しやすい店舗となっている。また、回転率が上がったほか、スタッフが配膳以外の仕事に時間を割くことができるようになりサービス向上にも寄与している。

◇調理ロボットの導入による自動化(中華料理店)

食材や調味料の計量から調理、洗浄までの一連の工程を自動化。回鍋肉や麻婆豆腐、野菜炒め等の炒め料理を毎時30食/台の速さで提供可能に。また、調理中は他の作業を行うことが可能となるほか、ガス火調理を電磁調理に変えることで暑さを解消。従業員の労働環境の改善にも寄与している。

◇セルフオーダーシステムの導入によるコスト削減(焼肉店))

客自身が端末で注文するセルフオーダーシステムを導入。オーダーミスが無くなるとともに売上計算も不要に。3~4人で回していた店舗管理を2人で対応できるようなった。また、紙のメニューが不要となり印刷コストを削減。さらに、メニューの入れ替えや価格改定が迅速化し、個客満足度のアップにもつながっている。