2023年 酒類企業社長年頭挨拶
酒類企業社長から年頭挨拶が寄せられました。
紙面の都合上、やむなく割愛させていただいた部分があります。
すべてのお客さまに、
最高の明日をアサヒビール株式会社
代表取締役社長 塩澤 賢一新型コロナウイルス感染症との共存が3年目を迎えた昨年は、ワクチン接種や検査等の医療提供体制が整ったことで、社会経済活動の正常化に向けて大きく進んだ一年となりました。10月には海外からの入国規制が緩和され、世間も賑わいを取り戻しつつあります。一方で、原材料・燃料価格の高騰や急速な円安の影響により、日本経済が大きな影響を受ける1年でもありました。
このように依然として先行きが不透明で将来の予測が困難な時代だからこそ、私たちは変化の兆しを見逃さず捉え、これまで培ってきた強みや技術を生かし、お客さまの日常が明るくなるような価値を一丸となって創出することで、日本を元気にしていきたいと考えています。
当社はビジョンである“すべてのお客さまに、最高の明日を。”の実現を目指し、主力ブランドの価値向上とスマートドリンキングの推進を通じて、お客さま一人ひとりにとっての豊かなライフスタイルの提案に取り組んでまいりました。
昨年、主力ブランドの「スーパードライ」は1987年の発売以来、36年目で初めてフルリニューアルしました。特長である“辛口”のコンセプトはそのままに、中味の処方を変更し“キレのよさ”は維持しながら“飲みごたえ”を向上させました。開栓するときめ細かい泡が自然に発生し、飲食店のジョッキで飲む樽生ビールのような味わいが楽しめる『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶』は生産体制を強化し、昨年7月から通年販売を開始しました。10月からは新たなラインアップとして『アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶大生(だいなま)』を発売し、より満足感を得られるワクワクとおいしさの提供に取り組んでいます。
ビールの第二の柱を目指す「アサヒ生ビール」ブランドでは“マルエフ”の愛称で親しまれる『アサヒ生ビール』に加え、新たに『アサヒ生ビール 黒生』を2月に発売しラインアップを強化しました。“マルエフ”と“黒生”を1:1で混ぜる「ハーフ&ハーフ」や、2:1で混ぜる「ワンサード」などの楽しみ方を提案しています。
2023年は酒税改正によりビールが減税となり、更なるビール市場の活性化が期待できます。さらに当社が「ワールドワイド・パートナー」を務める「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」の開催が予定されており、大会オフィシャルビールである「スーパードライ」を通じて、“気持ち高まる瞬間”をお客さまと分かち合っていきたいと考えています。
サステナビリティの取り組みでは「責任ある飲酒」「環境」「食の安全・安心」「コミュニティ」「人」の5つを重要課題とし注力しています。「責任ある飲酒」では、飲む人も飲まない人もお互いが尊重し合える社会の実現を目指す「スマートドリンキング」をさらに推し進めるべく、“微アルコール”ワインテイスト飲料の「ビスパ」や期間限定商品を新たに発売し、お客さまの選択肢の拡大に取り組みました。新たにスマドリ株式会社を設立し、情報発信拠点として東京・渋谷に『SUMADORI-BAR SHIBUYA(スマドリバーシブヤ)』をオープンしました。アルコール分0.00%、0.5%、3.0%のドリンクを100種類以上楽しむことができるなど、お客さまがそれぞれ自分の好みやペースで心地よい時間過ごせるよう提案していきます。またBARを起点として渋谷区にキャンパスがある大学と連携し、適正飲酒やスマドリに関するワークショップを開催することで、新たな商品やサービスの開発、環境づくりを進めています。
喫緊の課題となっている「環境」に対する取り組みでは、事業活動における環境負荷低減を目指すとともに、独自の技術や知見を生かした取り組みを進めています。従来使用している6缶パック資材と比べ、紙の面積を約8割削減した日本初の新資材「エコパック」は本年から本格展開を予定しています。昨年は名古屋工場に新たな太陽光発電設備を導入しました。2029年までに国内全工場のカーボンネガティブ達成を目指し、取り組みを加速させていきます。
人と人がつながる喜びを届け、
お客様とあたたかな絆を育むキリンビール株式会社
代表取締役社長 堀口 英樹謹んで新年のご挨拶を申し上げます。また、旧年中のご愛顧と格別のご支援に心から厚く御礼を申し上げます。
昨年は、長期化する新型コロナウィルスと共存する生活が模索されましたが、現在はインバウンド需要の回復に向けた政策の中、長期に多大な影響を受けた第3次産業や、経済・社会全般に明るさが戻り始めています。それでもコロナ禍の解消はまだ遠く、個人や企業にはさまざまな環境変化に対峙し乗り越える努力が必要です。海外での地政学的リスク、急激な円安進行から、国内経済は諸コストの上昇に直面し、酒類業界も含めた商品・サービスの値上げが実施されました。このような物価上昇傾向を受けた家計防衛による消費マインドの低下も懸念されます。
酒類市場では、「ウィズコロナ」社会への移行に伴い、飲食関連市場の回復傾向は非常に嬉しい状況です。ただ以前と比較すると70%程度の回復と思われます。一方、家庭用市場は、「家飲み」の拡大や、2026年のビール類税率一本化を目指すマーケティング強化の下、狭義のビールカテゴリーを中心に堅調に推移しました。このため、ビール類市場全体は18年ぶりに年間プラスで着地出来ました。一方、RTD市場については、レモンを核とした拡大基調に一服感が見え、ほぼ前年並みの水準で着地しました。
昨年当社は「お客様のことを一番考え寄り添う」という一貫した指針の下、2つの戦略を着実に展開しました。
「強固なブランド体系の構築」
まずビール類で、後の税率一本化後の市場でも愛される強固なブランド体系の基盤構築を進め、当社のフラッグシップブランドである「キリン一番搾り生ビール」は「一番搾り製法ならではのおいしさ」を一貫して訴求し、対前年2ケタの伸長を達成しました。「本麒麟」は、新ジャンルが厳しい状況の中、「飲みやすく飲み飽きない味わい」のご支持から、市場平均を上回る着地。また、プリン体0・糖質0の発泡酒「淡麗プラチナダブル」は、コロナ禍のお客様の健康意識に響き1ケタ台半ばの伸びを示しました。
一方、RTD分野では、「甘くないおいしさ」でご支持を得た「キリン氷結®無糖」が対前年6割超のプラス。「キリン 氷結®」ブランド全体も対前年プラスを確保しました。
また、国産ウイスキー「陸」は、富士御殿場蒸溜所の多彩な原酒主体のブレンド変更後好調に推移し、年間で前年倍増。ノンアルコール分野では従来と異なる積極的飲用需要を捉えた「キリン グリーンズフリー」が対前年8割超と拡大しています。選択と集中の動きで未来へのブランド基盤の強化が着実に進捗したと考えます。
「新たな成長エンジンの育成」
拡大傾向にあるクラフトビール市場は、量販・料飲両市場での「スプリングバレー」がブランドのプレゼンスが強化され、9月発売の「スプリングバレーシルクエール〈白〉」は好調な立ち上がり、また、「Tap Marché(タップ・マルシェ)」や「キリン ホームタップ」については、料飲市場・家庭用市場の開拓に繋がりました。
3Lペット容器を使用し、「“おいしい・かんたん・おトク”」の次世代サーバー「TAPPY(タッピー)」は、労働力不足やフードロス削減という社会課題の解決にも貢献する側面を持ち、8月には取扱店10,000店突破となっています。
また、輸出国の拡大を背景に、国産ウィスキーは「富士」の輸出が好調の元対前年比約3倍に拡大。「新たな成長エンジンの育成」は、中期経営計画の基盤づくりなりました。
本年は、不安定な海外情勢や経済状況、そして多局面におけるコストアップ・価格上昇の中、環境変化への即応・柔軟な対応が求められます。今秋には2026年に向けた第二弾のビール類税率改定も予定されます。
そんな中、弊社は「人と人がつながる喜びを届け、お客様とあたたかな絆を育む会社」を目指して挑戦を続けて参ります。お客様が求める新たな価値を提案し、ビール類、また酒類市場全体をさらに魅力あるものにすることで、酒類総需要の拡大、そして将来に向けた酒類業界の発展に邁進して参ります。
新しい年が皆様にとって素晴らしい一年となりますよう心よりお祈り申し上げます。
今こそ、サントリーらしい
「おもろい」挑戦をサントリーホールディングス株式会社
代表取締役社長 新浪 剛史2023年も厳しい経営環境は依然として続き、お客様の商品を選ぶ目もいっそう厳しくなっていきます。サントリーグループは、「世界で最も信頼され、愛される、オンリーワンの食品酒類総合企業」を目指し、本年も国内外で積極的な事業展開を行っていきます。
サントリー食品インターナショナル(株)の国内事業は、本年も主力ブランドを中心に、商品開発から飲用時まで品質にこだわった新たな価値の提供と積極的なマーケティング活動を展開し、事業拡大を目指します。
「サントリー天然水」は、国内4箇所となった水源の価値をさらに訴求します。また、無糖炭酸水や果汁入りなど、国内トップクラスの飲料ブランドとして新たな価値を提案します。「BOSS」は、これからも“働く人の相棒”として、あらゆる働き方や世代を越えてさらに愛されるブランドを目指します。「サントリー緑茶 伊右衛門」は、淹れたてのような緑・味・香りでご好評頂いている「伊右衛門」本体を軸に、コミュニケーションを積極的に展開し、無糖茶カテゴリーをさらに盛り上げていきます。「健康茶」は、「特茶」を中心に豊富なラインアップを活かした“健康茶統合”活動を引き続き展開していくとともに、高付加価値商品としてさらなる健康生活提案を行っていきます。「自動販売機ビジネス」は、これまで以上に自販機を活用した新たな価値を訴求していくとともに、新時代に向けたビジネスモデルの構築を目指します。今後も、お客様の嗜好・ニーズを捉えた上質でユニークな商品を提案し、お客様の生活に豊かさをお届けするという考えのもと、ブランド強化や新規需要の創造に注力し、品質の向上に取り組んでいきます。
酒類事業の大きなトピックスは、昨年7月発足した、新生“サントリー株式会社”です。国内酒類事業カテゴリーの垣根を越えた大きな活動として、ノンアルコール統合活動に注力。アルコール度数0.00%だからこそ実現できる、お酒を飲む人も飲まない人も一緒に楽しめる文化の創造を目指し、“圧倒的美味の実現”“ラインナップ拡充”“魅力をお伝えする提案”に取り組みました。発売2年目となる「のんある晩酌 レモンサワー ノンアルコール」や新商品「ノンアルでワインの休日」などが好調に推移し、昨年末には「のんある晩酌 ハイボール ノンアルコール」を数量限定発売しました。
本年は、ビール類の酒税改正が実施されます。昨今のお客様のお酒の楽しみ方の変化を大きなチャンスと捉え、国内酒類事業が一体となり、市場を大きく牽引していきます。
ビール事業は、“ちょっと高級なビール”としての「ザ・プレミアム・モルツ」、“季節によって味わいをととのえる” 「金麦」、“健康を気遣いながらリフレッシュできる”「オールフリー」など、各ブランドのバリューアップと新価値提案を実施。発売2年目の「パーフェクトサントリービール」は、本格ビールのおいしさと、食事との相性の良さにご好評いただき、好調に推移しました。「新しいビールの文化をつくりたい」という思いから発売した「ビアボール」は、好きな濃さで自由に楽しむというこれまでにない価値をもった新しいビールとしてお客様にご好評いただいています。
本年もサントリーのDNA「やってみなはれ」精神の象徴として、高品質なものづくりと最高のおいしさを追求するとともに、引き続き新たなビール類の価値創出に挑戦します。
スピリッツ事業は、ウイスキーでは「角」ブランド、「ジムビーム」ブランド、「碧Ao」が好調に推移しました。本年はサントリ―ウイスキーの100周年。引き続きブランド育成・強化を図るとともに、絶えざる新需要の創造に取り組むことで、スピリッツ分野のリーディングカンパニーとして更なる事業成長を目指します。RTDでは、市場創造すべく新発売した「翠ジンソーダ缶」「BAR Pomum(バー・ポームム)」が好調に推移。本年は「食中酒」をテーマに、主要ブランドから新たなご提案を考えています。
ワイン事業は、新しいお客様にもワインを飲んでいただく取り組みを強化しました。日本ワインでは5年ぶりの新ブランド「SUNTORY FROM FARM」の発売やサントリー登美の丘ワイナリーのリニューアルを実施。つくり手のこだわりや歴史などのワイナリー・ブランドが持つ魅力、オーガニックワインやサステナブルなどの付加価値をお客様に伝えることで、共感の獲得を図っていきます。
サントリーウエルネス(株)は、サプリメントなど「モノ」の販売に加え、お客様1人1人に合わせた健康サービスを提供することで、個客体験価値の最大化を目指します。
グローバル展開は、2023年さらに加速します。サントリーグループは、酒類・食品の両カテゴリーで多数の強力なブランド・開発力を持つ点で、世界でも類を見ないユニークな企業と言えます。グループ内に有する幅広い技術・知見を組み合わせることで、伸長著しいRTD市場やプレミアムスピリッツ市場、飲料、健康食品カテゴリーにおいて、サントリーらしい「おもろい」挑戦で、世界中のお客様に笑顔をお届けしたいと考えています。
不確実性が高まる現在の世界情勢において、サステナビリティは企業経営における世界共通の喫緊の課題です。サントリーは「2050年にバリューチェーン全体でGHG排出実質ゼロ」「2030年までにグローバルに使用するすべてのペットボトルの素材をリサイクル素材と植物由来素材に切り替え」という大きな目標の達成に向け、あらゆるステークホルダーと連携・協働し、地球規模での課題解決に向けて、成長戦略の中心に据えて取り組んでいきます。
ひとりひとりの心を動かす物語で
お酒と人との未来を創るサッポロビール株式会社
代表取締役社長 野瀬 裕之昨年も新型コロナウイルスによる制約が継続しましたが、世界を見渡すと新たなフェーズに進んでいることを実感する年だったと感じております。当社としても感染対策に十分に配慮した上で、「外食の楽しさ」「乾杯の素晴らしさ」を改めて実感していただくことを目的としたリアル体験イベント「SAPPORO BEER PREMIUM EXPERIENCE」や、3年ぶりに恵比寿の街で多彩なヱビスを楽しんで頂けるイベント「YEBISU BEER HOLIDAY」を開催することが出来ました。2023年も引き続き「誰かの、いちばん星であれ」を社内の合言葉に、「ひとりひとりの心を動かす物語で、お酒と人との未来を創る」活動に挑戦していく所存です。引き続き宜しくお願い致します。
さて、昨年は世界情勢の急激な変化の中、様々なコスト上昇や急激な円安などを背景に ビール類、RTD類等の価格改定を実施することになりました。国内事業におけるビール類では「サッポロ生ビール黒ラベル」「ヱビスビール」「サッポロ GOLD STAR」等の主力既存ブランドを強化したことや、業務用の回復も相まったことで瓶・樽・缶の総合計で前年越えを達成しました。RTD(注1)・RTD(注2)では、引き続き「濃いめのレモンサワーブランド」を多くのお客様にご支持いただいたことで前年越えを達成しました。RTSとして新発売をした「濃いめのグレフルサワーの素」も新たな市場を開拓できたものと確信しております。
海外事業においては、米国ストーン・ブリューイング社を新たにグループに迎えて北米市場成長のための製造拠点を獲得し、基盤づくりを進めました。また、「SAPPORO PREMIUM BEER」が北米市場で2年連続過去最高売上を更新し存在感を高めたことに加え、昨年から駐在事務所を構えた中国市場や、東南アジア、豪州、欧州においても「SAPPORO PREMIUM BEER」が力強い動きを見せたことで輸出事業が大きく成長しました。
サッポログループでは、2023年から新たな中期経営計画を始動します。創業150周年を迎える2026年までをターゲットにした計画であり、当社においてはこれまで以上にお客様に「サッポロビールを選んでよかった」と言っていただける企業に成長できるよう鋭意取り組んでいく所存です。
ビールについては、引き続き黒ラベル・ヱビスブランドを軸とした「物語のある」個性的なブランドを成長させていきます。特にヱビスブランドについては、東京・恵比寿の地で 35年ぶりのビール醸造復活に向けたプロジェクトを推進中です。国内外の多くのお客様に触れて頂ける魅力的なブランド体験拠点につくり上げていきますので「YEBISU BREWERY TOKYO」の開業をぜひご期待ください。
RTDについては23年10月より稼働予定である仙台工場新設備を活用して新たな価値提案を積極的に行ってまいります。また、そのような事業を通じて、お客様の課題・社会の課題を解決できる酒類メーカーでありたいと考えます。例えば、「気候変動への対応」として昨年発見した大麦新品種の実用化に向けた取り組みや、「地域との共栄」の実現を目指して自治体と連携した地域創生事業にも注力していきます。
本年もこのような活動を通じて「新しい楽しさ・豊かさを、お客様に発見していただけるモノ造りを」追求し続ける所存です。引き続きご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
(注1):Ready to Drink の略。栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料。
(注2):Ready to Serve の略。氷やソーダなどで割るだけで楽しめるお酒。