予算・税制等に関する政策懇談会へ要望書

新型コロナ、物価高騰対策等関係予算 要望

 新型コロナの感染者数減少によって移動制限等が緩和され、生活衛生業にも来店客が増え売上向上が期待されるところですが、3 年にわたるコロナ禍の長期化は業界に未曽有の被害を及ぼし、膨大な債務に今なお苦しみながら事業の再生・復活に苦慮しています。さらに、エネルギーや物価の高騰が拍車をかけ、事業者は事業継続に大きな不安を抱えています。
 このような状況にあっても、生活衛生業界は、引き続きコロナ感染防止策、ガイドライン遵守に真摯に取り組みつつ、収益力向上、業界の復活を目指しています。
 そこで、一般社団法人 全国生活衛生同業組合中央会(田中秀樹理事長)は、令和4年11月1日付で自由民主党の「予算・税制等に関する政策懇談会」に『新型コロナ、物価高騰対策等関係予算要望書』を提出し、具体的な施策や予算に反映して、業界の復興に向けた支援を要望しました。
■生活衛生業復興支援策等の要望
1. 新型コロナウイルス感染症の類型、感染者対応の見直し
 感染症法に規定する新型コロナウイルス感染症の類型(2類~5類等)について早急に見直すとともに、感染者の隔離、濃厚接触者への対応変更等について、事業者への周知を一層徹底できるよう支援してください。なお、新型コロナ関係の医療費や検査費用は国費負担としてください。
 また、これらの変更を反映するなどして改定した業種別ガイドラインと都道府県による第三者認証基準の整合性が図られるよう都道府県に要請してください。自治体によって認証基準や取り扱いが業種別ガイドラインと異なる現状においては、お客様も事業者・店舗等も戸惑っています。
 このため、ガイドラインの改定(緩和)内容を、お客様に広く知っていただくことにより、ガイドラインを遵守して十分な感染防止策に取り組む店舗等をお客様が安心してご利用いただくことが当業界の復興に不可欠です。
2. 収益向上のための各種専門家による相談、指導を拡充
 小規模事業者が中心の生活衛生業において、コロナ禍による影響を早期に回復するため実施している収益力向上等の専門家による相談、指導等が効果を挙げているため、これらの事業をさらに充実強化してください。
 また、Web等のIT機器を使用して行う助成金、融資等の申請・申込事務に不慣れな事業者を専門家等によって援助してください。
3. デジタル化を促進して生活衛生業の店舗力強化を支援
 キャッシュレス化にも対応できていない小規模店舗等、デジタル化が遅れている生活衛生業界が社会全体の DX(デジタル・トランスフォーメーション)に乗り遅れないよう、デジタル化の促進、活用による店舗力強化を進めるための収益アップ事業を支援してください。
 また、キャッシュレス化促進の阻害要因となっているクレジット決済の手数料について低減化を強力に進めてください。業種や店舗規模、売上げによって手数料率が異なるため、小規模事業者が多い生活衛生業においては手数料率が高く、キャッシュレス導入の妨げとなっています。
4. 「全国旅行支援事業」の延長、「GoToキャンペーン」の再開
 生活衛生業界のみならず、国民が再開を期待しているGoToキャンペーンの類似事業として開始された全国旅行支援事業を延長するとともに、GoTo イートキャンペーン等についても全国的に再開してください。
 生活衛生事業者は、全国旅行支援事業の実施期間終了後の状況を心配しています。お客様の消費活動が冷え込まないように、引き続きGoToキャンペーンや類似の事業、イベントの開催等を支援してください。
5. 雇用調整助成金特例措置の延長、拡充
 コロナ感染者数の減少傾向や全国旅行支援事業等の実施によって宿泊、飲食業等を中心に従業員の雇用は確保されるようにも思われますが、営業地域やその周辺環境、さらには膨大な債務負担(追加融資や返済条件変更の手続きが継続中で事業の完全再開に至らない場合等)やエネルギー・物価高騰によって事業が完全復活に至らない事業者は引き続き雇用調整が必要です。このため、現在延長されている「雇用調整助成金特例措置」は、コロナ禍が終息して生活衛生業の売上が回復するまでの間は、継続延長するとともに上限額は引き下げないでください。
6. 債務増大に苦しむ生活衛生業者の資金繰り支援を拡充
⑴「中小企業活性化パッケージ NEXT」を加速する弾力的融資の徹底
 長引くコロナ禍及びエネルギー、原材料の値上げ等の物価高騰に苦しむ生活衛生事業者に対する融資の弾力的な運用を徹底してください。
 コロナ禍、物価高騰対応融資については、業種の状況に応じて融資枠を拡大するとともに、各事業者の現下(直近)の財務内容や既存融資残高の状況を重視する硬直的な融資判断とすることなく、事業内容の強みや今後の需要回復見通しなどの将来性を勘案した弾力的かつ事業者復活を助長する踏み込んだ柔軟な融資を行ってください。
⑵「無利子・無担保融資」の再開と公庫融資の取扱延長、緩和
 コロナ禍、物価高騰対策として、日本政策金融公庫等による「無利子・無担保融資」の再開や、返済期間、取扱期限の延長、既往債務の条件変更のほか、追加融資に対して柔軟に対応するなど、次の事項について金融機関等へ要請してください。
・本年9月末で終了した「無利子・無担保融資」について、物価高騰対策として民間金融機関による取り扱いを含め、再開に向けた支援を行うこと。
・令和5年3月末まで延長された日本政策金融公庫の新型コロナ特別貸付及び新型コロナ対策衛経貸付について、令和5年度以降も継続すること。
・新型コロナ特別貸付の上限額(8,000万円)を業種や事業規模等に応じて引き上げるとともに、返済・据置期間を延長すること。
・コロナ感染者の減少により売上の増加が期待される一方、納税資金等を含む運転資金の融資が望まれているため、これらに対応する弾力的な取り扱いを行うこと。
・スタートアップへの融資利率の引き下げなど、創業者向けの融資制度を拡充すること。
⑶事業再生を更に後押しする支援の拡充
 生活衛生業が抱える過大な債務・二重ローンを解消するとともに、当該対象事業者に対する出資や債務保証、経営指導等を行うことによって、事業の再開・継続に向けた支援を拡充してください。
7. 受動喫煙防止対策助成制度の継続
 生活衛生業における受動喫煙防止対策、特に喫煙室の設置など費用負担の発生する対策は、コロナ禍への対応を優先するため十分に取り組めない状況が続いていることから、現行の経過措置及び受動喫煙防止対策助成制度を継続してください。
 生活衛生業は、以上のようなコロナ禍や物価高騰の影響のみならず、様々な課題、要望を抱えています。
 政府が進める「新しい資本主義」を創造する過程において生活衛生業界が抱える課題を「新たな業界成長のエンジン」として取り組んでいくためには、後継者不足や人員不足を解消する「人材への投資、育成」が不可欠です。
 このため、生活衛生業における人材育成や文化的事業を支援する「生活衛生ひと・ことづくり事業補助」の創設等を是非ご検討、実施いただき、生活衛生業の将来に安定・安心を与えてください。

令和5年度 税制改正等 要望

 コロナ禍の収束とともに生活衛生業が立ち直っていくこの時期に、中小企業・小規模事業者の窮状を救済するため、各種納税についての減免・猶予を極力弾力的に取り扱うとともに、税制改正においても特段の配慮を全国生活衛生同業組合中央会(田中秀樹理事長)は求めました。
■消費税に関する要望事項
1. 消費税の減免並びに免税点、簡易課税適用売上高の引き上げ及び消費税外税表示の恒久化などの措置を講じてください。
⑴コロナ禍や物価高騰による消費の落ち込みを回復基調に導くため、期間を限定してでも消費税の減免を実施してください。
⑵軽減税率に対応する生活衛生業は、消費税申告のために課税仕入れの帳簿記録や証明に必要な書類等の保存・管理が多大な事務負担となっているため、軽減税率の廃止を含む適用範囲を見直してください。
⑶インボイス(適格請求書)制度への対応は困難。廃止してください。
⑷ 厳しい経営環境にある生活衛生業の経営を支援するため、以下の事項に配慮した税制措置としてください。
①免税点の1千万円を2004年以前の3千万円へ戻す。
② 簡易課税適用売上高の5千万円を2004年以前の2億円へ戻す。
③ 消費税転嫁に要する事務経費の一定額を税額控除対象とする。
④ 消費税転嫁促進のため外税表示を恒久化(又は特別措置延長)する。
■交際費の課税に関する要望事項
2. 交際費に対する課税を撤廃してください。
 交際費に対する課税は、生活衛生業にとって売上を大きく低迷させる要因となっているなか、コロナ禍によってさらに影響が生じているため、期限を限定してでも企業規模を問わずに交際費の全額について損金算入を可能としてください。
 なお、飲食費に限る交際費の5割まで損金算入できる現行の特例措置の運用については、5千円を限度とする飲食費を3万円まで認めてください。
■地方たばこ税に関する要望事項
3. 地方たばこ税を活用した分煙環境の整備を促進してください。
 「令和2年度税制改正大綱」(与党)において、地方たばこ税の活用を含め、地方公共団体が積極的に屋外分煙施設等の整備を図るよう促すこととされていますが、インバウンド等観光客の誘致、受動喫煙防止対策促進のため、地方公共団体による商店街・繁華街等への公共喫煙所の整備を「地方たばこ税」を活用して推進するため、政府の税制大綱にも同様に盛り込んでください。
■生活衛生業の全業種に関係する要望事項
4. 後継者がいない小規模事業者等の第三者への事業継承を促進するため、承継時の負担軽減措置を講じてください。
 生活衛生業の小規模事業者等は地域経済や雇用を支える重要な存在であり、個人事業者等の小規模事業者の役割を継続して維持、発展させていくために第三者への事業継承についても円滑化が不可欠です。そのため、後継者のいない小規模事業者等が保有する事業用資産について、従業員等の第三者への事業継承時に負担を軽減する措置を設けてください。
 また、この度の旅館業法等の一部改正案によって事業譲渡による営業者の地位の承継が図られることは重要です。法案を可決成立してください。
5. 生活衛生同業組合等が設置する共同利用施設に係る特別償却制度の適用期限を延長してください。
 生活衛生同業組合(出資組合に限る)及び生活衛生同業組合小組合が策定する振興計画に基づく共同利用施設の設置に係る特別償却制度(取得価格の6%)において、例えば、クリーニング業界では、環境規制等により工場を市街地から郊外における共同設置へ転換する場合。
 また、他業種においても、中小・小規模施設組合員の製販分離による機械設備の共同化を促進するため、適用期限を延長するとともに、取得価格、適用比率等をより有利なものとしてください。
6. 法人税の課税所得金額を引き上げてください。
 中小企業の法人税は、所得金額で税率が変わりますが、中小企業者等の法人税率は、その年の所得金額が800万円以下であれば「19%」ですが、そこからさらに租税特別措置によって税率が「15%」まで軽減されています。
 昭和56年以来、800万円以下に据え置かれている軽減税率の適用所得金額を少なくとも倍の1,600万円程度に引き上げてください。
 なお、軽減税率の適用所得金額を引き上げることができない場合は、租税特別措置の適用期限が令和5年3月末日となっていることから、適用期限を延長してください。
7. 中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は法人税 額等の特別控除(中小企業投資促進税制)を延長してください。
 生活衛生業の中小企業、小規模事業者等が生産性向上等を図るための機械装置、ソフトウェア等を取得した場合に、取得価額の30%を特別償却、又は7%を税額控除できる措置について適用期限を2年延長してください。
8. 中小企業等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償 却又は法人税額等の特別控除(中小企業等経営強化税制)を延長・強化してください。
 生活衛生業の中小企業者等が、経営力向上計画(中小企業等経営強化法認定)に基づき取得する生産性向上設備について、即時償却、又は7%税額控除(資本金 3,000万円以下、又は個人事業主は10%)できる措置について、適用期限を2年延長するなどの措置を講じてください。
9. 物価高騰に伴うコスト負担増に対する法人税の減免等を講じてください。
 物価高騰が地域の中小企業の経営を直撃し、販売価格を上げるという対応を取る企業が増えている中、生活衛生営業者にとっては価格転嫁できない状況が続いており、今後も物価高騰が続くことが想定される大転換期において、生活衛生営業者が収益を確保するための取組は喫緊の課題となっています。
 加えて、コロナ禍の長期化でダメージを受けている生活衛生営業者への影響を減少させ、経営者の心が折れずに、今後も事業と雇用を維持するために物価高騰に伴うコスト負担増に対する法人税の減免等を講じてください。
10. バリアフリー化を進める生活衛生業の店舗・施設に対する法人税の減免等を講じてください。
 超高齢社会や障害者に対応する人にやさしい段差のないバリアフリーを進める理容店、美容店、飲食店等、車椅子で利用できる店舗への改築等を促進する生活衛生業の店舗・施設のための助成金、法人税の減免等について検討してください。
11. 法人住民税均等割の緩和是正について
 赤字運営により所得金額がマイナスになっても、法人所得税以外にも納めなければならない法人住民税均等割については、自治体ごとに法人の従業員数や資本金などの規模により算定されていますが、生活衛生同業組合の場合、非出資組合でありかつ純粋な組合費のみで運用している組合も少なくありません。このようなケースでは、納付額が全収入の約20%を占める組合数が数多くあり負担苦となっています。
 法人住民税均等割の法人区分に基づく均等割合額の算定につき、小規模法人及び収益事業の無い非出資組合など継続運営に着目した課税算定額の見直しを検討してください。
12. 先端設備等導入計画に基づく固定資産税軽減の対象期間を延長してください。
 中小企業等経営強化法による認定を受けた先端設備等導入計画に基づき、中小企業者が取得する一定の要件を満たした設備(機械装置、器具備品、建物附属設備)について、固定資産税の課税標準を3年間、0から1/2の間で市町村が定めた割合に軽減されますが、4年度中に取得したものが対象となっているので、取得対象期間を延長してください。
13. 東日本大震災に伴う特別貸付に係る消費貸借契約書の印紙税の非課税措置を延長してください。
 東日本大震災により被害を受けた中小企業者等を対象に、特別貸付を行う場合の印紙税を非課税とする特例措置の適用期限を5年延長してください。
14. 新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特別貸付等に係る消費貸借契約書の印紙税の非課税措置を延長してください。
 新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者の特別貸付等に係る消費貸借契約書の印紙税の非課税措置を延長してください。
■特定業種に関する要望事項
15. 旅館・ホテル業等に対する固定資産税に係る土地評価額及び建物評価制度について抜本的に見直してください。
 旅館・ホテルをはじめ、料亭、映画館等は、広い土地に建物を建て事業を営んでおり、総資産の中に占める固定資産税の比率が著しく高い業種です。中でも、建物については、措置産業としての特殊性から課税算出基準の評価点が従来から何ら変わっておらず、算出基準は据え置かれたままとなっています。
 このため、土地の評価、建物評価制度について抜本的に見直すとともに税率の軽減措置を創設してください。
16. 料亭等の固定資産税及び土地評価額、建物評価額を見直してください。
 料亭・日本料理店は、築100年を超える建物や土地面積も広くそれら維持費も相当掛かり、年間の売上に対して固定資産税負担や事業運営の年間固定費の割合が高く、訪日外国人観光客も全く見込めないこととコロナ禍における売上の減収が著しく、事業存続か否か廃業或いは営業権譲渡の岐路に立たされている組合員が昨年度より増えてきている状況です。
 そんな中、事業継続に建物の維持管理や修繕等、設備投資する余裕もなく次代に繋げる後継者問題や事業継承、承継も含め、業界の将来は非常に暗いと言わざるを得ない状況です。
 日本の食文化と伝統を守り継承していくためにも、固定資産税及び土地評価額、建物評価額の見直しを検討してください。
(以下他業種についての記述のため省略)