味つづり〈110〉 倉橋 柏山
    新緑の青豆めし

 「芳しき湯気のみどりや豆ご飯」柏山。
 青葉若葉の新緑。一度は食したいのが青豆ご飯(豌豆めし)である。
 みどりさわやかな、豆の芳しい香りは美味しいもので、私は大好きである。炊き方には二種ある。鮮やかな緑色を楽しむか。色はやや褪せても豆の香りを賞味するかである。
 料理屋(料理人)は彩りを重視する。
 さやから取り出し、生の豆を最初から米に入れて炊くと、豆の香りと豌豆特有の旨味が浸出してご飯の味はよいが、色がやや褪せて黄色味を帯び、豆にしわも出る。
 熱湯に塩を加えて色よく茹で、急激に冷さず、少しずつ水を注いで自然体に冷ますと、豆がふっくらと色が鮮やかになる。これを炊きあがったご飯に混ぜると、実に美しい彩りになるので、料理店では、概ねこの方法をとる。
 米は洗って三十分ほど浸水して、酒、昆布、塩味で炊き上げる。供する間際に茹で青豆を混ぜると彩りはよいが、豆本来の味が少々とぼしい。そこでさやを加えてご飯を炊く料理人もいる。いずれにせよ、豆ご飯は新緑の味である。もち米があれば、二割ほど加えると、さらなる美味を楽しむことができる。
 塩茹でにしたグリンピースを裏ごしして、卵白か、おろし大和芋少々を加え、塩で味を調え、石付きを切った椎茸に片栗粉、小麦粉を振ってふっくらとグリンピースを塗り付け、油で色よく揚げる。ビールのつまみに、初夏の味として喜ばれる。
 ウスイ椀という実に美しい汁物もある。一番だし汁(昆布とかつを節のだし汁)は、通常の吸物よりやや塩味を強めにして、裏ごししたグリンピースを加え、葛粉か片栗粉でほんのりととろみをつける。卵豆腐を椀種にする。これは熱くても、冷やして冷たくしても美味しい。
 茶巾しぼりという、前菜の彩りもある。砂糖を多めに加えると、和菓子として用いることもできる。
 色よく茹でたグリンピースを裏ごしして、砂糖と塩各少々を加えてよく混ぜ、殻をむいて背ワタを取った海老を酒塩でさっと煎りあげ、食べよく切って、海老をグリンピースで包み、ぬれ布巾を固く絞って、海老が一寸見えるほどに小さく茶巾しぼりにする。五点か七点盛りの前菜に用いると、初夏らしい風情をかもしだす。
 和菓子にする場合は、程よく砂糖で甘味をつけ、極く少々塩を加え、湯煎でしっとり練りあげて茶巾にする。中に小粒の苺を加えてもいいだろう。
 蒸し鶏の葛あんかけは一品料理として提供できるだろう。鶏のもも肉に酒と塩を振ってよくもみ込み、一時間ほど置いて二十分ほど蒸し、食べよく切る。
 海老は大きさによって四つか五つに切る。椎茸は小角かいちょう切りにする。
 だし汁を火にかけ、酒、みりんを適宜加え、塩と少量の淡口醤油で調味した中に、海老、椎茸、グリンピースを加え、水溶き片栗粉でとろみをつける。蒸しあがった熱い鶏にかける。鶏肉に限らず、白身の魚でも応用がきく、便利な料理で食べても旨い。
 桜海老とのかき揚げも彩りがよく、軽く塩を振れば、ビールのつまみにもなる。
 スーパーに並ぶ豆苗は、若どりした豌豆の茎と葉付きである。
 豌豆の卵とじ丼。だし汁六、酒、みりん、醤油各一、好みで砂糖適量を加え、小さく切った鶏肉と豌豆を加え、火が通ったら、溶き卵を上から平均に流し入れ、半熟状で火を止め、丼めしに乗せ、紅生姜を彩りに添える。
 グリンピースはむいたものではなく、さや付きを求めることをおすすめする。