ぜんいんれん健康クリニック5
―良いホクロ・悪いホクロ―
「変だな」と感じたらすぐ受診を
肌色のホクロもあります
ホクロとは、専門的には「色素性母斑」といいまして、びっくりされるでしょうが一種の奇形なのです。黒いだけではなく、肌色のものもあります。黒くなる理由はメラニン顆粒で黒くなるわけですから、メラニン顆粒を持っていなくてもホクロの性格のある場合は肌色になります。
お年をとって出てくる老人性のイボは、真っ黒になる場合がありますが、ホクロではなくて別の良性の腫瘍です。
良いホクロは色素性母斑でよいのですが、悪いホクロというのは「黒色腫」といいまして、これは奇形ではない腫瘍です。ですから腫瘍性の変化となったら、悪いホクロというふうに考えていただいてよいと思います。
すなわち良いホクロは色素性母斑、悪いホクロは悪性黒色腫ということです。
悪性黒色腫は怖い病気です
なぜ悪いホクロが問題になるかというと、これは非常に「たち」の悪いものです。悪性腫瘍というのは、その場で大きくなってとるのが大変だということもありますが、転移することも怖い理由の1つです。
悪性腫瘍は、非常に短時間にいろいろな場所にすぐ転移してしまいます。ホクロというと、肌の部分だけが黒くなったものという印象がありますが、悪性腫瘍は体の中にもできます。お腹を開けてみたら真っ黒だった、という症例を見たこともあります。
ほかには目にもできます。目が原発のこともあります。目の黒目にはメラニン色素がありますが、そこから出た場合です。これは悲惨です。脳の髄膜にも発生します。これも経過が早いです。
そういう悲惨な結果にならないためには、早めにとってしまうとか、適切な処置をすることです。そこが非常に大事なところです。
最初から悪いホクロではじまるという場合は少ないです。何か黒い病変があって、それを放っておくうちに急に大きくなったとか、盛り上がったりとか、そういう変化があって悪いホクロになることが多いのです。何らかの前駆症状があるはずですから、その段階で早めに気づいてほしいということです。
4つのポイントに注意を
気づいていただきたい点は4つあります。1番目は形です。2番目は大きさです。3番目は自覚症状です。そして4番目は急に大きくなったかどうかという時間的な経過です。
形をみるときのポイントは、ひねくれた不整型をしていないかです。丸っこくないとか、ひし形をしていないとか、ぐちゃぐちゃの格好をしていて、周りとの境界がはっきりとしていないとか、そういう場合をいいます。それからまっ平なホクロがあったところに急に盛り上がってきたとか、隆起ですね、三次元的な問題になってきた場合も含めます。
大きさですが、大きさのポイントとなるのは一応7ミリで考えてください。7ミリ以上のホクロはぜひご相談ください。
それと自覚症状ですが、これは痒いとか、痛いとか、何にもしていないのに出血したとか、そういうことがあった場合が要注意です。
最後に急に大きくなるということに気をつけてください。これは非常に大事なことでして、毎日見ているとあまり気がつかないでしょうが、最近、急に本当に大きくなったというようなことがありましたら、このときは要注意だと思ってください。
「変だな」と感じたら皮膚科専門医へすぐ受診を
悪いホクロになりやすい場所というのがあります。なんといっても気をつけてほしいのは、手のひらと足の裏です。これは他の部位よりも圧倒的に多いです。お風呂に入ったときにでも、手のひらと足の裏を特に注意してください。
専門医でも判断に迷うことがあります。「これが黒色腫か」ということもあり、とっておいて本当によかったということもあります。
皮膚科専門医は、いろいろなケースを見るトレーニングを積んでいますから、ちょっとでも変だなと思ったら、ぜひ一度ご相談ください。
(松岡皮ふ科 松岡 伸先生)